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ピッチに恋して by 松原渓

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映画祭と祝勝会
by 松原渓

Jリーグ開幕まで約2週間。
開幕戦はどこに行こうかなと、スケジュール帳を見ながら嬉しい悩みが尽きません♪

先週から今週にかけては、サッカーに関係する2つのイベントに行ってきました。

まず一つは、横浜で行われた「ヨコハマ・フットボール映画祭」。
日本未公開作品を含む4作品が上映されたこの映画祭は、前日までにチケットが完売。
私も映画は大好きですが、「映画」と「サッカー」という、2つの素材が絶妙なハーモニーを奏で、良さを引き出し合う作品に出会えた時の喜びは何にも代え難いものがありますね♪

1日で4本を通して観るハードなタイムスケジュールでしたが、集められた作品はどれも期待以上の面白さで、座りっぱなしも苦痛になりませんでした。
上映されたのは、1本目がろう者(聴覚障害を持つ人たち)サッカー女子日本代表チームを追ったドキュメンタリー『アイ・コンタクト』(中村和彦監督/日本/2010)、2本目がメキシコのトップリーグを目指す兄弟の波乱の人生模様を描いた『ルド アンド クルシ』(アルフォンソ・キュアロン監督/メキシコ/2008)、3本目がインドネシアのトップリーグを舞台に、ライバルクラブのサポーター同士の抗争の中で芽生えた“禁断の”愛を描いたラブストーリー『ロミオ&ジュリエット-フーリガンの恋』(アンディバクティアール・ユスフ監督/インドネシア/2009年)、4本目がAC長野パルセイロと松本山雅FCとの「信州ダービー」を追ったドキュメンタリー『クラシコ』(樋本淳監督/日本/2010)の4本。個性的な4つの作品が放つメッセージは、サッカーが持つ可能性を色々な角度から見せてくれました。

「ルド アンド クルシ」は、敏腕スカウトマンに出会い、一躍スターダムに駆け上がっていく豊かな才能と強烈な個性を持つ兄弟の波乱の運命を、何が起こるか分からないサッカーの90分間と重ねて描いていて、中でもPK戦のシーンは象徴的。
感動、共感、大笑いあり。絶対に見て損はしないオススメの作品です。

他3本は全てドキュメンタリー寄りですが、綿密な取材によって構成された映像やテロップなど、丁寧に作られていて、製作者のサッカーへの愛情が伝わります。

中でも1本を上げるなら、「アイ・コンタクト」を推します。耳が聞こえない、“音のない世界”でプレーするサッカーはどんな競技なのか。実際、作品の中で流れる世界大会の決勝戦などは、健常者のサッカーとほとんど変わらないレベルのスピードや技術に驚かされます。
線審が笛の音の代わりに色鮮やかな旗を使用するなど、ルール上の違いはありますが、45分ハーフの試合時間やコートの広さなどの条件は同じ。

ろう者サッカー女子日本代表、通称「もう一つのなでしこジャパン」は、高校生から会社員から結婚している選手まで、年齢層もバラバラ。しかし、彼女たちが、手話やアイ・コンタクトを駆使して、サッカーへの情熱を一つに世界に挑戦していく様子はとても見ごたえがあります。
当日、上映後に作品の中で仲間に「顔を上げろ!」という名言を残した御園裕未選手とのトークショーに参加させていただきましたが、彼女の口から発せられるサッカーを語る言葉は、なでしこジャパンの選手たちにも負けないほどの、力強さと説得力がありました。スクリーンで見る以上にほっそり!した体型には驚きましたが。
好きな選手は、ゴン中山選手、岡野雅行選手、田中達也選手。「最後まで走りきる選手が好き」と、意思的な目が印象的でした。

このカテゴリーでも、世界を見渡せばやはりアメリカやドイツなど、女子サッカー先進国が強豪として立ちはだかりますが、日本を代表する彼女たちが真に世界と対等に戦えるレベルに追いついた時、なでしこジャパンと彼女たちの交流試合が叶うといいなぁと願います。

もう一つのイベントはアジア競技大会男女(U-22日本代表/なでしこジャパン)優勝・AFCアジアカップ(A代表)優勝祝勝会。
昨年から今年にかけて日本を大いに沸かせたこの2大会の祝勝会が都内で華やかに行われました。

アジアカップを制したA代表からは代表で今野泰幸選手と権田選手が登壇。
アルベルト・ザッケローニ監督はバカンス中のイタリアから、この祝勝会のために一時来日(日本滞在はわずか26時間だったそうです)。
アジアカップで見せた厳しい指揮官の表情が一転、穏やかな笑顔が印象的で、充実したバカンスが伺えました。

なでしこジャパンはアジア競技大会に出場したほとんどの選手が来場し、会場に華を加えていました。この会場で、女子のポルトガル遠征(2月26日~3月11日)に臨むメンバー23人が発表され、アジア大会では招集が見送られたドイツ組の永里優季選手(ポツダム)、安藤梢選手(デュイスブルク)、山口麻美選手(ハマルビー)、宇津木瑠美選手(モンペリエ)ら海外組が勢ぞろい。特に、先日のリーグ戦でハットトリックを決め、今季リーグ戦10得点とした永里選手のプレーは楽しみです。

今回初招集となったのは、坂井優紀選手(DF/INAC)、田中明日菜選手(MF/INAC)、斎藤あかね選手(常盤木学園高校)の3人。この中で、私が気になっていたのは田中明日菜選手。元旦の選手権決勝でも絶妙なスルーパスや豊富な運動量でINACの攻撃を活性化させたファンタジスタです。なでしこジャパンの主力でありINACの新戦力となった大野忍選手や澤穂希選手とのコンビネーションは楽しみです。キャプテンの宮間選手は6月のW杯を見据え、「世界で優勝するためにはもうひとつレベルアップが必要」と、力強くコメント。今回の遠征ではベテランと若手新戦力の融合を図りつつ、結果にも期待したいと思います☆

※本コラムは毎週月曜+αの更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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