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[選手権予選]「また頑張れば、日本一になれると信じている」夏の全国王者・三浦学苑、初の選手権出場へまず1勝:神奈川

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[10.21 全国高校選手権神奈川県大会3回戦 三浦学苑3-1厚木北 潮風公園サッカー場]

 第91回全国高校サッカー選手権神奈川県大会は21日、3回戦を行い、今夏の全国高校総体を制した三浦学苑は今大会初戦となる一戦で厚木北と対戦。FW高城翔伍(3年)の2得点とMF木村哲太(3年)のゴールによって3-1で勝った。三浦学苑は27日の準々決勝で向上と対戦する。

「インターハイで優勝したけれど選手権が一番。日本一になれたのでまた頑張れば、日本一になれると自分たちも信じている。三浦は一戦一戦大事にするチーム。もちろん、全国を目指しているんですけど、あまり先のことを見過ぎずに一個一個勝っていきたい」。MF栗原奨吾主将(3年)は静かに選手権への思いを語ったが、夏の全国王者が3発勝利で好スタートを切った。

 電光石火とも言える先制ゴールがチームを勢いづけた。前半4分、三浦学苑は左中間でボールを受けたFW戸邉凱也(3年)が鋭く縦に切れ込んで折り返し。これを高城が左足で決めて早々とリードを奪う。全国総体決勝でも先制ゴールを生み出している2人のホットラインから生まれた先制弾。この後も得意のオープン攻撃から厚木北ゴールへと迫る三浦学苑は、左SB橋本直也(3年)が再三ゴールライン付近まで駆け上がるなど相手をPAへ押し込んで得点機をつくり続けた。

 栗原が「楽しむのが三浦のサッカー。内容は自分たちらしくはなかったんですけど、雰囲気は自分たちらしかった」と語ったように、いい意味で緊張せずに試合に臨んでいた三浦学苑。ただ最後の崩しの部分がやや力任せになっていたことに加え、中盤でも普段のようにリズム良くボールを動かすことができず、粘る厚木北から2点目を奪うことが出来ない。

 逆に前半半ばには厚木北の反撃を食らう。MF佐々木俊輝(3年)の右クロスからFW滝田渉(3年)に決定的な左足ボレーを放たれるなど危険な場面もあった。それでも33分、FW野村徹(3年)のヒールパスから左サイドを制した橋本直がクロスボール。これをコントロールした高城が再び左足で決めて2-0とした。

 ただ前がかりになったチームには隙があった。中盤も積極的に攻撃に絡む三浦学苑の背後を突くロングボールが失点につながる。後半15分、厚木北は縦パスからFW石塚淳(3年)が強烈な一撃。GK角井栄太郎(1年)が反応した一度は止めたものの、厚木北はこぼれ球をMF齋藤孝紀(3年)が左足でゴールへ押し込んで1点差に詰め寄った。

 三浦学苑は19分、ペナルティーアークで得たFKを栗原が右足で狙うも、ゴール右ポストを直撃。23分には木村のラストパスから野村がシュートへ持ち込み、こぼれ球に戸邉が詰める。だが厚木北GK橋本颯也(3年)がスライディングで必死の防戦。さらにMF若林大輝(3年)が放ったミドルシュートも正面を突き、三浦学苑に嫌な空気が漂った。

 それでも的確なカバーリングで攻撃を遮るCB宮坂瑠(3年)中心に相手の追撃を断った三浦学苑は31分、左サイドから抜け出した木村が「もう1点欲しかった。いつものオレなら中へ上げていたと思うけど、気合で行った」とDFとのフィジカル勝負を制してゴールへ迫ると、最後は左足でのループシュートでゴールネットを揺らし、貴重な3点目。これで勝負の行方を決定づけた。

 衝撃的な初出場初優勝から2か月。木村は「きょうは出せなかったんですけど、普段の練習とかスピード感がめっちゃあって、みんなの動きが凄くスムーズになった。パスを動きながらできるようになって止まるシーンが減った」と口にするように、チームは日本一となった夏からさらにパワーアップしている。チームの底上げを果たすこともできたが、一方で気の緩みも。県2部リーグにあたるK1リーグでは相洋に0-1で敗戦を喫してしまった。ただ「サッカーは甘くない」と認識し、そこから選手権へ向けてまたモチベーションを上げたチームはK1リーグのラスト2試合を8-0、9-0で圧勝。周囲からのプレッシャーがあったことは間違いないが、ムードの良さも武器のチームは枝村隼人監督が「気負いすぎず、自分たちらしくできればと思っていた。ただ、周りのプレッシャーをしっかり感じることも、選手たちには感じてほしいところであるので、バランスを取ってきました」と語ったように、プレッシャーをいい意味で楽しみながら、最高の精神状態で選手権に入っている。

 昨年の選手権予選から今年の関東大会予選、高校総体予選は全て準優勝。神奈川県2位で出場した全国総体で頂点には立ったが、チームは未だ神奈川県での優勝経験がない。だからこそ、神奈川1位は絶対の目標だ。指揮官は「まずしっかりと県を突破しなければならない。総体や関東の予選とは違う。『もうシルバーはいらない』。そこにたどり着くまでまだまだ試合はあるので、次のゲームにいい形で臨めるようにしっかりと調整して、きょう出た課題等もしっかりと分析して改善していきたいと思います」と引き締めた。高城は「チャンピオンとしての誇りとチャレンジ精神を忘れずに1試合1試合勝っていきたい」。“三浦旋風”は冬も吹き荒れるのか。夏の全国王者が初の選手権出場権を全員でもぎ取りに行く。

[写真]後半31分、左サイドから仕掛けた三浦学苑MF木村が左足でゴール
(取材・文 吉田太郎)
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