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玉田圭司を巡る20のキーワード

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3月26日の南アフリカW杯アジア3次予選、対バーレーン戦の日本代表メンバーに玉田圭司が選ばれた。

1年8ヵ月前の最後の代表戦はドイツW杯の対ブラジル戦。
日本中を熱狂させた鮮烈なゴール以降、オシムが代表監督を務める間には、結局、玉田に代表招集の声は一度もかからなかった。
ドイツW杯に向けて無理を重ねたツケが、ケガとなって彼の体を蝕み、調子が上がらないまま終えた2シーズンが過ぎ去っていた。

昨年末のシーズンオフの期間、さまざまな思いや葛藤が頭の中を駆け巡っていた。
しかし、名古屋グランパスの新監督にストイコビッチが決まったと聞いた時から、彼の心はひとつになった。
「現役時代を見ていて、すごくいいイメージがある。見ている人も、プレーする人も面白いサッカーをするんじゃないかなって……」

その思いは、強い決意に変わった。
完全オフの期間を短縮し、年明け早々から石垣島や千葉で自主トレに励んだ。
例年にない早い始動が、彼の体を研ぎ澄まし、彼のプレーはふたたび輝きを取り戻していった。
「自主トレと言っても、ボールを使った練習はしてないから、あんまり関係ないですよ(笑)」
と彼はかわすが、ボールを使わないぶん厳しいフィジカルトレーニングを積んでいた。
今の体のキレは、間違いなく自主トレの成果だと言えた。

08年、名古屋グランパスのプレシーズンがスタートして以来、彼の体のキレを見た誰もが「復活」を感じた。
その中に、岡田武史日本代表新監督も含まれていた。
じつは代表監督に就任が決まって以降、彼に会う機会があった名古屋関係者は、岡田監督から玉田の現状を聞かれることが多々あったらしい。

「35人の代表候補」のひとりとして、常に玉田の動向をチェックしていたのであろう。
08年のJリーグ開幕戦での彼の動きを見て、ついに代表に招集するに値すると判断した。

本人でさえ「ちょっと驚いた」という、今回の代表招集だった。
予想よりも早いタイミングの招集に驚きはあったが、しかし、それ以上に自信を取り戻していたので、慌てることはまったくなかった。
代表選出直後から、たくさんのお祝いの電話やメールが来たというが、その声に興奮や浮ついたところは一切なく、研ぎ澄まされた思いだけが伝わってきた。
代表招集が決まった直後に行われた2節の浦和レッズ戦でも、視察に訪れた岡田監督の目の前で躍動感溢れる動きを見せ、前年アジア王者を粉砕する一翼を担って「復活」を証明してみせた。

今回の代表招集が、自分にとってどれだけ大きなものか、彼はひしひしと感じている。

取材以外の時間でも、なんとなくドイツW杯の話題になることを避けている節があった。
ブラジル戦の話題を出されるごとに、葛藤を感じ、「早く新しい結果を出したい」と思っていた。
チャンスを今、手にしている。
「ブラジル戦の玉田」を超える、新しい玉田圭司となるチャンスを。

<写真説明>W杯ドイツ戦でゴールを決めた玉田のシュート。しかし、いつまでも「アノ記憶」だけではいたくない


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