beacon

ピッチに恋して by 松原渓

このエントリーをはてなブックマークに追加

なでしこL・浦和対日テレ
by 松原渓

なでしこリーグ最終節
浦和レッズレディース×日テレ・ベレーザ@埼玉スタジアム2002…4012人

両チームの勝ち点差は「3」。
首位のベレーザは引き分け以上で優勝が決まり、2位のレッズレディースは勝てば勝ち点で並び、得失点差で逆転優勝。

今シーズンのなでしこリーグタイトルは最終節で事実上の頂上決戦となり、3-0で昨シーズンチャンピオンのレッズレディースを破ったベレーザが女王の座に返り咲きました!

頂上決戦の舞台に相応しい聖地・埼玉スタジアムでは今シーズンリーグ2位の動員数となる4012人のお客さんがドラマの行方を見守りました。
とはいえ、その多くがホームのレッズレディースを応援。
「私たちよりレッズの方がプレッシャーはあったと思う」と試合後に大野忍選手が語ったように、レッズレディースは今季はリーグ連覇がかかり、さらにはリーグカップ決勝でもベレーザに2-0のリードから3点を奪われて屈辱的な逆転負けを喫してタイトルを逃しており、大きなプレッシャーがかかっていたのは事実でした。
しかし…。
終わってみれば、シュート数はベレーザの25本に対し、レッズはわずか6本。
内容もシュート数に比例するものでした。ベレーザは監督交代からわずか3カ月ながら、安定した戦いぶり。何年も一緒にやってきた選手同士の呼吸が合っていました。
中でも、前線では今シーズンアメリカのチームからベレーザに期限付きで復帰した山口麻美選手の存在が光りました。大野忍選手と岩渕真奈選手という不動の2トップに割って入り、高い位置でのボールキープやドリブルを生かしたプレーで2人をアシスト。
前半18分にゴールライン際をドリブルで切り裂いて2人を交わし、岩渕真奈選手のゴールをお膳立てすると、31分にはCKから自ら決めて2-0。
82分には大野選手が得点王を決定づける13点目となるゴールを決めて、試合を決定づけました。

ベレーザが3トップがそろい踏みで決めた一方、レッズは古巣対決となった元ベレーザの荒川恵理子選手(FW)が試合開始から積極的な動きを見せましたが、ディフェンスはCBの中地舞選手がしっかりと対応して自由を与えず、結局、90分間を通して荒川選手に打たせたシュートはゼロ。
完封の立役者となった中地選手は、チーム最年長(29歳)のベテランですが、常にチームを陰で支えてきたまさに「縁の下の力持ち」。155センチと小柄ながら、ポジショニングと経験を生かしたディフェンスはFWにとって嫌な存在。昨年は出場機会を得られず辛い時期が長かったため、試合後は「今までは外からしか声をかけられなかったので、優勝の瞬間は本当に言葉には表せない嬉しさでした」と、静かに喜びを爆発させました。

明暗を分けたのはFW陣とDF陣だけではありません。
レッズはキャプテンの柳田美幸選手がボランチでチームを鼓舞し続けましたが、パスの呼吸が合わず…一方、ベレーザは中盤では原菜摘子選手が、長短のパスでFW陣の裏への飛び出しを引き出し、守備はしつこく、セカンドボールへの反応は早く。関係者内で一番評価が高かったのは原選手でした。

ベレーザは今月、ヴェルディのメインスポンサーが決定(「ヴィクトリア」「L-Breath」など全国で 511店舗を経営する「ゼビオ株式会社」)して、チームの存続に目処が立ったこともあり、「スポンサーのためにも勝利したかった」(近賀ゆかり選手)と、こちらは違った意味で切実な現実をしっかりと受け止め、しっかりと結果につなげたのは良かったですね。選手、関係者、そしてサポーターの皆さん、おめでとうございます☆☆☆

ベレーザはリーグカップと合わせてこれで今シーズン2冠目。
残るは全日本女子サッカー選手権大会(男子の天皇杯にあたる)ですが、果たしてレッズレディースは3度目の正直でベレーザにリベンジを果たすことができるか。
ベレーザとレッズレディースの「因縁」は常に新たな歴史を刻みながら、より面白さを増していくのでしょうね☆

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

TOP