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ピッチに恋して by 松原渓

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J1最終節・浦和対神戸
by 松原渓

J1最終節
浦和レッズ×ヴィッセル神戸
45941人@埼玉スタジアム

J1最終節、浦和レッズ対ヴィッセル神戸。

試合はアウェイのヴィッセルが4-0で勝利。
レッズは2年間チームを率いたフォルカー・フィンケ監督と、5年半にわたりチームの数々のタイトルをけん引してきたロブソン・ポンテ選手のリーグ最終戦。2人の存在が、チームのモチベーションとなっているのは明らかでした。しかし、実際にはパスはつながらず、曖昧なクロスを奪われてはカウンターの応酬に。フィンケ監督も「余計な緊張感が生まれて本来の力を発揮できなかった。オーバーモチベーションだった」とキッパリ。トップ下のポンテ選手にボールを集めた後の動きが少なく、ヴィッセルにとって守りやすい状況で、カウンターを浴びることに。

一方のヴィッセルは負ければ降格、勝ってもFC東京の結果次第では降格を余儀なくされる背水の陣。その危機感が球際の激しさとなって鉄壁の守備とセカンドボールへの執念を見せ、前半31分。相手の一瞬のミスを見逃さず、カウンターから吉田孝行選手のゴールで先制!その後も相手のミスを待ち、効果的なカウンターを仕掛けます。スクリーンに映る吉田孝行選手の息の上がり方を見ると、まるでレッズの2倍は走っているかのようでした。そして、後半7分にはファウルで得たPKを吉田選手がしっかり決めて追加点を奪うと、そこからは一方的な展開に。


終わってみれば0-4。
「私が就任してからの2シーズンを通して最悪のホームゲームを見せてしまった」と語ったフィンケ監督は、出られなかった山田暢久選手の代わりに起用した濱田水輝選手について「自分の采配についてすべての責任を負う」と2、3度繰り返し強調。就任してからの2シーズンで一貫して若手にチャンスを与え続けましたが、若い選手の起用は、結果が出るまでに時間がかかるという意味でも、やはりハイリスク、ハイリターン。それでも、フィンケ監督が信じ、ピッチに立った選手たちが、ミスも経験という糧にして成長し結果を残す日はきっと来るのでしょう。

試合の中で印象的だったのは、前半23分、左サイドでフリーになった小川慶治朗選手のシュートを、岡本拓也選手が間一髪のスライディングで死守した局面。
ともに両チーム最年少の18歳であり(背番号も同じ31番)、象徴的なシーンでした。

4点を奪って快勝したヴィッセルは、同時刻に行われていたFC東京が京都に敗れたため、タイムアップの笛と同時に残留が決定!
ピッチの選手たちはベンチになだれ込んで喜び、ヴィッセルサポーターの歓喜が広いスタジアムに響き渡りました。

一方、レッズのゴール裏にはフロントへの厳しい批判を示す弾幕が出るなど、決して良い雰囲気とは言えませんでしたが、フィンケ監督の挨拶が終わり、ポンテ選手の退団セレモニーが始まる頃にはその空気も一転。
サポーターがゴール裏からバックスタンド、逆のゴール裏までスタジアムを目いっぱいに使ったコレオグラフィで、クラブを支えたレジェンドに背番号「10」をプレゼントし、鳴り止まない「ロビー」(ポンテ選手の愛称)コール。
このプレゼントに、涙をこらえて壇上に上がり、挨拶を始めたポンテ選手。「アイラブレッズサポーター。ありがとう……。」チーム、サポーターへの感謝を決して滑らかとは言えない日本語で話し・・・真っ赤なスタジアムが静まり返り、その言葉は胸に迫るものがありました。

ピッチ全体を俯瞰しているかのようなチャンスメイク、味方の選手の特徴を生かす柔らかくて愛のあるパス。
インタビューや囲み取材にも、常に真摯な対応で、人間性も含め、私も大好きな選手でした。
ちょうど1年ほど前、取材に行った埼玉スタジアムのエレベーターで、ポンテ選手とすれ違ったことがありました。
そのとき、私も含めエレベーターに乗っていた数人に対し、ポンテ選手がお先にどうぞ、とばかりにいたずらっ子のような表情でボタンを押して待ってくれていたのを思い出します。当時、ポンテ選手はケガで長期離脱を強いられていた辛い時期でした。
レッズでの事実上のラストは天皇杯となりますが、最後にもう一度、魅せてもらいたいと思います。

さて、他会場ではガンバが勝利、セレッソも勝利し、アントラーズが引き分けたため、ACL出場権は1位のグランパス、2位のガンバ、3位のセレッソが決定。
ガンバ、セレッソの選手、チーム関係者、そしてサポーターの皆さん、おめでとうございます☆
残る1枠は天皇杯優勝チームになりましたが、最終節で4位になったアントラーズは天皇杯で優勝するか、もしくは天皇杯でグランパスが優勝した場合、自動で出場権を獲得するため、優位な状況は変わりません。3連覇を果たした王者の意地で自力で優勝を掴むのか、それとも、新たなタイトルホルダーが生まれるのか。

また、FC東京の降格が決まり、J1から東京勢がいなくなってしまうことは、やはり非常に残念です。

東京ダービーがJ1で見られるように、来季は東京勢の復帰を応援しに行きたいと思います☆

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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