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[MOM735]鵬翔MF矢野大樹(3年)_199分目の初ゴールを挙げた守備の人

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 鵬翔3-0佐野日大 三ツ沢]

 ゴールを挙げた本人も、驚いた。今大会、鵬翔は1回戦の東邦(愛知)戦、2回戦の帝京大可児(岐阜)戦にスコアレスドローの末、PK勝ちで3回戦に駒を進めていた。今大会の初ゴールは、3回戦の佐野日大戦の前半39分にようやく生まれた。

 中盤でボールを奪ったMF矢野大樹(3年)は、そのままゴール前へと駆け上がった。選手権では最終ライン前の防波堤として、相手の攻撃を食い止めるのが仕事のアンカーを務めていた。だが、一切の迷いはなかったと振り返る。「カットした位置が高かったので、このままゴール前に行ったら、相手は付きにくいかなと思っていました。1回、ボールを受けられると思ったタイミングでは来なかったのですが、点を取りたかったので、そのまま上がって行ったら、最後に柏田(崇走)から良いボールが来ましたね」。クロスボールにヘッドで合わせると、ボールはゴール左上隅に決まった。初戦のキックオフから実に199分目のチーム初ゴールだった。

 得点を決めた直後は、頭の中は真っ白になったと笑う。「まさか決まるとは思っていなかったので、嬉し過ぎて思わず走り回っていましたね。ベンチへ向かったのは、ミーティングのときに『出ている選手は出ていない選手の気持ちも考えろ』という話を監督にされていたからだと思います。ケガでスタートから出られない(FW仲濱)健太のこともあったので、体が勝手に動きました」。

 前半の立ち上がりは劣勢の展開を強いられた。だが、先制ゴールを得て臨んだ後半は、鵬翔が試合の主導権を握った。その理由を、矢野は明かす。「どうしても、アンカーの僕の左右のスペースを使われていたので、後半は東と川崎に指示を出して、そのスペースを埋めてもらっていました。しっかり守備をして、取ったボールを早く前に運べばうまくいくと思っていたので」。キャプテンの狙い通り、チームは追加点を挙げて3-0で勝利した。試合後、矢野は先制点をアシストしてくれた柏田に「このゴールは、お前への誕生日プレゼントだ」と伝えたという。この日は柏田の18回目の誕生日だった。

 誰もが待ち侘びていたゴールを挙げて、3試合連続完封で勝利した鵬翔は、悲願の『国立行き』をかけて、5日の準々決勝で立正大淞南(島根)と対戦する。「今日の後半のように、守備から入ることが大事になると思います。東と川崎は攻撃が好きだから前のめりになりがちですが、しっかり声を掛けてバランスを取っていきたい」と、言葉に力を込めた。

 鵬翔の練習グラウンドには『目指せ、国立』と書かれた看板が掲げられているという。毎日の練習後、選手たちは一列に整列し、校歌を歌い、最後にOB会から寄贈された看板を見ながら「目指せ、国立!!」と、叫んでいるのだという。「僕も3年間、毎日やってきました。優勝が一番の目標ですが、やっぱりベスト4に入るのも大きな目標です。次は必ず勝ちたい」。初ゴールでチームを勢いづかせた『守備の人』矢野は、大一番へ気を引き締めた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 河合拓)

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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