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[特別鼎談]C大阪MF扇原×DF山下×DF染谷「良い攻撃は、良い守備から!!」

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 今シーズン、クラブ史上初のタイトル獲得が期待されるセレッソ大阪。攻撃力がとりわけクローズアップされることの多いチームだが、昨季は失点32とリーグ3位の堅守も光った。新たにランコ・ポポヴィッチ監督を迎えたチームにとっても、守備力の維持は不可欠だ。ボランチで出場を続けているMF扇原貴宏、最終ラインの要へと成長したDF山下達也、そして京都から新加入したDF染谷悠太が、2014シーズンへの意気込み、そして高校生へアドバイスを送ってくれた。

――今シーズンのチームはいかがですか?

扇原 FWディエゴ・フォルランが加入して、メディアの方たちからもすごく期待されていて、勝って当たり前の状況というか、勝たないといけないと見られていると思います。そういう周りの目とか、期待もあると思いますけど、そういうことを気にしすぎて、自分たちのサッカーを見失わないように考えながら、今季1年やらないといけないなと思っています。サッカーはやっぱり11人でやるものなので、みんなでしっかりやること。ディエゴだけに頼るんじゃなくて、彼もチームの一人なので、しっかりとサポートしながらやりたいです。チーム全員、もっともっと高いパフォーマンスを出せると思うし、開幕したばかりなので、これから良くなっていくと思います。

――開幕戦は、プレッシャーがありましたか?

扇原 プレッシャーは、そんなに感じませんでしたが、勝ちたかったですね。開幕戦でしたし、勝って良いスタートを切りたかったっていうだけです。『フォルランが入ったから、勝たなくてはいけない』っていうプレッシャーはなかったですし、ホームで開幕戦を迎えたので、勝ちたかったですね。

山下 ある程度、昨年と同じ選手がチームに残っていますし、優勝を狙うためにいろんなものを犠牲にして、チームのためにやっている1年だと思います。一人ひとりが、本気でタイトルを狙っていますし、一人ひとりが自分の持っているものをすべて試合で出せれば、そうそう負ける相手はいないと思います。これから、もっともっとパフォーマンスを上げていければ、順位ももっともっと上がって行くと思います。

染谷 僕は加入1年目ですが、みなさんご存知のようにポテンシャルの高い選手がたくさんいます。僕自身、そこに割って入らないといけないし、このチームは今年、タイトルを獲らなければいけないと思うので。みなさんご存じのように、ものすごい名前の選手も入ってきたので、機は熟したかなと思っています。しっかりと力添えできるようにしたいし、それぞれが力を出し切れば、みなさんが期待している結果は、おのずと得られると思いますね。

――染谷選手にとって、移籍の決め手は何だったのでしょうか?

染谷 2つ返事で「はい!」っていうくらいで、逆に断る理由が、まったくなかったですね。

扇原 染谷くんは人に対しても強いですし、足元の技術も高くて、ビルドアップもうまい。気持ちも強いですし、すごく万能な印象ですね。

――染谷選手、うれしそうですね(笑)。

染谷 やばい(笑)。汗かいてきた。

山下 本当に両足のビルドアップがうまいし、僕にないものをいっぱい持っているのでね。僕も負けないように、自分の個性を出していかないといけないと思います。

染谷 ちょっと、オレを持ち上げるのやめてもらっていいですか。勘弁してください。汗が止まらないので(笑)。ヤマさんの良さはすごく人に強いですし、こう言っていますけど、ボールをしっかり蹴って、パスも通せるので。追いつけ、追い越せじゃないですけど、お互いをうまく切磋琢磨できればと思いますね。

――新加入選手といえば、あの人のことに触れないわけにはいきません。一緒にプレーしていてどうですか?

