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[選手権予選]「やられてもやり返す」前橋育英がライバルとの打ち合いを4発で制す!:群馬

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[11.3 全国高校選手権群馬県予選準決勝 前橋育英高 4-1 桐生一高 前橋総合]

 第93回全国高校サッカー選手権群馬県予選は3日、前橋総合運動公園陸上競技場で準決勝を行い、今夏の全国高校総体4強の前橋育英高と昨年度の代表校である桐生一高との一戦は、4-1で前橋育英が勝った。前橋育英は8日の決勝で前橋商高と戦う。

 前橋育英の山田耕介監督が「攻めたり、ショートカウンターだったりのやりっこになるだろうと。そんなに4点も5点も入らずに、1点差だろうなと思っていた」という過去4大会のファイナルカード。その強豪対決は、立ち上がりから互いにシュートシーンをつくり合う、非常にテンションの高い試合となった。開始55秒に前橋育英は左SB渡辺星夢(3年)のラストパスからFW坂元達裕(3年)がフィニッシュ。その30秒後にもドリブルで中央突破したU-19日本代表MF渡邊凌磨(3年)の右足シュートがゴールを襲うと、その20秒後には桐生一FW齋藤雄大(3年)の右足シュートを前橋育英GK吉田舜(3年)が横っ飛びではじき出す。

 その後も3分に前橋育英・渡邊凌がPAのFW青柳燎汰(3年)にスルーパスを通すと、桐生一は4分に左サイドでDFを外したFW額賀優斗(3年)が右足シュートを打ち込む。桐生一はこの日、田野豪一監督が「徹底するためですね。向こうも背後狙ってくるのは分かっていたし、こっちもやり合わなきゃいけないので」と説明したように、188cmの大型SB乾貴哉(3年)を3トップの中央で先発させていた。対する前橋育英のCB宮本鉄平(3年)も空中戦で渡り合い、こぼれ球はCB上原大雅(3年)がカバーする。序盤のひとつのポイントとなったこの空中戦とセカンドボールの攻防戦。8分にはその乾が競り勝つと、スピードに乗ったままボールコントロールした齋藤が一気にPAへ切れ込む。そして10分には、敵陣左サイドで相手のキックをチャージした乾がそのまま左サイドをえぐって折り返すと、MF大塚遼太郎(3年)が右足を振り抜いた。

 ただ、相手の奇襲にも揺らぐことなく、“打ち合い上等”とばかりに攻め合いを挑んだ前橋育英。U-19日本代表MF鈴木徳真主将(3年)は「立ち上がりなんでガンガン行こうとやり始めたので、『やられてもやり返す』という感じだった。(チームメートにも)ガンガン自分の気持ちをぶつけろという感じでやっていた」。前橋育英は13分に渡邊凌が左足ボレーを放ち、16分には中央からPAへ潜り込んだ青柳がシュートを打ち込む。試合は全く目を離すことのできないような展開で進んでいった。

 それでも15分を過ぎると、桐生一は乾を本来の左SBに戻す。対する前橋育英は、個人技で相手との差を生み出していた渡邊凌が「立ち上がりに点が取れれば相手が崩れるという、分析を見ていてもそういう傾向が見えていたので、最初から止める必要はないんじゃないかと思っていた。リードしていれば、勝っている余裕もあってもっと走れると思うので、最初に先制点を獲るのはデカい」と頷いていたように、勢いを落とさずに攻撃を続行。山田監督が「去年ポゼッションでなかなか入り込めなくて術中にハマって(敗れて)しまったので、今年は縦に入っていこうと。向こうのラインが浅いので、対戦相手のオフサイドが物凄く多い。(前橋育英は)ポゼッションでゆっくりやることもできるんですけど、狙われるんですよ。それよりも裏を狙った」と説明したようにポゼッションよりもオープンスペースを突く攻撃を軸に攻める前橋育英は、高い位置でボールを収めた青柳や渡邊凌を起点に多彩な攻撃を見せて流れを傾けて行く。
 
 両チームが相手の背後をとって生み出したシュートシーンと会場の興奮。それが初めてゴールに結びついたのは28分だった。前橋育英は右サイドから強引に仕掛けた坂元がPAでファウルによって止められてPK獲得。「ああいうがむしゃらなプレーが育英としてのプレースタイル」という坂元の突破がPKをもたらし、これを坂元が左足で決めて前橋育英が先制した。さらに前橋育英は畳みかける。31分、左サイドからボールを動かすと、FW関戸裕希(3年)からのパスを受けた坂元がDFの股間を射抜く左足シュートを決めて2-0。右の岩浩平(3年)と左の渡辺星の両SBが果敢に攻め上がってくる前橋育英は、直後にも渡辺星の左アーリークロスから関戸が決定的な右足シュートを放ち、41分には長い距離を走って縦パスを引き出した鈴木が浮き球を巧みにコントロールして決定機を迎える。
 
 ただ、前半を2点差で踏み止まった桐生一は後半押し返した。5分にパスワークから額賀の右足シュートが枠を捉え、直後にはショートコーナーからの左クロスに乾が飛び込んだ。GK依田龍司(3年)や1年生のファイター、田沼和司の好守で食い下がった桐生一は後半立ち上がりをいいリズムで進めていた。だが、前橋育英は12分、潰し役としても非常に目立っていた鈴木の絶妙な展開から左サイドでボールを受けた関戸が持ち出してから右足ミドル。これが右ポストを叩いてゴールへ吸い込まれた。桐生一・田野監督が「0-2だから後半落ち着くと、ウチもやれると思った中であのシュートだったからね。あれはどうしようもない」と讃えるしかなかったスーパーミドル。桐生一も22分にFKのこぼれ球を右SB出村颯太(3年)が右足で打ち抜いたが、これも吉田の好セーブに阻まれてしまった。

 逆に前橋育英は24分、左サイドから一気に縦に切れ込んだMF吉永大志(3年)の折り返しをフリーで受けた渡邉凌が右足で決めて4-0。桐生一も30分に額賀のキープからCB角田駿(3年)が出したスルーパスで左サイドを抜け出した齋藤が左足で決めて1点を返す。意地を見せた桐生一だったが、最後まで決定機をつくり続けた前橋育英の快勝だった。

 今年の前橋育英は、プリンスリーグ関東1部でJクラブユース勢を連破して優勝するなど大型チームだった昨年に比べると、決して個々のタレントは高くない。それでも全国総体でベスト4へ進出し、大一番だったこの日も4-1で快勝した。鈴木は「今年は個人技が少ない分、ロングボールを入れながら、パスもしっかり含めながらという組み合わせのサッカーをしているので、それによってバランスの取れたサッカーができているのかなと思う。(自分たちの世代は)1年生の頃から勝負強さ、対応力があると言われていて、それが自分たちの自信になっているからこそ、強みにもなってきているかなと思っている。監督の言葉が一番大きい。『育英のサッカーは劣勢になったときに絶対に勝ち切れるサッカーだ』という、それが自分たちの今でも自信になっていると思います」。多少劣勢となってもブレない自信とその強さ。前橋商とのライバル対決、“群馬クラシコ”となった決勝も勝利して、悲願の全国制覇への一歩を踏み出す。

(取材・文 吉田太郎)
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