beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第85回「期待しています! 山口貴之(町田ゼルビア)」
by 木次成夫

96年アトランタ五輪世代が「ユース代表」だった頃、読売クラブ(現東京V)及び、日本代表の将来を担う「天才ゲームメーカー」として注目されていたのが、山口貴之(以下、ヤマ)でした。しかし、その後“伸び悩み”。同五輪一次予選頃には、“成長著しかった”前園真聖、“攻撃的MFから攻撃力もあるボランチにプレーの幅を広げつつあった”伊東輝悦(清水)らとのポジション争いに敗れ、最終予選ではメンバー候補にも名前があがりませんでした。

73年8月1日生まれ。
東京都町田市出身。
170cm、70kg
<経歴>
成瀬サッカークラブ(町田市)
読売クラブJr.ユース
92-93年:V川崎
94年:コリチーバ(ブラジル)
 かつてカズ(三浦知良)が
 プレーしたクラブです。
95年:ブランメル仙台(現ベガルタ)
96-97年:京都サンガ
98-99年:V川崎
99年:V神戸
00年―01年:G大阪
01年―03年、V神戸
04-05年:サズパ草津
 (04年=JFL,05年=J2)
06-07年:サガン鳥栖
08年:町田ゼルビア

際立ったセンスとテクニックを誇りながら、“伸び悩んだ”要因のひとつは、スピードの欠如でした。しかし、すでに「1学年上」の小倉隆史、「同学年」の前園、「2学年下」の城彰二ら多くの選手が引退した中、相対的には地味な存在ながらも、ヤマは現役を続け、今季、町田ゼルビア史上「初のプロ」として故郷に戻りました。

といっても、現時点では期待に応える活躍は、できていません。ゼルビアは関東リーグで順調に2連覇を飾ったものの、開幕前に「主将」を任されたヤマは怪我(本人曰く、肉離れ)で、リーグ戦12試合中6試合に交代出場したのみ。ただ、イマイチゆえに“このままでは終われない”ヤマの存在は、全国地域リーグ決勝大会に向けて、ゼルビア「最大の武器」だと思います。大卒2年目の雑賀友洋ら「若手」が中心のチームゆえ、そもそも「経験豊富な」ベテランの存在は重要ですが、ヤマは“20代前半時点でフィジカルでは際立っていなかったにもかかわらず、センスと経験で生き残っている”点で、例えば、際立ったフィジカルで勝負してきた選手の「衰えを隠せない晩年」とは違います。

「けっこう、昔の同級生とかが試合を見に来てくれるんですよ」(ヤマ)

ヤマに抜かれたり、かわされたり、要は翻弄された“かつての”サッカー少年にとって、今、ヤマを地元で見られることは嬉しいことでしょうし、それぞれの記憶に残る「ヤマとのプレー経験」は、今や、ゼルビアの未来に向けた「無形財産」だと思います。また、ヤマからすると、昔からの知り合いからの応援が、モチベーションにつながっている面もあるのでしょう。

すでにリーグ優勝を決めたゼルビアにとって、最も大事なことは、全国地域リーグ決勝大会(11月22日から)を高いモチベーションと、良好なコンディションで迎えることです。残り2試合のリーグ戦、関東予選が進行中の全国社会人選手権、そして天皇杯(予選と本大会)を“いかに”戦うか……。FC岐阜、MIOびわこ草津に続き、3年連続で「JFL昇格」を目指す戸塚哲也監督の手腕の見せ所ですが、クラブとしては、「地域決勝」の多大な経費を“いかに”工面するかも重要な問題のようです。

そもそも、ゼルビアは今季、人件費が増加しています。例えば、昨季まではプロ0人で、監督は小学校教諭(つまりノーギャラ)。今季はGMに川添幸一氏、監督に戸塚哲也氏が就任。リーグ戦は相変わらず入場料無料ですから、収入の多くはスポンサー料です。「地域決勝」に向けて、来季以降に期待する新規スポンサーが登場するか、グッズ販売収入が増えるか……。

「地域決勝」開催地は、一次ラウンドが福岡県(北九州市)、高知県、鳥取県で、決勝ラウンドは沖縄県石垣島。現在、町田ゼルビアは募金をつのっていますが、クラブHPによると、経費見積もりは1000万円以上。ゼルビアに限らず、すべての地域リーグ所属クラブにとって、莫大な額です。縁起でもないことを書くことになりますが、今季「地域決勝」出場の末にJFL昇格を決めることができないクラブの、来季以降の経営を大きく左右しかねない額です。

東京五輪招致運動に携わる自治体幹部の方々には、町田ゼルビアに目を向けてほしいです。

五輪役員あるいは自治体幹部が、たとえ数人であっても、北京五輪視察にいかずに、その分をゼルビア援助に使うとか……。

「地域決勝」そのものを、天皇杯本大会同様にJFA(日本サッカー協会)が経費負担をしてもしかるべきではないかとすら、思います。例えば、「大人の余暇」としての大会を一部廃止するなど策を講じてでも――。多くの“夢見る”ワーキングプア(Jクラブ下部組織出身=元エリートも多数)の頑張りが、「Jリーグ100年構想」の原動力にひとつになっているのですから。

▼Jを目指すクラブの動向

●東北リーグ1部
(6日)
ビアンコーネ福島 0-3 グルージャ盛岡
*首位=グルージャ(6勝2分け)

●東北リーグ2部南
(8節、6日)
福島ユナイテッドFC 8-1 クレハ
*首位=ユナイテッド(8連勝)

●北信越リーグ1部
(10節、5、6日)
サウルコス福井 0-4 ツエーゲン金沢 
ヴァリエンテ富山 2-3 松本山雅 
フェルヴォロ-ザ石川・白山FC 0-5 長野パルセイロ 
グランセナ新潟 1-6 ジャパンSC

首位=パルセイロ(勝ち点26)
2位=ジャパンSC(同25)
3位=ツエーゲン(同24、)
4位=山雅(同15)
5位=グランセナ(同11)
6位=ヴァリエンテ(同7)
7位=サウルコス(同6)
8位=フェルヴォ(同0)

*6日、パルセイロはノグチピント・エリキソン(バリエンテ郡山)の加入発表

●北信越リーグ2部
(10節、6日)
新潟医療福祉大学 5-0 アンテロープ塩尻 
*首位=上田ジェンシャン(勝ち点25)、2位=アンテ(同20)

●関西リーグ1部
(12節、5日)
バンディオンセ加古川 5-0 ASラランジャ京都
※優勝決定済みのバンディは12連勝

●中国リーグ
(6日)
レノファ山口 1-0マツダSC
デッツオーラ島根 2-0  日立笠戸
*首位=レノファ(勝ち点27)。5位=デッツオーラ(同17)

●九州リーグ
(12節、6日)
海邦銀行SC 0-4 ホンダロック
OSUMI NIFS 1-3  V・ファーレン長崎
三菱重工長崎  3-4 新日鐵大分
沖縄かりゆしFC 4-1 ヴォルカ鹿児島
ヴァンクール熊本 1-0 九州INAX

順位
首位=V・ファーレン長崎
 (勝ち点33、得失点差+44)
2位=ホンダロック(同33、+41)
3位=沖縄かりゆし(同29)
4位=新日鐵大分(同25。+19)
5位=ヴォルカ鹿児島(同25、+7)
6位=海国銀行(同14)
7位=ヴァンクール熊本(同12)
8位=九州INAX(同6)
9位=三菱重工長崎(同3)
10位=OSUMI(同0)

▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
「リスト&記事リンク」

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

TOP