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タイ王者の長身FWを封じた甲府の大卒ルーキーDF井上詩音「そこで負けたら自分じゃない」ACL2戦連続完封

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FWロンサナ・ドゥンブヤを高さでも制したDF井上詩音

[10.4 ACLグループH第2節 甲府 1-0 ブリーラム・U 国立]

 ヴァンフォーレ甲府で着実な成長を遂げている大卒ルーキーが、タイ王者の屈強なストライカーを完封した。これで甲府は開幕節のメルボルン・シティ戦に続き、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)で2試合連続無失点。DF井上詩音は「海外の相手に2試合無失点で来られているのは守備の選手としてポジティブだと思う」と手応えを口にした。

 敵地での開幕節メルボルン・シティ戦を0-0で終え、大会初出場の甲府が迎えた初めてのホームゲーム。タイ3冠王者のブリーラム・ユナイテッドとの対戦において、23歳の井上に託された役割は明確だった。

 193cmの長身を誇るギニア代表FWロンサナ・ドゥンブヤ、ロシア出身のFWラミル・シェイダエフら屈強な外国籍選手を止めること。「スカウティングで相手FWの選手が体が強くて大きい選手なのはわかっていたので、自分の強みである1対1、空中戦でしっかり負けないようにしようと思って臨んでいた」という。

 そんな気迫はキックオフ直後から感じ取れた。ドゥンブヤとは約10cmの身長差があった中、井上は滞空時間の長いジャンプを何度も繰り出し、空中戦にほとんど完勝。シェイダエフの意表を突いたドリブルに苦しむ場面もあったが、前半42分には決死のシュートブロックを見せるなど、粘り強い対応を90分間続けていた。

「J2で体の強い外国籍選手と対戦してきたので、自分の力になっていると思う。駆け引きを覚えてきた中で国際試合でうまく自分の強みを活かせた。自分の強みは身体能力だと思っているので、そこで負けたら自分じゃない。自分の強みは誰にも負けたくないと常に思って練習しているので、ストロングが相手とぶつかったときに絶対に負けちゃいけないなと思っていた。そこがうまくこういう大舞台でも活きたと思う」

 専修大から今季加入した大卒ルーキーだが、名古屋U-18で同期だったDF菅原由勢(AZ)は飛び級でプロ入りしていまや日本代表の主力。同じく同期のDF藤井陽也(名古屋)も高卒プロ入りで日本代表入りを経験したほか、DF成瀬竣平(水戸)もパリ五輪を目指すチームに早生まれで選出されているなど、“追いつき追い越せ”の気持ちは強い。

「僕よりもっと先に走っている選手がいっぱいいるので、一緒の舞台でやりたい。追いつけ追い越せで、先に走ってもらっているぶん、僕は追いつくだけなので、少しずつ積み重ねて頑張っていきたい」。アジアの戦いはそうしたチャンスにつながる晴れ舞台の一つ。「失うものはないし、思い切りやってやろうと思っている」と高いモチベーションで臨んでいる。

 J2リーグでも昇格争いを繰り広げており、これからも過密日程が続く。それでも「僕としてはキツいという感覚は全然なくて、全部の試合に出たい。まだまだ若いので、ガムシャラに与えられた環境で全て100%でやるのが自分のやるべきことなのかなと思う」と井上。プロ1年目でのしびれる戦いを飛躍のきっかけとすべく、「自分がゼロに抑えることができればチームは負けないし、まずは失点ゼロということを意識して、今日は自分が得点するチャンスもあったので、チームのために少しでも得点という形でも貢献できればと思う」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
●ACL2023-24特設ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

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