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川崎F山根視来が挙げた守備の課題、指揮官は“即時奪回”の姿勢を尊重「選手全員がまず取りに行く」

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ゴールを決めたDF山根視来

[11.28 ACLグループI第5節 川崎F 5-0 ジョホール 等々力]

 川崎フロンターレの右サイドバックは攻撃の要だ。DF山根視来はジョホール戦で1ゴール1アシストの活躍。グループリーグ5連勝で首位を確定させ、年明けの決勝トーナメント進出を決めた。「日程的にもここで決めないと厳しくなると思っていた。きょう決められてよかった」と喜びを示した。

 今節で引き分け以上の場合、グループ首位が確定した。しかし今節で負ければ、12日の最終節で2位に落ちる可能性も。9日に天皇杯決勝も控えているため、今節で突破を確定させたい気持ちがあった。

 その意識は試合開始早々に結実する。前半8分、中盤でボールを収めたDF大南拓磨が右サイドの山根とワンツー。「視来くんにもチャンスあれば前に上がりたいんですよねと話をしていた。そこで視来くんがうまく出してくれた」。絶妙なお膳立てを受け、大南がPA右からクロスを上げる。ファーサイドのMF家長昭博が押し込み、早くも得点を奪った。

 だが、その後はボールを保持するも追加点は奪えない。「雰囲気的にもちょっと安心しちゃってる感じがあった」(山根)。チャンスは作ったが、前半は1-0のままで折り返した。

 後半5分に待望の2点目。右サイドの家長のクロスをFWレアンドロ・ダミアンがボレーで仕留める。さらに、同15分には山根が右サイドから大きなクロスを放つ。「あの辺は常に狙ってるところ」とピンポイントのアシストを送ると、FWマルシーニョが体を投げ出してヘディングシュートを決め切った。

 後半24分のFW小林悠のゴールも、山根の起点からパスがつながった。山根は同43分、右サイドから中央に移動。MFジョアン・シミッチの縦パスをFW宮代大聖が落とし、待ち構えた山根が左足ミドルでダメ押しの5点目を決める。「ポジション取りに関しては、誰がどこにいてもいい。チャンスになりそうなところにも顔出すようにしている。シュート練習を最近よくやってるので、大聖がイメージ通りのボールを落としてくれたので、リラックスして(シュートが)出た」と自身のゴールを振り返った。

 鬼木達監督は、山根の活躍に目を細める。「非常にいい成長を遂げている。チームとしてやってきた狙いを個人で出せるようになっている。守備についても、彼の強度、ボールへのアプローチの近さはチームで一番。彼くらいの強度で守備ができると、チームはレベルアップしていける」と太鼓判を押していた。

 しかし守備に関して、山根自身は課題も挙げていた。「自分たちから奪いに行きすぎて剥がされて、ちょっと危険なミドルを打たれた」と数少ないながらもピンチの場面を振り返る。2-0で迎えた後半6分には山根のプレスが中盤で外され、同サイドから相手の攻撃を許した。そのまま自陣まで入られ、シュートこそ枠外をわずかに逸れていったが、奪いに行きすぎたというひとつのシーンではあった。

 だが、指揮官は山根を称えた中で「奪いに行きすぎた」シーンを強調し、その姿勢を否定しなかった。「多少こぼすこと、抜かれることはある。それはチームとしてカバーしていくことで、また本人が奪い切るところにフォーカスしていくところ。選手全員がまず取りに行くという姿勢を見習っていければいい」。即時奪回を完遂することを求めつつ、その姿勢自体はチームの手本として語っていた。

 アジアの頂点に一歩ずつ近づいている。当初はジョホール(マレーシア)、蔚山現代(韓国)、ムアントン・ユナイテッド(タイ)という並びに“死の組”とも言われていたが、蓋を開けば5連勝。最終節を残し、グループ首位で決勝トーナメント進出を決めた。たびたびACLへの思いを語る山根は突破を決めた今、改めて「本当にチャンスだと思っている」と力を込める。「いまのメンバーだからこそ、ACLでタフに戦える。一番上まで行けるように、みんなでまた高め合いたい」と自信をのぞかせていた。

(取材・文 石川祐介)
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石川祐介
Text by 石川祐介

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