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劇的に流れを変えた憲剛「等々力では勝たないといけない」

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[6.7 J1第1ステージ第15節 川崎F2-1湘南 等々力]

 背番号14がピッチに入った瞬間、明確にスタジアムの雰囲気が変わった。1点を追う後半12分、川崎フロンターレはベンチに置いていたMF中村憲剛をピッチに送り出した。

 川崎Fは中盤、最終ラインでボールを回していたものの、なかなか前線にボールを通せなかった。湘南のMF高山薫は「あのボール回しには、本当に消耗させられた」と振り返ったが、中盤より後の選手たちにとっては、それほど対応の難しくない状況だった。

 ベンチで試合を見ていた中村は、「3分に失点してから、湘南が後ろに閉じこもる展開になって、なかなかスペースが見つかりませんでした。そこでボールを動かしたことで、(湘南の)前の選手の体力は削れたと思う。ただ、どこか『ここだ』というタイミングのときに、人も動かないといけないし、ボールも前に出さないといけない。それがタイミングが合わなかったり、動かなかったりしていたので、ちょっともったいないな」と感じていたことを明かした。

「流れを変えるために、ベンチの選手は存在しているので、やらないといけないと感じました」。そう話す中村がピッチに持ち込んだのは推進力だ。「守備は(谷口)彰吾に任せた」というように、3列目から果敢に最前線まで飛び出して行き、湘南の守備に混乱を生んだ。投入からわずか3分後にはPKを獲得。中村は大きくガッツポーズを見せて、等々力陸上競技場のサポーターを煽った。

 このPKをFW大久保嘉人が決めて同点に追い付くと、その後も川崎Fは攻勢に出る。中村が出場する57分までシュート3本だったチームが、中村投入後に6本のシュートを放っていることも、その存在の大きさを示していると言えるだろう。そして、この試合最後にMFエウシーニョが放ったシュートは、決勝点となった。

 決まった瞬間を振り返り中村は、「ああ、勝って終われると思った」と言って笑い、勝利を欲していたことを強調する。「3日前のナビスコ杯で負けていますし、珍しく等々力でブーイングが出るような試合をしてしまいました。申し訳ないと思っていたし、今日もホームだし、とにかく勝たないといけないと思った。オレが出たときは負けていたし、『やるしかないでしょ』という意地です」。

 湘南のチョウ・キジェ監督は「ヨーロッパの試合の一つのような雰囲気で試合ができて、選手たちは楽しかったのではないかと思います」と話したが、中村自身も2万人を超える観衆を集めた一戦を楽しめたと振り返る。「こういうたくさんの試合が来てくれて、盛り上げてくれる試合が増えることが大事。そこで、こういう劇的な試合を見せることができれば…。湘南のみなさんはたまったものではないかもしれませんが、フロンターレのサポーターはまた来てくれると思う。その前に点を決められるところもあったと思うので、無駄に劇的じゃなくていいと思うので、そこはすごく難しいのですが、やっぱり勝つ試合を見せないといけないと思います。良いサッカーをしても負けたら、みんな納得もしないし、ストレスもたまる。でも、こういう試合を勝利に持ってこれたのは、サポーターの人たちがいっぱい来てくれたおかげなので感謝していますし、こういう試合をたくさんして勝ったことで、お客さんが来てくれるようになったと思うので。等々力では勝たなければいけない」と、力説した。

(取材・文 河合拓)

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