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シャビを育てたコーチが語る「バルサが強い本当の理由」

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 日本のバルサ・ファンのみなさん、こんにちは。ジョアン・ビラです。私は現在、FCバルセロナのメトドロヒーア(メソッド部門)のディレクターをつとめています。これは、バルサのスポーツ部門において、練習内容の分析、改善、コーチの育成等を統括するポストです。それまでは、カンテラ(下部組織)の監督として、たくさんの原石を指導してきました。私が指導した選手にはシャビプジョルビクトル・バルデスなど、トップチームで活躍する選手がたくさんいます。

 シャビとは、彼が13歳から4年間、一緒にトレーニングをしました。シャビはいつも試合中、味方の選手を助ける動きをしていました。ボールを持っている選手をサポートし、パスコースを作る動きを、小さい頃からやっていました。チームメイトがうまくプレーできるように助けていたので、周りはシャビのことをすごく信頼していました。その仲間たちがいま、シャビにたくさんの賞をもたらせてくれています。

 シャビにはたくさんのことを教えたつもりです。サッカーの技術、体力、戦術面だけでなく、それ以上に重要な価値観を伝えてきました。それはたとえば、仲間を大切にすること、チームで戦うこと、時間を守ることなど様々です。トレーニングを通じての働きかけはもちろんのこと、バルサのトップチームの試合を見に、カンプ・ノウに連れて行くこともありました。当時、トップチームのピボーテ(中盤の底に位置するポジション)としてプレーしていたのが、現在トップの監督を務めるジョゼップ・グアルディオラでした。わたしはシャビに「グアルディオラのプレーをよく見ておくんだ」と話をしたこともありました。

 ピッチを離れて、チームのみんなで映画に行ったこともあります。当時から才能を持っていたシャビには、サッカーなどの集団生活を通じて、『キミもグループの一員なんだ』という、チームの中のひとりという意識を持たせることを心がけていました。

 サッカーは個人対個人の戦いではなく、チームスポーツです。個人で優れた資質を持っていたとしても、それをチームの中で発揮することができなければ、本当にいい選手だとは言えません。その意味で、シャビやプジョルは優れたチームプレイヤーです。彼らは常にチームの一員として、チームのためにプレーする気持ちを持っています。それは彼らだけでなく、メッシやイニエスタなど、バルサの他の選手も同様です。彼らはただサッカーが上手いだけでなく、人間性の良い部分もたくさん持っています。そして、個人の高い能力を、チームの一員として活かすことができます。

 私が考えるいい選手は、ひとつのトレーニングに対して、チームの一員として取り組むことのできる人間性を持った選手です。そして、個人のエゴを捨て、チームの一員として働くことのできる選手です。いまのバルサにはシャビを筆頭に、そのような選手がそろっています。それこそが、バルサの強さの秘密と言えるでしょう。

(構成 鈴木智之、写真 小川博久)

カンテラでシャビなどを14年間指導し、バルサの現役ディレクターとして活躍するジョアン・ビラ。彼が監修したトレーニングDVD『知のサッカー』が発売中。

@thinksoccer【ジョアン・ビラの日本の育成年代に向けた提言】

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