扇原 今までウチに来た外国人は、あまり日本語を学ぼうとしていなかったんですよ、正直。でも、めっちゃ日本語を覚えようとしているし、日本語でコミュニケーションをとろうとしてくれているので。そういうコミュニケーションの大事さを知っているなと思ったし、人間性についても素晴らしいと思います。プレーでも両足のシュートはすごいですし、練習をしていても上手いので、そこは素晴らしいかなと思います。

山下 練習でも、シュートへの持って行き方がうまいと思いますし、両足で強いボールを蹴れるので、キックフェイントをすれば両足にDFが食いついてしまうっていうのは、あると思います。そういう怖さがありますし、FKっていう武器もありますよね。普段は、食事会場でもずっと日本語のメモとかを取ったりしていますし、すごいプロ意識が高くて、これからもっともっと順応していくんじゃないかなと思いますね。

染谷 僕は、結構、練習中にマッチアップすることがあるんですけど、ちょっとでも寄せきれないとシュートを打たれますね。ゴールへの意識が強いので、その時点でDFは後手を踏んでしまう。それくらい自分の形を持っていますよね。ゴールに直結するプレーがあるので、対戦して怖いと思います。プライベートでは、持っているものについて『それいくらだ?』と、やたらと聞いてきますね(笑)。この前もバスで近くの席になって、僕のバックを見て『それいくら?』って。それがコミュニケーションを取ろうという意図でなのか、何なのかはわからないんですけどね(笑)。

――お好み焼き屋に連れて行ったりは?

扇原 ないでしょ?

山下 まだ、ないね。でも、日本食は『徐々に』って言っていましたよ。飯の会場でもパスタとかを食べていたので『日本食は食べないの?』って聞いたら『徐々に、徐々に。急に変えるのは嫌だから』って言っていましたね。僕は韓国遠征の食事の際に同じテーブルになったので、その時にしゃべりましたね。

――外国籍選手とは、あまりプライベートでは遊んだりしないのですか?

扇原 家族がありますもんね?

山下 うん。でも、プライベートでも付き合いがあった年もあったけどね。日本に順応しようとしている外国人選手とは食事とかも一緒に行こうとするし、向こうからも誘ってくる。そういう選手とは一緒に出掛けたりしていましたね。家に招待は……むしろ招待してほしいです(笑)。

――3人は守備の人ですが、攻撃的なチームと言われていることについては?

扇原 どうなんですかね。攻撃を支えているっていう気持ちは別にないですね。守備にクローズアップしてほしいとも、特に思わないですしね。

山下 どうしても前が騒がれるんでね。『守備も騒いでくれ』とかはありませんが、裏方として、誰かが失ったらとりあえず一番早くそのボールに寄せて、高いポジションでボールを取ることを意識しています。そこからチームの良さであるカウンターとか、良い攻撃につなげられるので。そういうところまでガツッと潰すことは意識していますね。

――今年はパスサッカーが強調されていますが、プレーで具体的に違うことは?

扇原 昨年はもう少し縦に速いというか、(ボールを)取ったらカウンターっていう形が多かった気がします。今年はボールを取って、無理だったら落ち着いてつなごうというのがあります。そこのメリハリを大事にしたいと思います。速い攻撃は昨年の良さでもあったので、速く行けるときはみんなでラインを押し上げて、速攻をやりながら、自分たちの時間をつくるときはつくろうと思います。ボールを大事にする時間帯と、自分たちの速い攻撃っていうもののバランスを考えながらやりたいです。前線にはすごいトラップをする選手とか、すごいシュートを決めてくれる人がいるので。パスの出し手としては、難しいボールも処理をしてくれるので、出しやすいですし、そういうのは今年も継続して、出せればいいなと思います。

――最終ラインの選手には、ビルドアップはより求められているのではないですか?

山下 僕はやることはシンプルで、ボールを奪ったら、とにかく近くの選手に預けて、守備を徹底して頑張ればいいと思っています。変にボールをこねて、相手に奪われて失点するのもイヤですし、僕はシンプルにやるだけです。近くのタカ(扇原)とか、サイドバックの選手に預けたら、彼らがうまいことかわしてくれるので。とにかく近くに見えている選手に、パスを出します。

染谷 僕はビルドアップが持ち味なので、そこを生かせたらいいんですけどね。やっているサッカーは、前にいたクラブとやっていたものに近いものがあるので、やりやすい部分はありますね。その分、アピールしやすい部分もあります。縦パスは後ろからでもどんどん付けて行けと言われていましたし、そこは意識してやってきた部分でもあるので、スムーズにやれるかなと思います。

――新監督はどんな人ですか?

