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レッズの真相「ビッグクラブ2」

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 浦和レッズは大宮アルディージャとのプレシーズンマッチ、さいたまシティカップで0-3の完敗を喫した。

 数字上は差があるが、試合内容についてはそれほど相手に劣っていたわけではないかもしれない。いやむしろ大宮よりも浦和の方が個人能力で勝っていたかもしれない。しかしサッカーはただ選手の力量だけで勝敗が決するものではない。浦和は単純に現状のチーム力の差を相手に見せ付けられて敗戦しただけなのかもしれない。

 大宮戦ではDF山田暢久の退場という不運な出来事もあった。お世辞にもこの日の主審のジャッジは安定していたとは言い難く、この山田暢の退場のジャッジにも大いに疑問符が付く。セットプレー時の攻防で山田暢が大宮DFの坪内秀介の顔を手で叩いたというのが主審の言い分だが、ゲームが止まった直後に主審が山田暢に歩み寄った際に、当の坪内までもが『別に何も起きてないですよ』とばかりに主審に声を掛けたのは印象的だった。

 この試合はプレシーズンマッチである。すなわち勝敗にはそれほど拘る必要もない。もちろん埼玉のライバルとの対戦なので、それなりに結果を求める部分もある。しかし両チームの思惑はあくまでも、この試合はテストマッチの位置付けだろう。そこで、無用なジャッジによって11人対10人の試合にされたのだから目も当てられない。要は、この試合はこの時点で、大事なリーグ開幕前にも関わらず、テストを施すことができなくなったのである。

 それでも、大宮戦における浦和のプレーは全体的に拙かったと言わざるを得ない。ゼリコ・ペトロヴィッチ監督は今季、新スタイルである“オランダ式ポジションサッカー”を実践し、シーズンインからこの1ヵ月間、戦術熟成に邁進してきた。そのプレースタイルは昨季まで浦和を率いたフォルカー・フィンケ監督の“コンビネーションサッカー”とは似ても似つかないものだが、監督が代わったのだからスタイルが変わるのは当然のこととして受け入れるしかない(とはいっても、それを決断したクラブの判断は重いものだと思っている)。

 しかし鈴木満監督率いる大宮に比べて、現状の浦和のチーム戦術は付け焼刃の状態に過ぎなかった。前半こそそれなりにピッチをワイドに使い、自慢のウイング・原口元気と田中達也を躍動させていくつかのチャンスを作っていた。しかし局面での突破は果たせても、最終局面のアタッキングサードでの攻撃手法に乏しいため、1トップのエジミウソンやトップ下のマルシオ・リシャルデスが全く機能せず、彼らが蚊帳の外に置かれている。これでは得点を望むべくもなく、当然浦和はスコアレスで試合を終えた。

 ただし、そんな浦和にも光明はある。それはこの大宮戦で後半から出場してそのベールを脱いだ新外国籍選手、マゾーラの輝きだろう。2人、3人をものともせずに縦へ突破を図る圧倒的なドリブル&スピード。そして一瞬だけ見せた巧みなボディコントロールからのアクロバティックなシュート。この垂涎のプレーに、浦和はひとつの希望を覚えたはずだ。
 マゾーラ。彼はおそらく、今季のJリーグで、センセーションを巻き起こすだろう。


★島崎英純公式サイト

※本企画は毎週水曜更新予定ですが水曜試合の際には木曜更新になることもあります。感想はこちらまでお寄せください。

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