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スペインで戦うフットサル選手・荒牧太郎の挑戦 by 荒牧太郎

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スペインと日本の違い
by 荒牧太郎

 皆さんご無沙汰しております。随分間が空いてしまいました。スペインでも日本でもW杯の中断期間が終わり、リーグ戦もスタートしています。僕ら2部は中断期間もなく、年内残り2試合で前期が終了します。

 さて、今回はスペインと日本の選手の違いを僕なりに書いてみようと思います。『スペインと日本何が違うの?』という質問は本当にたくさんの人にされてきました。違うなと感じる部分はたくさんあるので、答えるのに苦労するのですが、今回は選手の持っている「スイッチ」に関して。

 スペインと日本のフットサルの違いは歴史、戦術、体格、テクニックなどなど言い出したらきりがありません。ただ、一つだけはっきり言いたいのは、すべてスペインが上で日本が下という訳ではないということ。でも、W杯の成績や対戦成績からも分かる通り、まだまだスペインから学ばなければならないことはたくさんあると思います。

 その中でも選手達の練習が始まった途端に自然と入る本気モードの「スイッチ」は、日本には無くて、でも絶対に必要なものだと感じています。僕の言う本気モードのスイッチは決して特別なものではなくて、練習に取り組む姿勢の話です。

 スペインの練習も日本のそれも、流れや内容に大きな違いはありません。魔法の練習メニューがあるわけではありませんし、ペラドンと呼ばれる条件付きのゲームやボール回しから徐々に実際の試合形式のものになっていきます。日本だったらウォーミングアップやボール回しが終わって、対人形式やゲーム形式からエンジンをかけ始めるイメージですが、こっちでは最初のペラドンでかなり激しく球際の攻防がありますし、ボール回しでもスライディングが飛んできたりもします。

 上の話はほんの一例ですが、練習前に談笑していても練習が始まると試合さながらの集中力を発揮する。試合の様に激しくプレーをするし、ファウルするべきところはする、体を張る場面ではそうする。これだけ聞いても当たり前の様に感じると思います。でも、集中するべきところではして、そうでない時はリラックスする。そのスイッチがあるかないか、それが大きな違いだと思います。

 スペインとの違いというと、特別な練習メニューを期待していたり、食事や生活面でのきめ細やかな自己管理など、そういう部分を想像する人も多いと思います。

 幸い今はインターネットが発達していて、本当にたくさんの情報を日本にいても手に入れることが出来ます。なので、スペインやブラジルでやっているような練習は既に日本にも入って来ているわけです。練習やセットプレー、パワープレーを見ても大きな驚きを感じることはほとんどないと思います。

 また生活面でも、例えばスペインのファーストフード店ではセットのドリンクの中に、コーラやファンタ、水と同時にビールを飲むことも出来ます。これは生活習慣として日本よりも日常的にビールを飲んでいるということだと思います。それをいつどれだけ飲むかはもちろん大事ですが、そういう部分でも日本と大きな違いはありません。

 日本の方が、全体練習以外にいかに自分でトレーニングをするか、ケアをするか、普段の生活に気を配れるのかに関心を持っている選手は多いと思います。

 ただ同じ2時間の練習で同じメニューをこなしていたとしても、その練習に対する集中力によって、その練習がもたらす効果がまったく変わってきます。1回の練習ではほんの些細な部分の違いにしかならないかもしれませんが、それを毎日積み重ねて今までの歴史を築いてきたスペインと、それを積み重ねられていない日本とではどうしても差が出来てしまうと思います。

 すごく簡単な言葉で言えば、みんな本気かどうか。どんな試合であろうと負けたくないという負けず嫌いの気持ちもあると思いますし、練習や試合で自分のプレーを見せて認められなければ、来シーズンの契約はないわけです。だからこそ1プレーにかける思いも違うんだと思います。しかもそれを練習、試合で発揮するわけです。

 じゃあプロフェッショナルになれば自然とそうなるのか。僕はそんな単純な話だけではないと思っています。どう質の高い練習や試合を重ねて行くか。それが「差」を埋める鍵になると思っています。

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