扇原 喜怒哀楽がハッキリしている人ですね。普段はすごく明るくて、すごく優しいですし、コミュニケーションをとってくれる監督です。ピッチに入ると厳しいことは厳しく言って、妥協は許さない。常に100%を求める監督です。そういう意味では、はっきりしていて、やり甲斐はすごくありますね。

山下 うーん…。まだそんなに話していないんですよね。でも、試合中はずっと叫んでいるなっていう印象が、FC東京時代から強いです。練習でもたまに喝を入れるし。でも、たまにアップでのパス回しとかに参加すると、意外と足元がうまいんですよ。そんな印象ですよね。

――UEFAチャンピオンズリーグも出ていますからね。

山下 あ、そうなんですか。あんまり監督は、僕に『つなげ』とか要求してこないので、僕にはシンプルな守備を求めているのかなと思います。練習中に、たまにミスをしたら、ガーッて言われますが、そういうのは気にしても仕方がないので。怖いときは、怖いですね。

――チーム内の怒られ役は誰がなっているのでしょうか?

山下 タカはすごい、怒られてたよな? 長居でな?

扇原 メッチャ怒られました。1回目は、オレに来たパスがずれていて、懸命にトラップをしたのですが、そこでボールを奪われたら『ターーカーーッッ!!』って、スタジアムに響き渡る声で怒られました(苦笑)。

染谷 開幕2日前に長居スタジアムで練習したときにね。スタジアムの外にいても、聞こえたと思う。

扇原 ビックリしましたね。『ちょっとパスがズレていたんだけど、オレかぁ』と思いましたけどね。当たり前ですけど、ミスには厳しいですよね。

――先日の練習試合後も怒っていたと新聞に書かれていましたが?

染谷 やばかったですね。

山下 過去最高くらい怒っていたよね。

染谷 ブチ切れていましたね。『お前らは、恥だ!』って言っていました。

扇原 怖っ!

染谷 ちょっと泣きそうになりました。冗談ですよ(笑)。でも、厳しさの中に、温かさ、優しさがある、すごく誠実な良い監督だなと思いますよ。ただ、あまりに怒り過ぎるので、誉めるときに『ブラボー!!』って言うんですけど、『ブラボー』は心に入ってこないです。

一同 爆笑。

染谷 もう怒る方がインパクトが強いのでね(笑)、

――FC東京の選手たちは、『ブラボー』が出るとBポイントって数えていて、誰が一番もらったかという風に、練習後話していましたよ。

扇原 ええっ。

染谷 言われたことないなぁ。ゼロポイントだ…。

扇原 『ブラボー』は、『そう、そう』っていう感じで言っているから、何回言ったかはなかなかわからないですね。

――これだけの戦力がそろったチームですが、意気込みを。

扇原 最低一つはタイトルを獲らないといけないと思います。これだけの戦力がそろっていて、タイトルを獲れなかったら、いつ獲るんだっていうことになると思うので。タイトルは毎年目標にしていますが、今年こそはチーム一丸になって獲りたいですね。開幕戦に敗れてブーイングが起きましたが、それだけ期待されているってことですからね。当たり前の反応だと思います。負けて拍手でもおかしいですし、サポーターも本気でタイトルを目指している証拠かなと思いますね。

山下 昨年に続いて我慢強い守備は守備の人間として意識したいです。攻撃力は、より一層あがったので、前の選手にも点を要求するし、前の選手からも無失点っていうのを要求されたい。そうやって、お互いに良い刺激を与えながら、チームがどんどん上に行けたらなと思いますね。

染谷 昨年は外から見ていて、すごく良いサッカーをしていました。もともと良い攻撃をするチームだったのですが、今年は新たなエッセンスも加わりました。その良い攻撃をするためには、良い守備が必要だと思いますが、後ろの選手を見ても、良い選手がいっぱいいますし、そういう選手が後ろをしっかり支えて、もともとある良い攻撃につなげていければいいと思います。そのサッカーをしっかりピッチ上で、90分をとおして表現できれば、勝ち点を拾っていけるはずです。それを1シーズン続けて、最後に、みんなで優勝を手に入れて、笑うことのできるシーズンにしたいですね。

――現在プロで活躍する3人ですが、高校時代はどういう意識でプレーしていましたいか?

