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[関東大会予選]11年夏の全国王者にとって大事な一年、新生・桐蔭学園が前半4発で藤沢西下す:神奈川

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[4.26 関東大会神奈川県予選5回戦 桐蔭学園高 4-0 藤沢西高 東海大相模高G]

 26日、平成26年度高校サッカー関東大会神奈川県予選5回戦が行われ、桐蔭学園高が藤沢西高に4-0で快勝して8強入りを決めた。

 桐蔭復活の1年にする。桐蔭学園は昨年、全国高校総体、全国高校選手権の神奈川県予選準々決勝でいずれもPK戦の末に敗退。悲願の全国大会初優勝を果たした11年全国高校総体を最後に全国大会から遠ざかってしまっている。それだけに今年は必ず全国へ復帰したいところだ。現在の3年生は中学3年時に先輩たちが全国制覇した姿を見て入学してきた世代。名門・東海大一中(静岡、現東海大翔洋中)監督として中学日本一、東海大翔洋高監督としても全国総体16強の経歴を持つ賎機徳彦氏がコーチから監督へ昇格し、新しい体制となった中で、新たなスタートを切っているが、関東大会予選初戦となったこの日は前半の4得点によって快勝した。

 桐蔭学園は8分、FW新井博人(3年)のミドルシュートのこぼれ球をMF安藤峻哉(3年)が右足で流し込んで先制。さらにFW辛島侑烈(3年)が自ら獲得したPKを右足で決めて2-0とすると、19分にもタイミングのいい動き出しからPAでFW景山亜月(3年)の浮き球パスをコントロールしたFW栗原陽一(3年)が左足で決めて3-0と突き放す。

 中盤の選手と10番栗原、景山のテクニカルな2トップとのパス交換など、前線、サイドでのワンツーを多用しながら攻める桐蔭学園が完全にボールを支配。「細かいパスで相手を動かして疲れさせる」(栗原)という攻撃を実行する桐蔭学園の前に藤沢西の選手たちは、前半半ばの時点ですでに疲労の色が濃くなっているように映った。それでも川崎市立橘、慶應義塾と上位シードを連破してきている藤沢西は、したたかに1チャンスを狙い、あわやのシーンをつくり出して会場を沸かせる。

 28分、インターセプトから抜け出したFW中村大樹(3年)がGKと1対1となるが、これは距離を詰めた桐蔭学園GK藤川誠人主将(3年)が足でストップ。藤沢西はさらに31分にも右サイドからDFの背後へ送られたパスに反応したFW小林勇太(3年)がDFと競り合いながら左足を振りぬく。ただ、V川崎(現東京V)のGKとして活躍した藤川孝幸氏(現国際武道大監督)を父に持つ守護神、藤川からゴールを奪うことができない。逆に桐蔭学園は32分、景山が背後へ出したボールに反応した栗原が、相手DFにブロックされながらも左足の足先でゴールへ押し込んで4-0と突き放した。

 後半も桐蔭学園がボールを支配する展開。「身長は高くないけれど、あれだけのフィードをしてくれる。信頼している」と賎機監督が語る藤川が最後方から正確なフィードを見せれば、左足から正確なキックを放つ新井や辛島のチャンスメークなどから桐蔭学園は次々と相手ゴールへ押し寄せていく。ただ、2分に辛島、5分には栗原がシュートを放ち、10分にも栗原とのワンツーから新井が左足を振りぬくなど攻めた桐蔭学園だったが、賎機監督が「前半は良くやったと思うけれど、これだけポゼッションを取れて、一方的にやれているのに、点が取れないのでは何のためにポゼッションしているのか、となってしまう。決定力がない。もっとシュートへ向かうように意識していかないといけない」と課題を指摘したように、GK井上楽(2年)やCB伊藤駿(3年)らが粘り強く守る藤沢西から5点目を奪うことができなかった。

 逆に藤沢西・小林の狙いすましたインターセプトからのミドルシュートや中村のヘディングシュートなどに持ち込まれた。守備センスの高いCB三輪泰平(3年)の好守などで無失点で試合を終えたものの、後半無得点だった試合に藤川は「メンタル面の弱さが出た。(賎機監督に代わってより)守備意識が高まり、(ポゼッションしながら)裏を第一に狙うように変わったけれど、桐蔭の『人を楽しませるサッカー』は変わらない。全員でサッカーをすること。(結果が出ていない中)今はチャレンジャーということを意識してやれている。自分たちはチャレンジャー精神でいく」。選手たちも重要な一年と認識する中、挑戦者として戦い、結果にこだわる。

 勝負弱さの出た近年の反省を活かして勝ち上がり、今年、全国舞台で再び躍進を。優勝した世代の選手たちがグラウンドに現れて、一緒にボールを蹴ってくれることもあるという。そのレベルの高さにも刺激を受けつつ、そのレベルに到達できるようにトレーニングに取り組む。栗原は「(近年は)公立のような粘り強さだったり、頑張って走りきったりする部分が少しなかったと思う。そういうところを意識して変わってきている。そこに今まであった桐蔭のパスサッカーだったり、ドリブルを活かすところを加えていければ県や全国で勝ち抜くチームになれると思う」。全国へ“復帰”する前に今大会を制し、関東の頂点に立つ。

[写真]左利きの司令塔・新井ら中心に攻めた桐蔭学園は4発勝利

(取材・文 吉田太郎)

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