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[国体少年男子]39年ぶりの開催地V!20年東京五輪世代の戦いは東京都が制す!!

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[10.3 国体少年男子決勝 東京都1-0大阪府 味スタ]

 第68回国民体育大会「スポーツ祭東京2013」サッカー競技少年男子は3日、味の素スタジアムで決勝を行い、開催地の東京都と大阪府が激突。東京がMF小松駿太(横浜FMユース)の決勝点によって1-0で勝ち、3年ぶりの優勝を果たした。開催地代表の優勝は74年の茨城県以来39年ぶり。20年東京五輪世代に当たる97年生まれ以降の選手たちが争った国体少年男子は、地元・東京の快挙によって幕を閉じた。

 堅守・東京を支えたCB渡辺拓也(F東京U-18)が「もう笑顔で終わるつもりだったんですけど、嬉しくて涙が出てきた。嬉しいという言葉しかないです」と振り返った歓喜のV。渡辺は「自分たちはあまり東京(開催)ということを考えなくて、優勝することだけを考えていた。地元だからどうのこうのではなくてサッカーと向き合うことだけを考えていました。みんなで楽しくやろうと言っていた」と続け、開催地の注目、プレッシャーを感じずに楽しみながらサッカーしてきたことを明かした。そして掴んだ頂点。開催が決まった20年東京五輪についての質問を受けた殊勲の小松は「(東京五輪)そこはひとつの目標にしていきたいと思います。同じ東京ですし、また優勝に貢献したい。夢がひとつ増えました」と笑顔で新たにできた夢を語っていた。

 決勝のカードは3年前の10年千葉国体決勝の再戦。前回の決勝を2-0で制している東京は4-5-1システムで試合に臨んだ。GKは松嶋克哉(F東京U-18)で4バックは右から柳貴博(F東京U-18)、渡辺、唯一の中学生DF岡崎慎(F東京U-15深川)、相原克哉(F東京U-18)。中盤は小松と安部柊斗(F東京U-18)のダブルボランチでトップ下がU-17日本代表候補MF井上潮音(東京Vユース)。右MF相馬勇紀(三菱養和SCユース)、左MF田代蓮太(東京Vユース)と2年生MFが両ワイドの位置に入り、1トップには今大会4試合連発中のFW神谷優太(東京Vユース)が入った。

 一方の大阪は4-4-2システム。GKは松原秀模(C大阪U-18)で4バックは右から吉岡裕貴(G大阪ユース)、U-16日本代表DF庄司朋乃也(C大阪U-18)、松岡秀平初瀬亮(ともにG大阪U-18)。中盤は唯一の2年生である久保田和音(大阪桐蔭高)とU-17日本代表の市丸瑞希(G大阪ユース)のダブルボランチで右が牧野寛太(履正社高)、左がU-16日本代表MF岩本和希(G大阪ユース)、2トップは今大会6得点のFW小田垣旋(G大阪ユース)とU-17日本代表候補の岸本武流(C大阪U-18)がコンビを組んだ。
 
 ファーストシュートは開始50秒、東京の相馬が抜群のスピードで右サイドを突破し、右足シュートを打ち込む。さらに東京は安部が果敢に中央突破を図り、またロングボールを交えて前線の神谷へボールを集めようとする。対する大阪も6分に久保田が鋭いターンからドリブルで仕掛けて右足シュート。11分には右サイドをショートパスで攻略すると、小田垣の折り返しを岸本が右足で合わせ、12分には敵陣で岡崎のミスパスを拾った小田垣がGKを外して右足シュートを放った。ただ、ここは必死に戻った岡崎のクリアによって得点には結びつかない。

 それでも大阪は多くのパスコースをつくるポジショニングの上手さと正確なショートパスで主導権を握って攻め続ける。市丸、久保田のダブルボランチが余裕のあるボールコントロールからDF間へのパスを通して前進。前半31分には右サイドの狭い局面で3人、4人とボールに絡み、正確なパスワークで打開するなど技術の高さを随所に見せながらゴールヘ迫っていく。一方、東京はセカンドボールを収めていたのものの、全体的に後退してしまい、また中盤がなかなかボールを受けることができずに攻撃はロングボール中心。それでもインターセプトを狙う渡辺がくさびのパスをカットするなど、今大会最終ラインが非常に安定している東京は決定打を打たせずに0-0で前半を終えてみせる。

