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ドイツで成功した意識改革 内田「今は守備の方が楽しい」

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 3戦全敗に終わったコンフェデレーションズ杯でさまざまな課題が浮き彫りになった日本代表。その中で確かな存在感を示したのがDF内田篤人だった。ブラジルとの開幕戦では、マッチアップしたFWネイマールに粘り強い守備で対抗。オーバーラップからのクロスという攻撃力に加え、ドイツに渡ってからの3年間で守備力にも磨きをかけてきたことをピッチ上で証明した。日本代表の現在の立ち位置、そして課題は――? 進化する右サイドバックが、ゲキサカの独占インタビューに答えてくれた。

―あらためてコンフェデレーションズ杯を振り返ってみて、どんな大会でしたか?
「(開幕戦の)ブラジル戦は自分たちの準備がうまくいかなかったというか、試合に入っても自分たちのサッカーをやらせてもらえなかった。でも、自分たちがしっかり気持ちを持って、しっかり準備ができれば、イタリア戦のようにやれた試合もあった。相手どうこうよりも、まず自分たちがしっかりしないと何も始まらないのかなと」

―自分たちのやりたいことができれば、世界相手にも十分にやれるところまで来たというのは日本の進歩と言えますか?
「相手にやらせてもらえなかったというのもあると思います。そこは微妙ですね。でも、それを言ったら始まらないので」

―日本は立ち上がりと終了間際の失点が目立ちましたが、スペインも決勝ではブラジル相手に前半2分で失点しました。
「ブラジルは、点を取るべき時間帯でうまく点を取る。日本は取られちゃいけないところで簡単に取られてしまった。大会の初戦にかけるウェイトというのも、ブラジルはよく分かっていたと思いますね。もちろん、僕たちも分かっていましたけど、ブラジルの方がしっかり試合に入ってきたと思います」

―開幕戦が大事、立ち上がりが大事というのは、どのチームも分かっていることですが、そこで差が出るのはどういう部分が影響していると思いますか?
「(日本戦で前半3分に決めた)ネイマールのゴールはいいシュートでした。でも、相手に対する寄せ、距離感という意味で、立ち上がりのディフェンスはもっとチャレンジしないと厳しいと思います。最初の10分は厳しく行かなきゃいけないですし、そういうところで甘いところがあれば、ブラジルは確実に突いてくるし、見逃さない。一発で決めてくる力を持っているので。日本にもチャンスがなかったわけではないですが、そこで決めるか決めないかで試合の流れは大きく変わってきますから」

―3連敗に終わったメキシコ戦のあとに「勝敗の部分で差を感じた」と話していましたが?
「ブラジルに行く前から『初戦で負けたら勝ち点ゼロで帰ってくる可能性もある』と思っていました。厳しいですけど、これが現実というか、世界との差はまだまだあるなと感じましたね」

―「イタリアは勝ち慣れている」「日本も勝ち癖を付けないといけない」とも話していましたが、クラブチームのように試合数がない代表チームで勝ち癖を付けるのは難しいのではないですか?
「一回結果が出れば変わってくると思います。鹿島アントラーズのときもそうでしたが、一回優勝すればポンポンといける。でも、川崎フロンターレみたいに2位、2位という結果が続くと、なかなか勝ち切れない。代表はアジア杯に優勝して、そこからいい流れをつくることができました。流れをつくるには結果が一番手っ取り早いのかなと思います」

―アジア相手ではなく、世界相手の結果が必要?
「親善試合でもいいので、アウェーで強いチームと試合をすることが一番かなと思います。ホームでもブルガリアに勝てませんでした(5月30日に0-2で敗戦)。ヨーロッパのいいチームにはホームでも勝てない。今はまだそういうレベルなんだろうなと。アジアで勝っているときは『日本は強い』と言われがちですが、世界のいいチームから見れば、まだまだ大したことはないんだと思います」

―ホームではなく、アウェーでやることが大事?
「日本で試合をするときは、相手が全然真剣じゃないなというのは感じますね。(2010年10月にホームで)アルゼンチンに勝ちましたけど、絶対に本気じゃなかった。ホームでもブルガリアのように本気で来られたら、なかなかいい試合ができないというのが現状だと思います」

―ザッケローニ監督からは「右サイドはバランスを見るように」という指示が多いですよね。南アフリカW杯のころは攻撃面で期待されることが多かったですが、守備面も高く評価されるようになったのはこの3年間で一番変わった部分ではないですか?
「もともと攻撃の方が好きでした。でも、(南アフリカW杯直前に定位置を失った)2010年があって、守備をしっかりしないといけないなと。(南アフリカW杯後に)ドイツに移籍してからは守備の方が楽しいというか、そこに魅力を感じるようになりました。それまで守備というのは単純に失点しなければいいとしか考えていなかったんです。でも、守備もおもしろいなと思い始めると、自分の取り組み方も変わってくる。ドイツでは1対1の勝率が出ますし、走った距離も出ます。そういう細かいデータが出ると、自然とモチベーションも高くなりますね」

―当時と比べると、波も減ったように見えます。
「モチベーションでしょうね。昔は試合によってモチベーションが変わってしまう部分がありました。試合終盤で厳しい展開になると、試合中から『これは負けるな』と思うこともありました。でも、ドイツではホームで相手にリードを許していると、残り10分ぐらいからスタジアムが『このままでは帰れない』という雰囲気にしてくれます。そういう意味では、勝利に対して自分自身、粘り強くなったのかなと思います」

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(取材・文 西山紘平)

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