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本格強化6年目、昌平が初V!!:埼玉新人戦

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[2.19 埼玉県高校新人大会決勝 昌平高1-0浦和南高 西武台高第二G]

 平成25年度埼玉県高校サッカー新人大会決勝が19日、新座市の西武台高第二グラウンドで行われ、昌平高がFW野村祐一朗(2年)の決勝ゴールによって浦和南高に1-0で勝利。初優勝を飾った。

 埼玉県東部、北葛飾郡杉戸町に位置する私立校、昌平が本格強化6年目で初の埼玉制覇を果たした。名門・青森山田中高でMF柴崎岳(現鹿島)らを指導していた藤島崇之監督就任から7年目で果たした快挙。監督就任当初、中学時代に剣道部や野球部の選手もいたという約20名の部員にしっかりとボールを止める、蹴ることから強化してきた指揮官は「ビルドアップをしっかりしながらというスタンスは(就任当初から)変えていません。(これまでは力不足だったが)埼玉の中でちゃんとサッカーをすれば、力をつければ狙える部分はあるかなと思っていました。勝ち切れたことは今後につながると思います。逆にこの(日の試合で)ダメだった部分が今後のところの慢心というか、『これで、いいや』とはならないので、プラスにつなげていきたいと思っています」と静かに喜んだ。

 選手たちの喜びも控えめ。藤島監督が「いないと一番キツイですね」と評する守備の柱、CB長里竜成主将(2年)は「きょうの試合を終えての課題は本当にたくさんある。課題が残ったことは良くないですけれど、(一方で)成長できるところがいっぱいあるので見直していきたい」。また決勝点を叩きだした野村も「優勝できたことは嬉しいです。(でも)ここで慢心というか、過信が生まれたら本当にダメ。そこだけは意識して出さないようにしなければいけない」と満足した様子は全く見せなかった。

 本人たちにとっては決勝の試合内容は納得のいくものではなかった。昌平は時折ロングボールを交えながらも、最終ラインからしっかりとボールを保持して、つないで攻めるスタイル。ただこの日はサポートの運動量が少なく、また相手の高い位置からのプレッシャーの前に慌ててボールを離すシーンが増えてしまった。昨年から主力のMF沼田弘登(2年)と10番MF和田幹大(2年)を軸に自陣からボールをつなぎ、局面ではテンポの速いショートパス。そして動き出し速く相手の背後を狙う野村へ右MF築地原雅大(1年)からラストパスが入るシーンもあったが、普段通り正確に、落ち着いて攻めることができていなかった。

 この日攻守両面で制空権を握っていたCB佐藤雄介(2年)を中心に守る浦和南からなかなかシュートシーンをつくることのできない昌平に対し、浦和南は中央で精度の高いキックを見せるMF安達虎徹(2年)の展開やMF小峯健太(2年)のドリブル突破からオープンスペースへボールを運んでクロスまで持ち込んでくる。

 浦和南がやや主導権を握る中で進んだ試合。だが前半18分、昌平が突如スコアを動かした。右中間で右SB篠崎亮(2年)の縦パスに反応した野村が「コントロールする前にGK見て、GKのポジションが左の方に寄っていたので、打ったら入るかなと思って打った」と相手DF、GKの意表を突くダイレクトでの右足ミドル。GKはこの一撃を見送るしかなく、初の決勝を戦う昌平に大きな1点がもたらされた。

 すぐさま反撃を開始した浦和南は遠目の位置からも思い切ってシュートを狙ってくるFW橋本星児(2年)の一撃が昌平ゴールを襲い、後半9分にはMF有田日向(2年)の右CKからファーサイドの佐藤が決定的なヘディングシュート。だが、これはゴールラインすれすれで昌平GK脇本健太郎(2年)がかき出す。浦和南は16分にもゴール正面から小峯が放った右足FKがゴール右上隅を捉えたものの、再び脇本のファインセーブに阻まれた。

 昌平はスペースへの力強い動きなどで怖い存在となっていた野村が2点目のチャンスを迎えるものの活かし切れない。逆に再三浦和南にPAまではボールを運ばれたが、周囲の選手を鼓舞することよりもまずは個々の責任感を大事にするという昌平は、それぞれが集中力高い動きを見せて相手の攻撃を跳ね返していく。長里が「自分たちで責任感を持とうということを試合中に話しながら、マークの確認などを怠らずやっていました。GKの好セーブで止めてもらったところもあったんですけど、誰のマークだったとか確認して次につなげていました。今までだったらやられていたかもしれない。監督からも試合前に『集中だけは切らすな』と言われていたので集中していました」と説明。浦和南は33分に右CKから再び佐藤の放ったヘディングシュートがGK正面を突き、37分に敵陣でのインターセプトから最後に有田が放ったヘディングシュートは「(ハーフタイムにGKコーチから)気合を入れる感じの言葉をもらっていて後半は気合が入っていた」という脇本の好守にまたもや阻まれて同点に追いつくことができない。そのまま最後までリードを守り切った昌平が初の頂点に立った。

 昌平は昨年、総体予選、高校選手権予選でいずれも4強。そして今回、さらに歴史を塗り替えた。ただ、長里が「日本一というのがチームの掲げた目標で、ちっちゃな目標が一つひとつタイトルを取るというところ。(今回の優勝も)自分の中では通過点。ワンステップという感じです。1ページずつ、つくっていく」と語ったように選手権日本一、埼玉の全タイトル制覇という大目標を掲げる選手たちにとって、今回の新人大会制覇は小さな目標をひとつクリアしたに過ぎない。内容も今大会の中で最悪だったというだけに喜びは控えめだったが、それでも新鋭が今後への自信を掴むには十分な優勝となった。

(取材・文 吉田太郎)

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