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[選手権予選]昨年度全国王者を倒した水橋が、PK戦を制して富山の代表に輝く

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[11.2 全国高校選手権富山県予選決勝 高岡一高 0-0(PK3-4)水橋高 高岡スポーツコア]

 第93回全国高校サッカー選手権富山県予選決勝が2日に高岡スポーツコアで行われ、水橋高がPK戦の末に高岡一高を下し、4年ぶり6回目の全国大会出場を決めた。

 水橋は準決勝で前回大会の全国王者である富山一高を撃破。勢いを活かして夏の高校総体予選で優勝していた高岡一も破り、前回優勝都道府県代表として全国大会の第1シードとなる富山県の代表校の座に輝いた。総体予選では決勝戦で高岡一に敗れて全国大会出場を逃していただけに、水橋の上田裕次監督は「富山一さんに勝って満足することなく、高岡一さんにも勝とうという意味では、準決勝を勝った後も選手に浮ついた部分は見られなかった。夏の悔しい経験が活きている、選手の成長した部分だと思ってみていた」と難敵を破ってついに全国の切符をつかんだ教え子たちの健闘を称えた。

 水橋が攻めて、高岡一が守る。拮抗した展開が序盤から続く試合となった。立ち上がりから水橋は積極的にシュートを放って攻勢に出た。1トップの吉松和貴をターゲットにして、右MFの佐藤圭介、左MFの水原和輝がドリブルで攻め込むと、攻撃参加したボランチの堀芳聡が絡んで攻撃に厚みをもたらせた。ただし、堀とボランチを組んだ下鳥佑稀が「攻めても攻めても、入らなかった。真ん中を固められてシュートも打てなかった」と話したとおり、決定機の演出には至らなかった。対する高岡一は、2年生エースFW原田正暁を累積警告で欠く中、中央をきっちりと固める守備から丁寧にパスをつないで2年生ボランチの山田啓太を経由してチャンスをうかがった。しかし、ボールを奪う位置が低いために中盤でプレッシャーにさらされて思うようには前に進めず、ロングパスは精度を欠いて前線で収まりどころを作ることもできなかった。

 後半8分、水橋は左サイドから水原、トップ下の吉川育良を経由してパスを受けた吉松が思い切ったターンから鋭いシュートをゴール左に飛ばしたが、高岡一のGK天野祐二が横っ跳びでセーブし、得点はならなかった。攻めあぐねる水橋は、布陣を4バックから3バックに変更。最前線に北野剣士浪を投入し、吉松を右サイドに配置するとともに精度の高いクロスを供給していた右DF堀田要にサイドアタッカーの役目を与え、吉松の起点作りから堀田の攻撃参加を呼び込む形を狙った。堀田は「相手が引いていたので簡単には点を取れないだろうと思ったけど、ここまで入らないとは思わなかった。真ん中は締められていたので、3バックにして外から行こうと話していた」と、この時間帯を振り返る。対する高岡一も手薄になった相手の最終ラインへロングボールを飛ばして走り込むという攻撃で対抗。後半29分にはこぼれ球を拾ったボランチの尾田和也がシュートを放ったが、ゴールを捉えられなかった。

 80分を経ても展開は変わらず、試合は延長戦に突入。水橋は後半31分に投入された2年生MF四十田蒼が積極的にシュートを打ちにいくが、高岡一は粘りの守備で決定機を許さず、結局、前後半計20分の延長戦でも決着はつかなかった。しかし、雨が降り始めた延長戦の終了間際、水橋はGKを交代。この交代劇が吉と出た。PK戦では、投入されたばかりの村澤壮太が2本目と5本目を見事にストップ。強まる雨風の中、水橋イレブンは村澤目がけて一斉に駆け寄り、歓喜の輪の中で各々に叫んだ。水橋の上田監督はGK交代に関して「PKは村澤君の方が強いので代えた。昨年の富山一さんや(ワールドカップのブラジル大会で)オランダが同じようなやり方で良い流れを持って来てPK戦を勝っていたので、良い采配は学んでいきたいと思い、自分の引き出しの中にあった策」と以前から温めていた交代策だったことを明かした。

 水橋は、OBである上田監督が就任して3年目で全国大会にたどり着いた。前線で奮闘した吉松は「何とか、ギリギリ勝てた。自分たちのサッカーを出せたが、点を取れなかったことは反省。僕自身、だいぶ緊張していてボールが落ち着かなかったが、どうにか収めようとしていた。以前は速く攻めることを重視していてロングパスが多かったけど、上田先生が2年前に来てからは後方からしっかりとつないでいくサッカーをやってきていて、それを出せた試合だったと思う。うちの起点は、サイドハーフ。最後はサイドからのクロスで中に入っていくことを考えたけど、中の人数が足りなかった」と手ごたえとともに、決定力不足を全国大会に向けた課題として挙げた。ライバルを倒して富山を制した水橋は、得点力に磨きをかけ、富山県勢としての2年連続全国優勝を狙う。

(取材・文 平野貴也)
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