beacon

シャビを育てたコーチが語る「バルサが強い本当の理由」

このエントリーをはてなブックマークに追加
 日本のバルサ・ファンのみなさん、こんにちは。ジョアン・ビラです。私は現在、FCバルセロナのメトドロヒーア(メソッド部門)のディレクターをつとめています。これは、バルサのスポーツ部門において、練習内容の分析、改善、コーチの育成等を統括するポストです。

 以前は、カンテラ(下部組織)の監督として、たくさんの原石を指導してきました。私が指導した選手にはシャビやプジョル、ビクトル・バルデスなど、トップチームで活躍する選手がたくさんいます。なかでもシャビはいまでも、私を父親のように慕ってくれます。

 私は今年の3月、日本でU-12年代を対象としたクリニックを行いました。日本の子どもたちのクオリティは、すばらしいものでした。報道などでご存知の方もいるかもしれませんが、そのうちのひとりはバルセロナの下部組織からオファーを受け、10歳にしてスペインに旅立ちました。

 彼の他にもタレント(才能)を持った選手が多くいました。ボールコントロールやコーディネーションは、この年代で完璧に近いものがあると感じました。スペインのトップレベルの子たちと同等、もしくはそれ以上ではないかと驚いています。

 一方で、『判断』の部分に向上できる余地があると感じました。彼らのプレーを見ていると、どの選手もこれまで、多くの時間をテクニックの練習に費やしてきたのではないかという印象を受けました。状況把握、決定、実行といった、判断をともなうトレーニングの時間が少ないため、そこを向上させることができていないように感じるのです。

 ただしこれは、日本の子供たちだけの問題ではありません。私は世界中で指導をしていますが、中国でもポーランドでも、スウェーデンでもそうでした。スペインの中にも、判断のともなったトレーニングをする必要がある子供たちは、たくさんいます。

 わたしは、日本の子供たちが持つ、ボールコントロールの技術、高いコーディネーションに加えて判断力が身に付けば、さらに良いプレイヤーになれると考えています。

 テクニックを教えることについて、多くの指導者は正しい考えを持っていると思います。体をどうやってコントロールするのか、どうやってボールを触るのか、それを上手に説明できる指導者は多いでしょう。しかし、プレーの判断、決定をくだすことについて、どう教えればいいかを理解している指導者は、どの国においても少ないと感じています。

 サッカーにおいて大切なことは、ペルセプシオン(状況把握)、デシジョン(決定)、エヘクシオン(実行)です。どれかひとつが欠けていても、トップレベルのプレイヤーになることはできません。

 選手はプレーをするとき、まずはピッチの中で状況を把握して、どこへパスを出すかなどのプレーを決定し、実行(ボールを蹴る等)します。プレーをするうえで大切な3要素のうち、多くの指導者は『実行』の練習ばかりしていて、実行をするために大切な『状況把握』、『決定』の練習をあまり行なっていないように感じます。その結果、選手は正しい状況把握、決定ができず、間違ったプレーを選択してしまうのです。

 シャビやイニエスタのような良い選手は、どんな状況でも、ベストのプレーを選択することができます。なぜなら、小さいころから状況把握、決定のトレーニングをしてきたからです。私は状況把握、決定といった判断力を身につけることこそが、良い選手になる秘訣だと思っています。技術を身につけることも大切ですが、それと同じぐらい、次々に変わる状況の中で、その場所へいつ、どのタイミングで、どのように出るかを判断することも大切なのです。

 繰り返しますが、実行の練習だけでは十分ではありません。実行のトレーニングをした上で、状況把握、決定のトレーニングをすることが重要です。大切なのは、ピッチ上で正しい判断をすることなのです。

(構成 鈴木智之、写真 小川博久)


カンテラでシャビなどを14年間指導し、バルサの現役ディレクターとして活躍するジョアン・ビラ。彼が監修したトレーニングDVD『知のサッカー』が発売中

@thinksoccer【ジョアン・ビラの日本の育成年代に向けた提言】

チャンピオンズリーグで活躍する選手を育てる指導法【サカイク】

TOP