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W杯予選激闘通信「戦士たちの思い」

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 6月10日バンコク市内の学校で行なわれた日本代表の練習。練習後は、バンコク在住の日本人の子どもたちへと選手がファンサービスを行なった。そんな少年の一人が長谷部誠にサインをもらうと、「レッズに居るときから、応援していました。頑張ってください」とエールを送る。浦和レッズのユニホームをまとった小学生の言葉に、長谷部は頬を緩め、「ありがとう」と言いながら、少年の頭をなぜた。

 今年1月、ドイツ・ブンデスリーガ、ボルフスブルクへ移籍した長谷部。移籍直後からレギュラーの座を手にすると16試合に出場し、ウインターブレイク明けのチームの躍進に貢献。クラブはUEFAカップ出場圏内の5位でフィニッシュしている。「ドイツでの練習はきつくて、最初は筋肉痛になったくらい」と話すが、その舞台で自身が何を身につけたかについては、「わからない」と笑う。
「向こうへ行ってまだ4ヶ月だし、海外に行っているからすごいとか、そういうことでもないと思う。ヨーロッパでプレーして、自分のプレーが変わったとか、そういうことはまだわからない。もちろん海外組だからと期待されるのは理解しているけれど、僕にとってはどうでもいいことでもある。今大事なのは、1日も早く代表チームでやろうとしていることを理解すること」と話していた。

 代表では合流から約3週間が経ち、出場試合数も3試合を重ねた。
「オマーン戦(6月7日)では、暑さもある中での試合だったから、もっと緩急のある動きができればよかった。流れのまま、FWのところにまで行くシーンもあったけれど、そうではなくて、前へ行くときは、トップスピードで行くとか、そういうプレーが出来ればよかった。まだまだ自分の持ち味を出し切れているとは言えない。もっと決定的な仕事をしなければいけないし、もっともっと動いて、ボールを触って、リズムに絡んだプレーをしたい」
 自身のプレーについて語ると、自然と“もっともっと”というフレーズが増える長谷部。その姿勢は浦和レッズ時代から変わらないが、ドイツでの経験を経て、言葉や態度にいい意味での余裕を感じる。06年に初めて代表に呼ばれたときは、「自分の特徴を出す」という強い意識が彼のコメントからも表れていた。もちろん、最も若い立場だった当時と現在では彼の立場も変わっている。しかし、新しいチームでポジションを掴むために何が必要かを、彼はドイツで学んだように感じる。

 今回、初めての移籍を経験。高校から浦和レッズへ加入後も1年目の試合出場数は限られていたが、2年目以降はレギュラーへ定着。しかし、ドイツでは、安定した立場から文字通り“挑戦者”という立場へと変わった。言葉もサッカーも違う環境の中で「新チームのサッカーに馴染みながら、いかに自身の力を証明するか?」という作業は、容易なものではなかっただろう。しかし、16試合出場という結果が、長谷部の挑戦が成功したことを物語っている。その手ごたえを感じての代表合流。
代表ではボランチというポジションだからこそ、チーム全体を把握することが求められる。自分の力をアピールするよりもまずは「チームのサッカーを理解する」という意識で日々を過ごしているのも、「何を求められているか」を察知した成果だと思う。
「あえて言うなら、ドイツでは球際の激しさの必要性を改めて知った。だから、1対1の球際のところでは負けたくない」
 “ボールを奪ってからの速い攻撃”という岡田ジャパンのひとつのスタイルを体現するためにも彼の球際のプレー、そして奪ってからの攻撃参加が鍵を握るシーンが増えそうだ。

※本企画は不定期更新予定です(W杯3次予選期間中続きます)。感想をこちらまでお寄せください。

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