beacon

[MOM310]専修大GK蔦颯(1年)_初先発の1年生GKが全日本GK不在の危機救う

このエントリーをはてなブックマークに追加

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.6 関東大学リーグ1部第12節 専修大 1-0 筑波大 味フィ西]

 専修大は絶対的な守護神、福島春樹(3年=静岡学園高)が全日本大学選抜の韓国遠征で負った負傷によって離脱中。1年時から専大のゴールを守りタイトルをもたらしてきた福島が今後数試合を欠場することが濃厚となっている中、代役として先発した1年生GK蔦颯(前橋育英高)がチームを救った。前半は相手アタッカーに抜け出されて1対1となるシーンがあったが、これを足で防ぐと、後半にもドリブルで抜け出してきた相手の決定的なシュートをセーブ。そしてハイライトは後半16分のシーンだ。筑波大は左クロスからファーサイドのCB早川史哉が決定的なヘディングシュート。だが、ゴール至近距離から放たれた一撃を蔦は抜群の反応によってゴールラインぎりぎりでかき出す。「シュートストップとかはそんなに得意ではないです」と微笑む蔦だったが、そのセーブ力でチームを救った。結局、専大は相手にシュート13本を放たれたが、初先発の1年生GKの活躍によって無失点で切り抜け、勝ち点3を掴んだ。

 蔦は1月の全国高校選手権に出場することができなかったものの、高い評価を受けて日本高校選抜の欧州遠征メンバー入りした注目GKだ。「(大学で)一番レベル高いし、福島クンのプレーとか見ていた。一緒にやりたいと思った」と全日本大学選抜の守護神のいる専大へ進学。日常から福島のプレーを間近で学びながら成長を遂げ、この日福島不在の後期開幕戦で起用された。緊張はあったという蔦だが「実際試合に入ってみたら結構できた。最低の役割はできたという感じです。チームが勝つように自分がプレーできればと思っていたので、良かったです。無失点で良かったです」とホッとした表情を見せた。

 試合中、福島は蔦に聞こえる声でアドバイスを送り続けてくれていたという。「自分にミスがあっても『ミスはオレのせいだから思い切ってやれ』と言われていたので、めっちゃ助かりました」と蔦。現時点で自身が福島に勝っている点は、という質問に対して「(先輩の福島は)チームに強くいう方なんですけど、自分はチームにやさしく言う感じがあるのでそこは、変化があるかなと」と控えめに語り、周囲を笑わせた蔦は「(福島に)技術的には勝てていないと思う。でも、いつかは何かしら越えていきたい」と力を込めた。「その方が(チームメートに)通りやすいかなと思って、意識していた」という試合中に見せていたややドスを効かせた声での指示は福島譲り。堂々とした立ち振る舞いなど仕草もどこか“福島っぽさ”を感じさせていたが、先輩GKに負けないプレー、ビッグセーブでチームに勝利をもたらした。
 
 専大の岩渕弘幹コーチは蔦について「練習試合も凄く良かったので、あれくらいやれる子だと思っています。筋肉量が少ないところだったり、クロスに対するところへの幼さはまだありますけれども、将来的には面白いGKだと思っている。もう少しクロスのところで守備範囲を広くしてキャッチできればチームに対していい影響を与えられるし、彼自身もかなり上のレベルへ行けるんじゃないかと思います」と期待を込めた。蔦はデビュー戦について「押し込まれた時にチーム全体のことが見えていなくて自分のことだけになった。その時にいかに周りを見て冷静にプレーできるかでFKの場面とか的確にプレーできたと思う」と反省。普段から「自分、基礎が苦手なので基礎練習を徹底的にやって、キャッチとかも磨いている」というGKが、目標の福島不在を感じさせないプレーで専大の4連覇達成に貢献する。

(取材・文 吉田太郎)

TOP