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「圧倒的なパスサッカー」目指す藤枝東、清水商との名門対決制す:静岡新人戦

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[2.2 静岡県高校新人戦中部地区準々決勝 藤枝東3-1清水商 藤枝東G]

 平成24年度静岡県高校新人サッカー大会の中部地区大会は2日、準々決勝を行い、藤枝東高グラウンドでは藤枝東と清水商が激突。両校合わせて全国大会優勝回数計22回(国体含む)の名門対決はFW小谷春日(1年)の2得点など3-1で藤枝東が逆転勝ちした。藤枝東は3日の準決勝で静岡と対戦する。

 ともに前日の2回戦の勝利によって県大会進出を決定。それもあってか、両チーム共に先を見据えた起用もあった。特に藤枝東はU-16日本代表として昨年のAFC U-16選手権に出場したGK長澤祐弥(1年)が、同日の静岡県高校選抜セレクション参加を考慮されて先発を外れ、また昨年の選手権予選で3戦連発のFW田口史也(2年)は捻挫のために欠場。それでも雨中で始まった名門対決は互いに特長を出しあう展開となった。

 3-4-3システムの藤枝東は最終ラインから丁寧にボールを動かす。左鎖骨骨折から復帰したばかりの注目FW小谷は激しい接触プレーを避けて得意のドリブル突破を封印していたが、それでもチームの攻撃は多彩。相手の対応が少しでも遅れると、正確かつスピーディーなパス交換でDFを振り回していた。中盤では07年度全国準優勝時の司令塔、MF河井陽介(現清水)を彷彿とさせる1年生の10番MF藤原賢吏が絶妙な間合いで相手を外してチャンスメークすれば、3バックの両ワイドも積極的な攻撃参加。そしてCFに入ったFW片井巧(2年)と右サイドのFW櫻井敬基(2年)のスピードが清水商DF陣を苦しめた。

 ただし、先制したのは相手のくさびのボールに対して厳しいプレスをかけてボールを奪い、手数をかけずにカウンターを繰り出していた清水商。立ち上がりやや安定感を欠いた藤枝東ディフェンスラインの乱れを逃さずにオープンスペースへボールを進めると、ドリブルで勝負することのできる元U-14日本選抜FW信末悠汰とMF大石竜平(ともに1年)の攻撃力を活かして決定機をつくり出した。9分、縦パスのこぼれ球を拾って抜けだした信末のラストパスに、左サイドからフリーで飛び込んだMF水野広夢(2年)が決定的な左足シュート。これはGK知識貴史(1年)のビッグセーブに阻まれたものの、15分だ。速攻から縦に仕掛けた信末が再び左サイドへ絶妙なラストパスを送ると、今度は水野がしっかりとゴールへ沈めてリードを奪った。

 だが、藤枝東はワンチャンスをしっかりとものにして同点に追いつく。22分、右サイドの櫻井が一瞬の加速で対面のDFを振りきりラストパス。ファーサイドから詰めた小谷が同点ゴールを決めた。さらに39分、藤原の左CKをファーサイドのMF原田守(2年)がDFと競りながらヘディングシュート。豪快な一撃は右ポストを叩いてゴールへ吸い込まれた。

 逆転した藤枝東は後半も主導権を握る。ボールを支配し、3トップのスピードも活かして清水商の守備を切り崩すと、9分、敵陣で相手のミスパスをインターセプトした小谷がそのまま右足シュートを決めて3-1。対人で強さを発揮したDF大村海太主将(2年)ら守備陣も後半は決定機をつくらせなかった。それでも清水商の伝統的な前への迫力は健在だった。最前線でぐいぐいとチームを引っ張る信末や左サイドの水野を中心に押し込んでセットプレーを獲得。運動量が落ち、パスコースの減った藤枝東は苦しまぎれのロングボールをCB鈴掛涼(1年)とCB荒木春佑(2年)に跳ね返されて反撃を食らうなど、完全に呼吸ができなくなっていた。ただ、清水商はCKでのキックミスなど、攻撃の精度を欠いてしまう。また、35分には右中間を抜けだした大石の折り返しにマークを振り切った水野が飛び込み、40分にも信末が決定機を迎えたが、決めきることができなかった。

 勝った藤枝東は今年、リスクを覚悟の上で攻撃サッカーを貫く模様。全体的に技術が高いが、特に櫻井、小谷ら前線は充実しており、サイズこそないものの3バックも身体能力を備えている。年末の第6回GO FOR 2018 CUPと年明け早々の第17回時之栖カップでは、攻撃のキーマンである小谷を負傷で欠きながらも全国レベルの強豪相手にいずれも4強入りするなど、幸先のいいスタート。この日も名門対決を3-1で制した。

 確かに早いタイミングで縦にボールを蹴りこんでくる清水商にプレッシャーをかけられず、終盤は自滅する形で攻撃のリズムを崩すなど課題はまだまだあるが、楽しみなチームであることは間違いない。同校OBで、現役時代にMF山田暢久(現浦和)らとともに92年全日本ユース選手権優勝を経験している吉野友三監督は「最後はゆとりがなくなって、プレッシャーにハマっちゃった感じですね。それでもできるようにというところが最終的な目標。攻撃の良さをしっかり出すこと。それをメインに考えている。長いシーズンが続くので一喜一憂しないでやりたい」と語った。吉野監督が就任した年に入学してきた選手たちが現在の最上級生。08年度の全国高校選手権出場を最後に全国舞台から遠ざかっているだけに、名門は今年が勝負の一年となる。

 主将の大村は「遠征とかで結構いい相手とも戦えて、結果も残せているけれど、監督が目指している『圧倒的なパスサッカー』は全然。結果だけ見ればこのチームは強いと言われているけれど、内容を見たら他から『オレらでも勝てるんじゃねーの』と思われるようなチームなので、一度やったら『二度とやりたくない』と思わせるようなパスサッカーをやりたい。(全国から遠ざかっているが)今年、流経(流通経済大柏)だったり、Jのクラブともやりました。劣っている部分もありますけれど、何もできなかったかと言ったら戦えた部分もある。きょうも3-1で勝てている。内容を詰めていければ、行ける。静岡抜ければ全国で戦える自信もある。全国優勝を目標にやっています」と言い切った。ふじ色軍団は静岡で「復権」し、今年こそ全国で輝きを放つ。

[写真]前半39分、藤枝東はDF原田が決勝ヘッド

(取材・文 吉田太郎)

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