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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 先週のさいたまダービーは、試合開始16分までの猛攻が実り、浦和レッズが2-1で勝利した。
  試合を決定付けたのは柏木陽介だった。まずは4分。田中達也の右クロスをエジミウソンがゴール前で受けるも相手DFに防がれる。すると、こぼれ球を拾った柏木が得意の左足でファーサイドへカーブ回転のロビングパスを供給し、それを高崎寛之が頭で決めた。
 
 そして16分、エジミウソンがペナルティエリア内に侵入してマイナスのクロスをバイタルエリアへ送ると、柏木が今度は逆足の右足でダイレクトシュートし、ゴール左上へボールを流し込んだ。
  ゴールした柏木は、高崎がカメラマンから拝借したカメラに向かって歓喜のポーズを取った。
「(広島の)槙野も、何かゴールパフォーマンスをやっているんでしょ。だったら僕も対抗しないとね」
  流麗なコンビネーションプレーによるゴール。狙い通りの形から得点した浦和は、これで一気に勝負を決めてしまったかに見えた。
  しかし2点のリードで精神的に落ち着いてしまったのか、その後浦和は大宮の逆襲に遭い、前半終了間際には相手エースFWのラファエルに1点を返されてしまう。
  それでも浦和は、今回ばかりはこれまでのような勝負弱さを露呈せず、後半はいくつかのピンチこそあったものの無失点でしのぎ、貴重な勝ち点3を得ることが出来た。
それにしても、今の柏木の勢いは本物である。彼は浦和に新しい風を吹き込んでいる。それはチーム戦術だけでなく、雰囲気を一変させる明るさをも内包させた新鮮なものだ。そして、その背番号8の働きが、細貝萌や田中達也、原口元気らの他の主力のパフォーマンスをも引き上げている。

思えば柏木は、今季サンフレッチェ広島から浦和に移籍加入して以降、浦和のチーム状況の停滞に思い悩んでいた。これまで彼は主にトップ下を務めて攻撃のタクトを握ったが、チーム戦術が機能せずコンビネーションが確立されないチームに苛立ちさえ覚えていたのだ。
 それでも柏木は、チームが成熟するには少なからず時間が必要なことを自覚してもいた。
「僕は広島のペトロビッチ監督の時代から、このような『コンビネーションサッカー』と呼ばれるプレーをしてきたけど、広島だってすぐにうまく行ったわけじゃなく、それなりの時間が掛った。そもそも広島はそれほど実力のある選手が揃っているわけじゃなかった。それでもあれだけの時間を要したわけだから、選手層が厚くて実力者が揃ってる浦和では、広島以上にチーム戦術の構築に時間が掛ると思っている。でもね。もし浦和で良いチームが作り上げられたら、それはとても魅力的で強いものになるっていう期待がある。だからこそ僕は、この浦和を選んだんです」
  阿部勇樹をイングランド・チャンピオンシップのレスター・シティへ放出した浦和は、セントラルMFのポジションを誰が務めるのか、その再考に迫られていた。そんな中、チームキャプテンの鈴木啓太が右足太もも裏を肉離れして戦線離脱を強いられ、もうひとりの有力候補だった山田直輝も右足腓骨を亀裂骨折し、同じく長期離脱してしまった。そこでフォルカー・フィンケ監督は苦肉の策として、アタック陣の要である柏木のポジションをひとつ後ろへ下げて、細貝萌とコンビを組ませた。今回はその窮余の策が予期せぬ化学反応を起こし、チーム戦術の促進へと繋がった格好だ。
 大宮を下して、浦和はリーグで7戦連続負けなしとなった。まだまだ上位との差はあるし、負傷者続出による苦しい台所事情は変わらない。それでもひとまず浦和は、若きニューリーダーの台頭によって、終盤戦での逆襲の素地を手に入れたと言るだろう。



★島崎英純公式サイト

※本企画は毎週水曜更新予定ですが水曜試合の際には木曜更新になることもあります。感想はこちらまでお寄せください。

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浦和レッズクラブガイド

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