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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 あどけなさが残る少年である。
 浦和ユースの欧州遠征でスペイン・バルセロナへ渡航したときも、目を輝かせてその様子を説明してくれた。
「せっかくだったので、バルセロナの町を探索しました。やっぱり、サクラダ・ファミリアがすごかったですね。目の前に立った瞬間、思わず声を上げてしまったくらいです」
 練習場から寮まで通う自転車の前で、その少年は直立不動で話し続けた。
 山田直輝は浦和レッズが純粋培養で育て上げた逸材である。出身こそ広島県だが、早くから埼玉で育ち、浦和レッズジュニアユース加入後、着々とトップへの階段を上ってきた。父は元アジアユース(U-20)代表で、JSL1部・マツダSCでSBやMFとして活躍した山田隆氏。また、母は元体操選手で、いわば運動一家である。

 昨季はユース所属ながら2種登録選手としてナビスコカップ・京都サンガ戦に途中出場して公式戦デビューを果たした。また昨年の高円宮杯全日本ユースでは決勝の名古屋グランパス・ユース戦でハットトリックを達成して優勝に貢献。大会通算でも8ゴールをマークして得点王にも輝いている。
 山田直のプレースタイルは豊富な運動量と卓越した状況把握能力を駆使したボールタッチ、そして相手の急所を突く飛び出しとパスワークなどである。そのプレーは、その風貌とも相まって、パク・チソン(マンチェスター・U/韓国代表)を彷彿とさせる。

 今季は晴れて正式にプロ契約を結んだ。そして新指揮官であるフォルカー・フィンケ監督の下、チャンスを掴み、早々に出場機会を与えられた。
 リーグ第2節・FC東京戦では途中出場してロブソン・ポンテのゴールをアシスト。ナビスコカップ・広島戦ではプロ初スタメンを勝ち取った。そしてリーグ第4節・大分戦で、彼は新時代の到来を高らかに告げる。
 リーグ初スタメンを飾った山田直はトップ下のポジションで縦横無尽に駆けた。あるときは味方へパスを送り、あるときはゴール前でシュートを放つ。そしてあるときにはファーストプレスの担い手になり、あるときは自陣ゴール前で必死にクリアをしていた。絶大なる存在感を醸し出すリンクマンの出現で、チーム全体が燃焼する。仲間は弱冠18歳の若者に触発されるように躍動し、今季のチームコンセプトである《コンビネーションサッカー》を実践すべく奔走した。

 1-0で勝利した試合後、フィンケ監督が語った。
「『この若い選手を日本代表に入れるべきだ』と煽ってほしくないが、山田直輝は良いプレーをしたと思います。非常にレベルの高いなか、そして非常に多くのレベルの高い選手に囲まれながらも、彼は非常に良いプレーをしました。彼は運動量が豊富で技術的にも優れている。『コンビネーションサッカー』を実践するうえで、彼は最適な選手だと思う」
 ニュージェネレーションが赤きクラブを牽引する。そして山田直も、その未来に想いを馳せる。
「埼玉スタジアムで先発出場するのは小さな頃からの夢だった。でも自分のことは二の次で、まずはチームが勝てて良かったです。自分の持ち味である運動量でボールに絡むことを意識していました。前目のポジションのほうがミスを恐れずにできるので、自分には合っていると思います。いつも、足がつるまで走るのを目標にしています。実際につりましたが、それでも90分間走り続けられたのは良かったです。でも僕自身、点を決められるチャンスがあった。そこを決めていればもっと楽に試合が運べたと思うので、今後の課題にしたいです」
 多くの報道陣に囲まれながら、山田直は直立不動で話し続けていた。

<写真>大分戦に先発した山田

※本企画は毎週水曜更新予定です。感想はこちらまでお寄せください。

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