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ラストプレーでミラクル大逆転劇を完結!! 清水ユース、残り10分からの3発で札幌U-18を下す

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清水エスパルスユースが逆転勝利で白星発進

[7.23 クラブユース選手権(U-18)GL第1節 札幌U-18 2-3 清水ユース 群馬自動車大学校G]

 23日、日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会が開幕し、群馬県内各地でグループリーグ第1節が行われた。群馬自動車大学校グラウンドでは北海道代表の北海道コンサドーレ札幌U-18と東海第4代表の清水エスパルスユースが対戦。札幌U-18が2点を先行したものの、清水が残り10分を切ってからの3ゴールで3-2の逆転勝利をつかんだ。

 残り10分を切った時点で0-2。35分ハーフで気温が上がり切っていない午前8時45分からのゲームとはいえ、30度を超える環境下で戦った影響は小さくない。それでも清水ユースの選手たちは最後まで走り切り、劣勢を跳ね返した。

 試合の立ち上がりから清水は主導権を握り、積極的にゴールを目指す。とりわけ、最初の10分間のラッシュは凄まじかった。「我々は攻撃の破壊力を持っている。特に両サイドはストロングポイント」(澤登正朗監督)。左のMF小竹知恩(2年)らの打開力を生かしながら、チャンスを作り出す。前半3分にFW田中侍賢(3年)がチームのファーストシュートを打つと、同5分には連続でCKからゴール前に迫った。しかし、押し込みながらもネットを揺らせない。「前線が決めてくれないと難しくなる」。指揮官が振り返った通り、その後は中盤での潰し合いとなり、ボールを前に運べない時間帯が続いた。

 すると、前半33分に一瞬の隙を突かれる。左サイドの深い位置に展開されると、札幌のFW畑山聖那(2年)がボールをキープ。ここに清水のDF陣が寄せ切れず、フリーでクロスを上げさせてしまう。最後はゴール前で待ち構えていたFW出間思努(3年)に頭で決められ、前半終了間際にビハインドを背負った。

 0-1で折り返したチームは反撃すべく、試合前に整理した戦い方を再確認する。

「狙いは3バックの脇。ルーズに落としたボールに対する反応が悪かったので、そこは継続してもう一度やる。あとは最終ラインにボールが入った時にCBにターンをさせていたので、絶対にいかせない」(澤登監督)

 しかし、チームはギアが上がらず、攻守で球際の攻防に競り負けるシーンが頻発。後半7分にはゴール前の混戦からMF小沼昭人(3年)に右足で押し込まれ、さらにリードを広げられた。

 挽回したい清水だったが、以降も劣勢を強いられる。U-17日本代表の注目MF矢田龍之介(2年)も運動量が少なく、パフォーマンスが上がらない。「こぼれ球の回収がまだまだで、ボールを収めてから違いを見せることもできなかった」。本人も認めた通り、ボランチの位置でセカンドボールを拾えない。攻撃でもボールをなかなか受けられず、後半20分に交代を余儀なくされた。

 時間だけが経過し、残りは10分。敗戦濃厚の展開となる中、清水はここから驚異的な粘りを見せる。後半28分に左SB有村柊人(3年)の右CKからCB岩本昇悟(3年)が頭で合わせて1点差に。息を吹き返すと、その後はサイドをうまく使いながら攻め込んで攻撃の時間帯を増やしていく。

 そして、後半35+1分。左CKを得ると、有村がグラウンダーのボールをニアサイドに入れる。これをMF仲野丈翔(3年)がヒールで背後に流すと、途中出場のMF岡田珠羽(3年)が押し込んで試合を振り出しに戻した。

 こうなれば、試合の流れは清水。勢いに乗ると、積極的に仕掛けて、セットプレーなどから好機を作り出す。そして、迎えた後半35+4分。時間はほとんど残されていない中、最後の最後に清水は左CKを獲得する。一度は跳ね返されたが、MF西原源樹(2年)が頭で繋ぐと、最後は岩本が体勢を崩しながらも頭で押し込んだ。

 その直後に試合終了のホイッスルが鳴り響き、清水はラストプレーで大逆転劇を完結。「最後、諦めずに逆転してくれて素晴らしかった」と指揮官が称賛した通り、最後まで諦めない姿勢を貫いて勝点3をもぎ取った。

 振り返れば、今季の清水は開幕から厳しい戦いを強いられてきた。2種年代最高峰のU-18高円宮杯プレミアリーグから降格し、今季はプリンスリーグ東海で戦っているものの、前半戦は5勝1分3敗の4位。1年でのプレミア復帰を目論んでいたが、現状では苦戦していると言わざる得ない。守備に比重を置く相手の牙城を崩せず、逆にカウンターやセットプレーから失点を喫して敗れるケースが目立つ。実際にこの札幌戦も主導権を握った時間帯に得点を奪えず、気が付けば2点のビハインドを背負っている状態だった。

 しかし、前半戦の半ばあたりからチームの状態は上向きになり、手応えをつかんで群馬に乗り込んできた。その復調の原動力になっているのが、最後まで運動量を落とさずに巻き返せるようになった点だ。

 昨季はボールを動かすスタイルに取り組み、練習でもフィジカルトレーニングを最小限に留めていた。しかし、今季はポゼッションスタイルに加え、“走り切る”ことにも注力してフィジカル面を強化。走行距離やスプリント回数にこだわり、その数値も今までにないモノになっている。そうした取り組みの成果がこの札幌戦で現れた。

「データに現れているし、選手たちのモチベーションにもつながる。(その取り組みがあったからこそ)体力はうちの方が残っていたと思う」(澤登監督)

 劇的な形で初戦を制した清水。5年ぶりの大会制覇に向け、弾みが付く勝利になったのは間違いない。次なる相手はプリンスリーグ関東1部で2位に付ける浦和ユース。“巧くて走れる”チームを目指す“エスパルス”が夏の全国舞台で主役となるべく、次戦も自分たちの取り組みを信じて勝利を目指す。

(取材・文 松尾祐希)

●【特設】第47回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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