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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 猛暑の日本列島。浦和レッズが活動拠点に置く埼玉県さいたま市も連日、33度以上の暑さが続いている。そんななか、最近、選手の間からはある不満が続出している。

 ホルガー・オジェック監督(写真)は午前中に練習時間を設定している。通常は10時開始。試合翌日のダウントレーニングだけが11時開始だ。練習時間は正味1時間半。その間、照りつける太陽の影響でピッチ上の体感温度は40度以上にも跳ね上がる。そんななかで、選手たちはクタクタになりながらトレーニングに励んでいる。
 田中マルクス闘莉王が嘆く。
「夕方から(練習を)やれば、終わる頃には涼しくなると思うんだけど……」
 最年長の岡野雅行も、さすがにグロッキー気味だ。
「この気温で、サッカーやるもんじゃないですよね。体から水分が無くなっちゃうもん」
 昨季までチームを指揮したギド・ブッフバルトは実際に行われる試合に合わせて練習時間を組んだ。例えば真夏のナイター開催の時期は18時、もしくは19時から練習を行うなどし、週末の試合に向けてコンディションを調整したものだ。しかしオジェックは前任の慣習を踏襲せず、我が道を往く。
 ある新聞では、「オジェックは早寝早起きの規則正しい生活を重んじているので、午前練習を貫いている」と揶揄した。たしかに95年、96年にレッズを指揮した際も、オジェックは午前練習を貫いていた。しかし、当時は午前だけでなく午後練習もある2部練習が常で、滅法ハードだった。それに比べれば現在の練習負荷は軽い。

 ヨーロッパ諸国でコーチライセンスを有する者は、フィジカルトレーニングのノウハウも持つと言う。かつてチームを指揮したハンス・オフトは、当時在籍していたフィジカルコーチを解雇して自らトレーニングメニューを組んだ。また、現日本代表のイビチャ・オシムは午後遅くから練習を行うことで有名だ。新聞紙上によると、「オシムはヨーロッパのサッカーなどをテレビでチェックするために夜更かしをするので、早起きができない」と、オジェックとは逆の理由を論じているのが面白い。
だが、それは真理ではないだろう。オシムにはオシムの考えがある。そしてオジェックもまた、独自の理論で選手のフィジカルを高めている節がある。
 シーズンイン直後。オジェックは厳しい練習メニューを課して選手の体を苛め抜いた。その影響からか、オーストリアでのブルズカップやゼロックススーパーカップで大敗を喫したばかりか、リーグ序盤戦では試合終了間際に追いつかれるなど、レッズはギクシャクした試合が続いた。
 しかし現在はどうだろうか。特にA3チャンピオンズカップを挟んで以降、レッズの成績は上昇カーブを描き、首位のガンバ大阪に肉薄して好位置をキープしている。
 坪井慶介は、手応えを感じている。
「オジェック監督は規律を重んじている。僕は、そういうの結構好きなんです。練習にしても、キッチリとトレーニングすることで身につくことが多い。暑さにしても、厳しい環境のなかで練習することで耐性も生まれるんじゃないですかね。実際、今僕は代表の活動も重なっていますけど体の状態は悪くないですから」
 序盤の躓きは想定の範囲内か。灼熱のピッチで選手が躍動する姿を見ていると、地道に積み重ねた指揮官の種が芽吹き始めているように見える。あとは、それを選手がどう受け止めるか。

 8月8日。左足の内転筋を痛めたワシントンが、信頼できるドクターの下で治療して早期復帰したいという理由からブラジルに帰国してしまった。ワシントンは半月前にも心臓病の検査で一時帰国している。その是非は問わない。しかし、エースFWの度重なる戦線離脱の裏で、チーム内に不穏な空気が流れているのは確かなのである。

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