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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 豊田スタジアムでの浦和は、躍動感に溢れていた。試合後に鈴木啓太が語った。
「リーグ最終節が終わってからの調整期間が大きかった。監督とディスカッションできたし、選手とも話し合いができたから」
 12月1日にリーグ優勝を逃し、チームは2日間のオフを経て再始動した。練習でのオジェック監督は選手の下へ歩み寄り、様々な選手と会話を交わし、セパハン戦の前には3日間連続で紅白戦を敢行するなど、いままでにないアプローチを見せた。再び鈴木の話。
「最近はどこでボールを奪って、どこから攻撃を仕掛けるかの共通理解がなかった。でも、この調整期間でそれが整理されて、良い状態になってきたんだ。もう少し早くそれができていれば良かったって? 確かにそうだけど、これは大きいよ。だからセパハン戦は、今季のなかでもベストゲームのひとつになったんじゃないかな」
 永井雄一郎、ワシントン、そして相手のオウンゴールで3点を奪った浦和。チーム全体をコンパクトな状態に保ち、各選手が的確なポジショニングを維持したことで、そのサッカーは高質さを漂わせていた。
 一方、セパハンのコンディションは最悪の状態だった。彼らは今季3度目の日本で、遠征疲れを訴えていた。また、チーム内にはインフルエンザも蔓延。特に主力のモハラム・ナビドキアは重症で、結局初戦のワイタケレ戦、そしてこの日の浦和戦ともに欠場を余儀なくされた。浦和の復調とセパハンの不調。これが試合の趨勢を決めた。
 左サイドで何度も好機を生んだ相馬崇人は喜びを隠し切れなかった。
「ヤッターって感じ。上手くいったね。事前にクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド/ポルトガル代表)のビデオを見まくっていたから。やっぱり俺は海外のクラブとの試合になると燃える。これをJリーグの試合でもやらなきゃいけないんだけどね」
 そして殊勲の先制点を挙げた永井も、充実した表情を浮かべた。
「今日は最高の形で終われたと思う。ミラン戦? とにかく思い切りやるだけですね。ミランは一言で言って強い。全ての面においてそう。ただ今日はミランとやるためじゃなくて、とにかくこの試合に勝つために集中した。この大会は自分たちがどこまでできるか試すという意味が強いですね。ミラン戦でも今日みたいなサッカーができればいい」
 最終節で横浜FCに敗れてリーグ連覇を逃した際、選手たちは立ち直れないほどに落ち込んでいた。長谷部誠や坪井慶介は「切り替えることができないかも」と明らかに気力を減退させていた。しかし短期間の休養を経て、浦和はチーム全体が再びパワーを充填させたのだった。
「世界のベスト4だよ。いい響きだよね」
 今季、一貫して不本意な表情を浮かべていた鈴木が、このときばかりは顔をほころばせた。

<写真説明>CWCセパハン戦勝利を喜ぶ選手たち

※本企画は毎週水曜更新予定です。感想をこちらまでお寄せください。今回編集部の都合で更新が遅れました。

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