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F東京・試合をベンチから見た羽生、厳しいポジション争いを歓迎

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[4.17 ACL第4節 F東京3-0北京国安 東京ス]

 チームメイトが躍動する姿を、目を細めて見ていた。FC東京が北京国安を3-0と一蹴したACL第4節。疲労も考慮され、ベンチ入りしたが出場機会のなかったMF羽生直剛は「今日はいいですよね?」と言いながら、ミックスゾーンを一気に通りすぎようとした。慌てて「羽生選手、スイマセン!!」と声を掛けると、笑いながら「そういうのいいから」と言ったが「ポジション争いについてうかがいたいんです」と言うと、そういうことかと納得した表情で足を止めてくれた。

 この試合、MF大竹洋平、MF田邉草民が今季初先発を飾っている。彼らはMF石川直宏に「いつも試合に出ている選手たちも、刺激を受けたと思う」と言わしめるほどの高いパフォーマンスを見せた。週末のJリーグ第7節・仙台戦のスタメンがどうなるかが、今後の話題になりそうな活躍ぶり。

主軸としてプレーしてきたベテランの心中は、穏やかではないのかと思いきや「活躍してほしかったですよ、(大竹)洋平たちには。純粋に」と羽生は言い、「みんなでやっていた方がおもしろいし、調子が良いやつが出た方がいいと思うから。洋平と(田邉)草民と(渡邉)千真とか活躍してほしかったし、うれしかったですよ。彼らが活躍して」と続けた。

 チーム内の競争激化を喜んでいた。「もちろん、競争はありますけど、質の高いクラブにしていきたいし、JリーグもACLも戦えるチームになることが大事です。その競争もまた楽しいですし、(彼らが活躍してくれて)良かったです」と晴れ晴れとした表情で言った。

 当然、ランコ・ポポヴィッチ監督が、この1試合を特に重視してメンバーを決めるようなことはない。「今日だけ良いプレーしても何の意味もない。今日だけしかこの力が出せないのであれば、心配しなければいけません。今日は、全員がいつでも試合に出られる準備をしてくれた証。ただし、これで終わるようではクラブにとって大きなマイナスです。私が先発を決めるのではなく、彼らが日々のトレーニングで先発を決めるのです。先発に選ばれても、力を出せなければ意味がないので、やるべきことをやってほしい。私は選手たちを信じています。ただ、私の要求は厳しいし、高い」と、結果を出したチームを評価しつつ、今後も気を抜かないでほしいというメッセージを発信した。

 これまで公式戦でプレーする機会のなかった選手たちが、結果を残したこの試合。決勝トーナメント進出に王手をかけたこの一戦は、チームの競争力を高めるという意味でも非常に大きな意味を持つはずだ。どの試合であっても、先発出場できるのは11人だけ。新たにピッチ上で、手応えを感じ取った選手たちが一気に成長することもあるだろう。ハイレベルの競争を繰り返しながら、F東京は一歩一歩進んでいく。その先には「JリーグもACLも戦えるチーム」つまり『JリーグもACLも勝ち抜けるチーム』があるはずだ。

(取材・文 河合 拓)



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