扇原 とりあえず、『うまくなりたい』『プロになりたい』と思って毎日練習していましたね。プロになることしか、考えていませんでしたね。結構、練習は厳しかったのですが、そういう目標を持ってやったのが良かったですね。キックの練習は特にやりましたね。でも、それくらいです。居残り練習はしていましたが、練習開始時間が遅いので、すぐ電気が消えてしまっていたので、どちらかというと全体練習の前にやっていましたね。

山下 僕は、高校2年生のときにスカウトの方が試合を見に来てくれて、そこからちょっとプロを意識し始めましたね。全国大会とかには、全然出ていないような学校で、周りにもそんなにすごい選手がいるわけでもありませんせした。だから、県選抜とかに行ったら、うまい選手ばかりでしたよね。国体選抜でも兵庫県の高校に行っている各Jクラブのユース選手も来ていたので、そこで刺激を受けました。その人らにはかなわないな思いながら、高校に帰って、特に誰かが付き合ってくれるわけでもなかったですが、自分で考えながらトレーニングはしていました。

――スカウトの人には、どんな風に声を掛けられたのでしょうか?

山下 「公式戦があれば、見に行くよ」っていう感じで言われましたね。その(スカウトが見に来た)公式戦で、見事に全部調子が良かったんですよ(笑)。相手FWとの相性も良くて、そういう運も僕にあったなと思いますね。モチベーションも上がっていますけど、空回りすることなく、運で、引きでカバーしました(笑)。

染谷 僕はタカと違って、ユース時代には『プロになりたい』っていう決意はなくて、『プロになれたらいいな』と、漠然と思っていましたね。だから、今の高校生には、タカのように『プロになりたい』って強く思って、向上心を持ってプレーしてもらえたらいいかなって思います。自分のときは、結局それでトップの練習に行っても、ただ打ちのめされて『全然ダメだ』って感じるだけだったので。そこの意識の差は出るかなと思いますね。

――逆に言えば、気負いがなかったのが、プロの選手になることにつながった?

染谷 いや、大学を経由しているので。ユースを終えて『このままだと終わる』と思って、大学のときには打ち込むだけ、サッカーに打ち込みました。それをユースのときからやっておけば、っていう後悔がありますね。むしろ僕の場合、中学くらいまでさかのぼって、もっとサッカーと向き合っていればよかったなって思いますからね(苦笑)。

――それでも、大学からプロに行けた要因は?

染谷 僕が頑張ったというか、頑張らざるを得ない環境だったので、必然的に鍛えられたっていう感じです。大学の風土というか、……厳しかったですね。1年生のときとかは、トップチームに入ると、上級生の練習着を洗濯するんですよ。それが夜中に終わって、それから次の日の朝練が朝6時から始まる。内容も6キロ走るとか、ハードだったので。

扇原 きつっ。

染谷 きつかったよ。大学のときが一番きつかった。

山下 僕は高1のときに、一人だけ3年生のところに入れられてやっていましたが……みんなとても優しかったです!! 工業高校でしたけど、2年生、3年生がとても優しかったので、上下関係で困ることはなかったですね。

扇原 ユースには上下関係が、全くないですね。

染谷 『一発芸せい!!』とか、ないやん?

扇原 あったと思いますよ。でも、言われても断りました。

染谷 断れへんもん(笑)。でも、そういうのはうまいこと乗り越えてました。だから、1年生の心得は『とりあえず上級生の言うことは聞いておけ』っていうことですかね。

――ここからは、それぞれのスパイクへのこだわりを聞きたいと思います。

扇原 僕はもうプレデターリーサルゾーンをずっと履いているので。キックの感覚とか、すごく良いので自分のプレースタイルにすごく合っているかなと思います。このラバーが付いていることで、ボールもすごく変化しますし、履き心地も良いですよ。

山下 僕の履いているアディゼロ F50は、とにかく軽いのが特長ですね。FWとのスピード勝負に負けたくないので、速そうなスパイクにしました。素早くインターセプトができればと思いますね。スピードが持ち味なので、FWとボールの追いかけっこになるときに、絶対に負けたくないです。スピードが持ち味の選手は、これを選ぶといいと思います。

染谷 僕はナイトロチャージを履いています。やっぱりポジション柄FWとの接触が多いのですが、そういうときにしっかり足をプロテクトしてくれます。この『エナジースリング』というバンドが次の動作をスムーズにしてくれるので、ターンすることが多くても、しっかり次の動作に力を伝えてくれます。ボールコントロールもしやすいですし、走りやすいので、すごく良いスパイクです。タカは、自分が履いているプレデターリーサルゾーンのラバーの部分の名称をちゃんと言える?

扇原 『必殺5ゾーン』でしょ! ヤマさんは?

山下 超軽量!!

扇原&染谷 間違いない(笑)!!

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