 大阪は後半に2分、左サイドからカットインしてきた岸本が中央の岩本につなぐと、小田垣とのワンツーを試みた岩本が開いた中央を抜け出す。だが決定的な左足シュートは枠を捉えられない。逆にワンチャンスを狙っていた東京が後半13分にスコアを動かした。相手SBのミスパスを敵陣左中間でインターセプトすると、田代が右前方へはたき、これを受けた井上がスルーパス。中盤から一気に飛び出してきた小松が右足でゴールへ流し込んで先制した。

 押し気味に試合を進めながら、一転追う展開となってしまった大阪は16分、前半に負傷していた松岡をDF羽田健人(金光大阪高)へ変更。18分に岸本の放ったドリブルシュートがクロスバーを直撃すると、20分には牧野に代えてMF丸岡悟(C大阪U-18)を送り出す。岩本をトップ下、小田垣を右サイドへ配置した4-2-3-1へ移して攻撃するが、1点を奪うことができない。東京も20分に井上に代えてMF大熊健太(F東京U-18)を投入して前への推進力を加えるなど終盤へ向けて攻防戦はさらに激しさを増していった。

 失点直後はややバタバタした感のあった大阪だったが、立て直して自分たちのリズムでボールを動かし、同点ゴールを狙っていく。ただ東京の壁は厚かった。柳がPAへのボールを弾き返せば、小松に代えてDF鴻巣良真(國學院久我山高)投入で守備固めしたアディショナルタイムには相原が渾身のスライディングタックルで相手の決定機を阻止する。大阪は相手の5本に対し、計15本のシュートを放ったが、36分に左ロングスローのこぼれをつないで放った岩本のシュートと、39分に右CKのこぼれを市丸が右足ダイレクトで叩いたシュートがいずれもクロスバー上方へ消えてしまう。そして、東京の優勝を告げるホイッスル。互いにミスが少なく非常に締まりのある好勝負となった東西対決は、東京が凱歌をあげた。

 3年ぶりに国体制覇を果たした東京だが、宮城県との初戦は後半アディショナルタイムの勝ち越しゴールで制し、徳島県との2回戦は退場者を出した相手に苦戦。地元の大会であること、また負けられないというプレッシャーを感じていた序盤戦は思うようなサッカーを展開することができなかった。また準決勝では京都府と延長戦にもつれ込む熱戦と、決して楽な戦いで勝ち取ったタイトルではない。

 東京の奥原崇監督(F東京U-15深川)は「初戦とか、2戦目とかに対戦したチームから頂いたパワーというのは非常に大きいかなと思います。初戦も相当苦しかったですし、2戦目も相手に退場者が出た中で非常に苦しいゲームで緊張から本当にパフォーマンスが上がらないという状況だったんですけど、負けた県の選手の国体に対する思いというものが選手を少しずつ成長させてくれて、『緊張に押しつぶされている場合じゃない』というか、『自分たちの持っているものを出して、それで負けたらしょうがない』という状態に3戦目から上手く持っていくことができたのかなと思います。だから本当に1戦目、2戦目の対戦チームには感謝したい思いですね。(自分たちは)どことやってもしっかり戦えるチーム作りをしてきた。大阪さんも力があるので、そういうところはみんなで我慢しながらという話をしてきた。(大事にしていたのは一体感の部分で)優勝を目指すときにそれがなかったら絶対に勝てない。そこは大前提にあったので、最終的にこの雰囲気が出せるということは常にイメージして、それはサッカーの実力と同じくらい大事にしていた」。国体優勝への思いをチーム一丸で表現して掴んだ日本一だ。主将の田代も「みんなが頑張れるチーム。元気で明るいチームだった」という好チーム・東京の歴史を変える開催地V。大会期間中、誰もが口にしていた「味スタで監督を胴上げしたい」という夢を東京イレブンは味の素スタジアムでかなえた。

(取材・文 吉田太郎)
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