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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 まだ2010年シーズンが終了していないのに、浦和レッズの周囲が騒がしい。これも注目されるクラブの宿命なのか、監督や選手の去就に関する憶測や噂が連日飛び交っている。チームはこの喧騒に惑わされてはならないが、それでも実際にピッチ上で戦うコーチングスタッフや選手などの現場サイドから見ると、現在の残りの試合に注力する素地が削がれているようにも感じる。

 そんな中、浦和のフロントはひとつの事柄だけは公に発表した。それは2005年シーズン途中からチームに加入し、歴代の浦和外国籍選手の中で最長在籍を誇るロブソン・ポンテとの契約更新を行わないという内容だった。
 そもそもクラブは、ポンテとの契約についても12月に入ってから公に発表する心積りだったのだろう。しかし11月14日のJリーグ第30節・京都サンガ戦でポンテが鮮やかなゴールを決めた直後のヒーローインタビューで、「もしかしたら、残りの数試合は僕にとってレッズでの最後の試合になるかもしれないから」と述べて涙を流し、その後のミックスゾーンで「自分は男として、このレッズと契約して、これまでプレーしてきた。だから、その終わりの時も男として、面と向かって言ってもらいたいし、裏でコソコソするのはありえないこと。自分が唯一欲しいものは、自分に対してのリスペクトだ。僕がこのチームでこれまでやってきたことは、それくらいに値するものだと思っている」と述べたことで、クラブは数日後にポンテの去就を前倒しして発表した。

 ポンテがクラブに不信感を抱いたのは、今夏に6ヵ月の短期契約を結び、その後の契約条件について話をされなかった時期に、クラブが外国籍選手で同ポジションのMFマルシオ・リシャルデス(新潟)と移籍交渉を行ったことに起因する。
ポンテはその筋道として、まずは自らに契約満了の旨を伝え、それを踏まえて新たな選手獲得をしてほしいと訴えたに過ぎない。今回浦和フロントは、この最低限の誠意を怠った。

 いずれにしても、ポンテが今季限りで浦和を去ることは決まった。そしてポンテは、これまで自らが示してきたように、強靭なプロ意識でゲームに集中し、自らの存在価値を高めようとしている。
 11月23日、Jリーグ第32節の横浜F・マリノス戦。ポンテは試合開始わずか3分、そして前半終了間際の44分に、いずれも正確無比な右足で横浜ゴールを打ち破り、チームの勝利に貢献した(○4-1)。
 浦和はリーグ戦残り2試合だけでなく、天皇杯準々決勝にも進出してタイトル戴冠、及び来季アジア・チャンピオンズリーグ出場権獲得の可能性を残している。
そこでポンテは、浦和レッズというクラブに対して、自らの残像と歴史を刻み込むべく、全身全霊を賭して戦い抜くだろう。それが彼のプライドであり、常に自らにリスペクトを注いでくれたサポーターへの恩義でもあるのだから。

 最も大事なこと。それはこれからの1ヵ月で見せるポンテのプレーを、姿勢を、想いを、クラブ、残された選手、そしてサポーターがどう受け取るのかにある。

[写真]11月14日、京都戦でのポンテ


★島崎英純公式サイト

※本企画は毎週水曜更新予定ですが水曜試合の際には木曜更新になることもあります。感想はこちらまでお寄せください。

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