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[総体]市立船橋ラストプレーで劇的ゴールのMF工藤友暉「軌道見えてなかった」

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[8.9 全国高校総体決勝 東福岡高 1-1(PK6-5)市立船橋高 ノエスタ]

 いつものFKとは考え方を変えた。総体決勝。スコアは0-1、時間はアディショナルタイムもほぼ消化。自分のキックがラストプレーになる可能性はわかっていた。

「ノータイムだったので小細工するより思いきり狙おうと。FKはGKとの駆け引きなどありますが、あの場面では思いきり蹴っただけです」

 市立船橋高のMF工藤友暉がボールをセットしたのは、ゴールほぼ正面、しかし距離は30mはあろうかという距離。「あの距離はほとんど練習していない」という。ほぼ無心で振り抜いた右足。「当たった」という感触はあった。ボールは鋭い回転がかかり、不規則な軌道でゴール右隅へ刺さった。ラストプレー、ラストキックでの劇的すぎる同点ゴール。「気持ちよかったです」。

「自分、入った瞬間しか見てなかったんです。ボールの軌道は見えてなくて」。それほどの極限状態だったのだろう。市立船橋では新チームからキッカーをまかされている。「昨年まではコヤ(DF古屋誠志郎)が蹴っていたんですけど、譲ってくれて。自信を持って蹴っています」

 プレミアリーグでもFKから2得点しているという職人。得意なのはゴール左斜めのPA外ぐらいの位置。今回の正面という角度と30mという距離からのゴールは初めてだった。

 この会心のゴールで流れはイッキに市立船橋へ来るかと思われたが・・・・・・。「自分たちの代はまだ力がないな、と。歴代の市船なら延長で持っていったと思います。市船は優勝しないと誰からも『頑張った』とはいってくれないチーム。優勝…したかったですね」。

 一方で、アタッカー陣にケガ人が出てフルメンバーとはいえない中での戦いぶりに手応えも感じている。「決勝は自分たちがやれる状況ではないと思っていたけど、主導権も握れて、負けはしましたが自信になった部分もあります。個人的にも守備がヘタで、みんなにカバーしてもらってきて、監督からも守備のことばかり言われていたのが、この大会を通じてDF面で気遣うところがわかってきたかと」

 負けから学ぶ教訓は多い。個人的な成長も自覚している。そして最後に「思いきり」というメンタルの力の重要性も学んだ。歴代の市船も、きっと同じような経験から学んで、最後は勝つチームになっていったはずだ。彼は今、その階段を登っている。

(取材・文 伊藤亮)
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