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日本代表コンフィデンシャル by 寺野典子

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中田英寿孤独再び
by 寺野典子

中田英寿の孤独再び

 本コラムでも福島キャンプのレポートとして、中田英寿が閉じていた自身の殻を開きはじめているという原稿を書いたが、6月5日現在、思うのは、彼は変わってはいなかったし、変わることももう無いのかもしれないし、チームにとっては変わる必要もないのだろうということだ。

周囲の歩みより

 ボン入り後、小野伸二ら79年生まれ組と球回しに興じたりと融合が図られているに思われるシーンもあった。しかし、それも小野や中田浩二らが「ヒデさん一緒にやろうよ」と声をかけたことがわかった。中田浩二は「ヒデさんは自分からは入ってこられない人だからね」とその理由を語っている。

海外メディアに苦言

 それもつかの間、中田英は海外メディアの取材に答えて「まだワールドカップを戦う気持ちになっていない。仲が良すぎる」という意図の発言をしている。

再び冷戦の様相

 その発言後、中田英は球回しの輪から離れ、中村俊輔や大黒将志とシュート練習を行なうこともあったが、ここ最近の練習後は、またも独りでストレッチをしている。監督以下スタッフも選手と共にボールに戯れ、笑いあっている声を聞きながら……。

マルタ戦後の激怒

 そして、苦戦したマルタ戦後、中田英は「気持ちの部分でできていなかった。本番に向けて足りないのは気持ちの問題。それは個々に感じることだ。僕は自分のコンディションを上げることに集中したい」と話していた。その発言をそのまま鵜呑みにするのは少々乱暴だとは思うが、チームを見放したように取れる言葉だった。

中田英とメディア

 過去中田英は常にメディア(試合後のテレビインタビュー)を通してチームメイトに苦言を呈し続けてきた。しかし、直接チームメイトにその思いを伝えたことはあるのだろうか?

聞く耳を持っているのか?

 試合中に怒鳴るだけでなく、膝を交え、相手の気持ちに耳をかし、それぞれの立場(年齢や能力、性格など)を尊重するという時間を割いたのだろうか?

コミュニケーション不全症候群

 ある選手は言ったことがある「ヒデさんはコミュニケーション不足だっていうけれど、ヒデさんがコミュニケーションをとろうとしないからね」と。

98年 02年 06年

 98年大会は、年かさの選手たちが、中田英をバックアップしていた。02年は絶対的な地位を譲ろうとしない監督がいた。その監督との関係がある種のトラウマとなり、06年大会を目指す代表の辞退まで考えたという中田英だが、今、自身の思いだけをぶつけているんだとしたら、その監督と同じことをしている危険性もあるのではないか?

大人なのはどっちだろう?
 
 年長選手として迎えた06年大会。98年から8年の月日が流れた。誰もが年を重ね、経験を積み、大人になっていくはずだが、中田英は中田英のままなのかもしれない。自身と同様の強さや価値観を人に求め(求め方の工夫をすることなく)、受け入れられないと思い、孤独の中に身を置いている。そして彼を取り囲む選手たちは、そんなヒデを「しょうがないな」と暖かく見守っている。

必要なのは勝つこと

 だからもう、中田英がチームに馴染もうと、孤高の存在であろうと、あまり関係はない。そんなことでチームが揺らぐことはない。それだけの結束力をジーコファミリーは築いているんだと思う。そう考えると、ヒデはヒデのままでいることが最も自然体なのかもしれない。

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