「東京五輪への推薦状」第44回:圧倒的な成長速度とハイポテンシャル、青赤の超大型FW原大智
2020年東京五輪まであと3年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ
小平グランドでのトレーニングから一際大きな選手がナイスな動き出しでボールを引き出す。少し奇妙なほどの存在感があった一方で、一抹の疑問もあった。
「あんなデカいの、FC東京U-18にいたっけ……?」
佐藤一樹監督に聞いてみたら、「原ですよ。原大智。去年は全然試合に出ていないですし、ぐーっと背が伸びちゃいましてね」なんて答えが返ってきた。今季開幕前のことである。自慢の息子についてよくぞ聞いてくれましたという雰囲気で語り出した指揮官は、この時点で未完の大型FWが大化けすることを確信しているようだった。
急激な身長の伸びに体が追い付かず、「一昨年の夏が終わるころに、左ひざの下がポキッと。成長が早すぎて筋肉が硬くなって剥離してしまったとかで……」(原)戦線離脱を余儀なくされた。しかも本人が思っていた以上の長期に及ぶ離脱である。けが自体が癒えてからも、急激に大きくなってしまった体をうまく操れず、思うようにプレーできない苦しい日々が続いた。ただ、その間も課せられるメニューから逃げずに向き合う姿勢を、いつも選手のことを「コソッと観ている」佐藤監督は高く評価。その進化に期待をかけていた。
現在188.5cmまで伸びた身長は「まだ伸びている」(原)というから、実はまだ発展途上である(お父さんも190cmあるそうだ)。ただ、「体が動くようになってきた」(原)今年は、プレーの進化が目に見えるほどに明らかになってきた。指揮官の言葉を借りれば、「この1か月に限っても、進化している」状態で迎えた日本クラブユース選手権(U-18)で大ブレイクを遂げているのは半ば必然の流れだったと言えるかもしれない。パスを送る立場のMF平川怜も「去年とは比べものにならない。本当に頼もしいです」と満面の笑顔で努力家の先輩の成長ぶりを語ってくれた。
元より動き出しの良さには定評があり、本人も「裏に抜ける形が得意」と語るタイプだった。それが伸びてきた身長を活かすことができるようになってきている。相手を背負いながら収めるプレー、あるいはシンプルに空中戦での勝負だ。「前は当てるのも下手だった」と自ら笑って振り返るほどのヘディング下手から、相手に脅威を感じさせるレベルへと着実に階段を登っている。
夏の全国大会準決勝まで5試合連続6得点。カップ戦でありがちな固め取りによる得点王ではなく、コンスタントな得点での個人タイトルだけに少し別格の価値がある。明らかに晩成型の成長を続けてきた選手だけに、日の丸を着けるはもう少しばかり先になるかもしれない。ただ、この圧倒的な成長速度とハイポテンシャルを思えば、たとえば2年後のU-20W杯のメンバーリストに彼の名前があったとしても、それをサプライズとは思うまい。
執筆者紹介:川端暁彦
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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●第41回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会特集ページ
小平グランドでのトレーニングから一際大きな選手がナイスな動き出しでボールを引き出す。少し奇妙なほどの存在感があった一方で、一抹の疑問もあった。
「あんなデカいの、FC東京U-18にいたっけ……?」
佐藤一樹監督に聞いてみたら、「原ですよ。原大智。去年は全然試合に出ていないですし、ぐーっと背が伸びちゃいましてね」なんて答えが返ってきた。今季開幕前のことである。自慢の息子についてよくぞ聞いてくれましたという雰囲気で語り出した指揮官は、この時点で未完の大型FWが大化けすることを確信しているようだった。
急激な身長の伸びに体が追い付かず、「一昨年の夏が終わるころに、左ひざの下がポキッと。成長が早すぎて筋肉が硬くなって剥離してしまったとかで……」(原)戦線離脱を余儀なくされた。しかも本人が思っていた以上の長期に及ぶ離脱である。けが自体が癒えてからも、急激に大きくなってしまった体をうまく操れず、思うようにプレーできない苦しい日々が続いた。ただ、その間も課せられるメニューから逃げずに向き合う姿勢を、いつも選手のことを「コソッと観ている」佐藤監督は高く評価。その進化に期待をかけていた。
現在188.5cmまで伸びた身長は「まだ伸びている」(原)というから、実はまだ発展途上である(お父さんも190cmあるそうだ)。ただ、「体が動くようになってきた」(原)今年は、プレーの進化が目に見えるほどに明らかになってきた。指揮官の言葉を借りれば、「この1か月に限っても、進化している」状態で迎えた日本クラブユース選手権(U-18)で大ブレイクを遂げているのは半ば必然の流れだったと言えるかもしれない。パスを送る立場のMF平川怜も「去年とは比べものにならない。本当に頼もしいです」と満面の笑顔で努力家の先輩の成長ぶりを語ってくれた。
元より動き出しの良さには定評があり、本人も「裏に抜ける形が得意」と語るタイプだった。それが伸びてきた身長を活かすことができるようになってきている。相手を背負いながら収めるプレー、あるいはシンプルに空中戦での勝負だ。「前は当てるのも下手だった」と自ら笑って振り返るほどのヘディング下手から、相手に脅威を感じさせるレベルへと着実に階段を登っている。
夏の全国大会準決勝まで5試合連続6得点。カップ戦でありがちな固め取りによる得点王ではなく、コンスタントな得点での個人タイトルだけに少し別格の価値がある。明らかに晩成型の成長を続けてきた選手だけに、日の丸を着けるはもう少しばかり先になるかもしれない。ただ、この圧倒的な成長速度とハイポテンシャルを思えば、たとえば2年後のU-20W杯のメンバーリストに彼の名前があったとしても、それをサプライズとは思うまい。
執筆者紹介:川端暁彦
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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