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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 浦和勢で唯ひとり、日本代表の一員として東アジア選手権に参加した鈴木啓太。彼は3試合すべてでスタメンフル出場を果たし、北朝鮮代表戦と中国代表戦の2試合ではキャプテンマークも巻いた。
 イビチャ・オシム前監督に見出され、岡田武史新監督が就任しても、今のところその立場は揺るがない。彼自身の言葉も、その実績に呼応するように自信を深めている。それは自身のプレー面ではなく、チーム全体の課題や問題点を提起する発言にも表れている。例えば、覇気なくドローに終わった3戦目の韓国代表戦の後に、彼はこんなふうに話している。
「僕自身も含めて、選手同士の距離が広かった。相手にボールを蹴られる前に、しっかりプレッシャーをかけられなければ、チーム全体をコンパクトにできない。そのあたりは後でビデオを観て確認したいですね」
 一方、2戦目の中国代表戦では仲間を鼓舞するような闘志剥き出しのプレーも見せている。相手キャプテンのリー・ウェイフェンと交錯した際、リーに喉元を掴まれて激しく応戦したのだ。
「警告には気をつけなきゃいけない。でも、やられたらやり返す気持ちがないとね。自分としては冷静にプレーできていましたよ。それよりも、相手が来るんだったら、あのくらいは見せないといけないでしょう」
 昨季、浦和でアジア・チャンピオンズリーグを戦った経験が鈴木の中で活きている。心は熱く、プレーは冷静に。それはオーストラリア・シドニーや韓国・全北などで味わった試練を乗り越えた結果得た糧だ。

 東アジア選手権では、プレー面においても鈴木に変化が生じている。岡田監督体制では4-1-4-1などのフォーメーションを採用することがあり、鈴木はワンボランチを任されることがある。この際、鈴木はこれまでのような厳しいチェックやカバーリングよりも、むしろビルドアップの起点になるべく奔走しているように見える。バックラインと中盤及び前線の繋ぎ役となり、できるだけボールポゼッションに関与しようとしているのだ。もちろん、守備的MFが中盤の底でふたり並ぶような布陣ならば、これまで同様、鈴木は守備に注力することだろう。しかし、異なるタスクを与えられた際には柔軟に対応する機敏さを、彼は携えているように見えた。

 鈴木は1月15日の日本代表・鹿児島キャンプ以降、ほとんど所属クラブに合流できず、代表の活動に専念した。その間、浦和は2週間におよぶグアムキャンプを敢行し、着々と熟成を深めている。だが、チームを離れるハンディはあっても、今季の浦和で鈴木が負う責任はこれまで同様大きい。クラブの同僚でこのたび、代表引退を表明した坪井慶介はこう語る。
「啓太は全然心配ないですよ。代表でも地位を確立しているし、浦和でもその立場は揺るがない。それにアイツは、いろいろな経験をすることで、ここまで大きく成長しているんですからね」
 鈴木にとっては代表とクラブの二足のわらじは、むしろ歓迎すべきことなのかもしれない。昨季、彼が嬉々とした表情で語った言葉がリフレインする。
「試合数が多いのは、むしろ嬉しい。だって、それだけ自分が必要とされているってことでしょ。選手冥利に尽きるよ。選手である限り、参加できる試合にはすべて出たいもの」
 鈴木は今、充実した選手生活を送っている。

<写真説明>東アジア選手権、中国戦で闘志むき出しのプレーを見せた鈴木

※本企画は毎週水曜更新予定です。感想をこちらまでお寄せください。

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