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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 アジア・チャンピオンズリーグ準決勝第1戦。Jリーグ勢同士の対戦となったガンバ大阪対浦和レッズのゲームは1-1のドローに終わった。前半、細貝萌のゴールで先制した浦和にしてみれば後半80分のPK献上の末の失点は悔やまれるだろう。しかし試合後の浦和の選手たちは総じて柔和な表情を浮かべ、この試合でひとつの手応えを得たようだった。
 この試合の3日前。浦和はリーグ第28節の千葉戦で2-3と敗北を喫していた。その試合内容はつねに相手の後手を踏む低調なもので、熾烈な残留争いを展開する相手の気迫に完全に気圧された印象があった。
 しかし万博での浦和は落ち着き払い、アウェーチームらしく相手の勢いを止め、効率的にゲームを進めた。破綻していた守備も改善され強固。田中マルクス闘莉王が負傷でベンチに回り、バックラインはリベロに阿部勇樹、そしてストッパーには坪井慶介と堀之内聖という陣容だったが、経験豊富な彼らの守備は鉄壁だった。
 また不調の鈴木啓太に代わり守備的MFを務めた山田暢久と細貝のふたりはスキルフルなガンバMF陣をチェイスし続け、自由を与えなかった。細貝にいたっては貴重な先制ゴールを決めて、この試合の殊勲者となっている。そして前線のポンテ、エジミウソン高原直泰の3人は守勢に回り全体が下がり気味になるチームのなかでも苛立つことなく、体を張り、守備に奔走した。そしてサイドの相馬崇人平川忠亮の両翼も攻守に連動。80分に相馬が相手FWの播戸竜二を倒して痛恨のPKを与えてしまったが、それでも1-1で凌ぎホームでの第2戦に臨むのだから、満足いく結果ではある。

 実は、この試合の前日に急遽、選手だけのミーティングが敢行された。ゲルト・エンゲルス監督体制で戦う今季、リーグ戦で結果が出ず、月日が経つごとに内容面も鈍化していく現状は指揮官だけでなく、選手たちにも大きなストレスとなっていた。
 平川がミーティングの様子を説明する。
「戦術面は少し。あとは戦う気持ちについて、みんなで言い合った。『ここで終わるわけにはいかないだろ』って。最後はみんな気合が入った。リーグ戦とACLで大会が違う点も良い気分展開になったと思う。もちろんリーグ戦も大事だし、まだまだいけると思っている。でもACLは今回、準決勝でしょ。そりゃ気持ちが昂りますよ。それで、今日は集中した、いい戦いができたのかもしれない」
 またキャプテンの山田も選手ミーティングの影響が大きかったと述懐する。
「なんか団結したんスよね。これまでモヤモヤしていたものがあったけど、その霧が晴れたというか……。戦術的なことでは前のふたり(2トップ)に、『どちらかひとりは必ず中盤まで降りてきて守備をしてくれ』って言ったりして、これまで中途半端だったプレー面も言い合えた。それが良かったのかもしれない」
 浦和はこれまでも選手たちの意識改革、奮起で状況を打開してきた歴史がある。2006年シーズン。ギド・ブッフバルト体制3年目のレッズは戦術面が硬直していた。そんななか選手たちは自らの意思でサッカースタイルを模索し、実践し、クラブ史上初のリーグ制覇という結果を導いた。2年後、彼らは再び一念発起しようと、自己を奮い立たせたのである。
 選手主導の状況改善は長期的には不安が募る。しかし選手たちは今を生き、今を重視するという当たり前の精神で、苦境を乗り切ろうとしている。

※本企画は毎週水曜更新予定です。感想はこちらまでお寄せください。

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