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シャビを育てたコーチが語る「バルサが強い本当の理由」

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 日本のバルサ・ファンのみなさん、こんにちは。今回は、選手を選抜する際に、私が心がけていることをお話したいと思います。私は世界各地で選手をセレクトする仕事をしてきました。カタルーニャにある選手育成センター(トレセン)や、カタルーニャ選抜にも関わっています。去年の夏は中国に1ヶ月半行き、中国全土を周って50人の優秀な選手を選抜しました。

 私は第一線(トップレベル)に到達する選手の基準を持っています。選手をセレクトするときに、体が大きくて、強いことは重要ではありません。背の高さ、低さもそれほど関係ありません。肉体的な強さ、弱さも関係ありません。

 わたしが『この選手はすばらしい。契約したい』と考えたとき、次のうち、どちらの質問をすると思いますか? 1つ目は10歳、12歳、14歳のときに大会で優勝したことがありますか? など、過去の戦績に対する質問です。

 2つ目の質問は、ボールを自分の思うとおりにコントロールすることができる? ディフェンスの裏にあるスペースをみつけることができる? 仲間に対していいパスを出すことができる? といった、テクニック&戦術に対する質問です。

 答えは、2つ目の質問です。14歳頃までの選手にとって、大切なのは勝利の数ではありません。何を学んできたか、なにを身に付けてきたか。それこそが大切な部分です。わたしは選手が獲得してきたトロフィーの数に対して契約をするのではなく、その選手がどんなプレーをできるかに対して、契約をします。

 いい選手をみつけるための、ヒントを教えましょう。それは、選手が『プレーに対して、正しい解釈ができているか?』を見ることです。サッカーは試合の中で、次々に状況を把握し、判断して、プレーを実行していくことが重要なスポーツです。大切なのは、状況を判断し、状況に応じたプレーを選択することです。選手を見ていて、ボールを止める、蹴るなど、表面的な部分を見ることはそれほど難しいことではありません。

 そこから一歩進んで、「選手はなぜこの動き、このプレーを選択したのだろう?」と、そのプレーに至るまでの『判断』を見ます。そして、プレーを正しく解釈できる、頭の回転が速い選手をピックアップします。その部分でもっとも優れた選手がシャビであり、イニエスタであるといえるでしょう。

 たとえば、選手がプレーの判断をくださなくてはいけない場面があるとします。わたしは、選手がその状況に飛び込んで、どうするかを見ています。いい選手は味方、相手の状況から判断して、「この場面は難しいな」と感じたら、プレーを変えます。そうして、その場所にとどまり続けようとはしません。逆に悪い選手は、解決できないにも関わらず、その場所に居続けようとします。

 頭の回転が速い選手は、状況に応じて、次々にプレーを変えていくことができます。シャビはまさにそのような選手です。パスコースがなければ、ターンをしてドリブルをします。それは、状況に応じて、次々に判断を変えているからです。

 わたしが提唱するのは、頭の中を鍛えることです。わたしは選手たちが、しっかりとサッカーを理解して、プレーできるようになることを望んでいます。ただボールを蹴ることだけを教えるのではありません。頭の中を鍛える練習こそが大切なのです。そして、その中から、トップレベルに到達する選手が出てくるのだと思います。

(構成 鈴木智之、写真 小川博久)


カンテラでシャビなどを14年間指導し、バルサの現役ディレクターとして活躍するジョアン・ビラ。彼が監修したトレーニングDVD『知のサッカー』が発売中。

@thinksoccer【ジョアン・ビラの日本の育成年代に向けた提言】

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