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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 51,651人もの大観衆が詰め掛けた埼玉スタジアム。赤いキットを身に纏った彼らは、選手入場時に真っ赤なボードを掲げて“仲間”を鼓舞した。
 平川忠亮が試合後に言っていた。
「サポーターの存在は僕らにとって心強かったですけど、それよりも相手にとって嫌だったんじゃないですか。あれだけの迫力だったんですから」
 PK戦までもつれた死闘で、スタンドを埋めたレッズサポーターは最後まで声を枯らし、旗を振り、拳を突き上げて存在を誇示した。彼らの力がピッチに降り注ぎ、ゲームの趨勢に関与したと選手たちは認識している。

 それにしてもタフなゲームだった。韓国のKリーグチャンピオン・城南一和はある意味、韓国らしくないスマートなサッカーで浦和に真っ向勝負を挑んできた。その結果はホーム、アウェーともに2-2。PK戦はトーナメント方式の勝ち上がりを決めるいわば抽選の位置付けで、結局今回のACL準決勝ではどちらが強者だったのかという勝負付けをすることはできなかった。
 それでも、PK戦で浦和が勝ち、日本勢初のACL決勝進出を果たした意義は大きい。指揮官のホルガー・オジェックはPK戦決着の瞬間歓喜し、珍しく自ら相手監督のキム・ハクボム監督の下に歩み寄って労をねぎらった他、城南一和の選手たちとも次々に握手を交わしていた。また試合後の記者会見でも、いつもは早く終われとばかりの言葉少なな態度が一変し、「今日スタジアムに訪れた方が、ドラマティックな試合の証人となった」と興奮気味にまくし立てた。またPK戦の最後のキッカーとなった平川も、彼にしては珍しくハキハキとした言動で喜びを表現し、「PKはレッズに入ってからは初めての経験。PKの練習をしていたかって? しているわけないでしょ。僕が蹴るなんて思ってなかったもん」と語り、周囲の笑いを誘っていた。

 それにしても厳しいゲームだった。もし城南一和が通例の韓国クラブのように荒々しく、フィジカルを全面に押し出すようなチームだったら、浦和は陥落していたかもしれない。それほど浦和は窮地に追い込まれていたし、焦った素振りを見せていたのだ。
 それでも今季度々見られた勝負強さは健在だった。この日も2-1と逆転されてから長谷部誠のゴールで同点に追いつく逞しさがあった。これは以前の浦和にはなかった高い精神力の賜物である。
 7連戦を無敗で終えたことといい、最近の浦和には勝ち味を知る常勝の雰囲気が漂う。
 鈴木啓太が言う。
「今は自分たちにチャンスが転がっている。でも、僕は今の経験が個人よりもクラブにとって大切なことだと思っている。ACLでの戦いは、クラブにとってきっと大きな力になるはずだから」
 クラブへの寄与に尽力する選手の姿勢に崇高さが漂う。
 流れは今、浦和の手にある。

<写真>この日5人目のPKキッカーをつとめた平川忠亮

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