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[総体]決勝で悔しいPK失敗も市立船橋MF原輝綺「仲間に救われました」

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[8.9 全国高校総体決勝 東福岡高 1-1(PK6-5)市立船橋高 ノエスタ]

 自分が6番目に蹴ることはわかっていた。
「大会前に練習でPKを全員で蹴るんです。それで順番を決めるので」

 市立船橋高DF原輝綺はゆっくりとPAへと向かっていく。何とも言えない独特の緊張感が場を支配していた。「緊張しました。自信はありました。練習通りのコースに蹴って」。

 足はたしかにボールをとらえた。コースは思い通り左ポスト際へ。しかし、ボールは無情にも外へ転がっていった。「自信はあった。でもなにかが違った。落ち着いてはいたと思うんです。でもコースのことなど、色々と考え過ぎちゃったというか」

 先攻の東福岡が全員決めていたため、キックを外した瞬間、市立船橋の敗戦が決まった。その場で泣き崩れる。「あまり人と話せないので。PKの場面みたいに失敗してしまうと、全部自分の責任だと感じてしまうんです」。仲間が慰める。一度は持ち直し表彰式と閉会式を過ごしたが、最後応援席に向かってからまた涙が見えた。

 しかし、試合後の控室から出てくると表情はすっきりしているように見えた。

「仲間のおかげで立ち直りました。『大丈夫』『選手権で借り返せ』と言われて、応援席でも・・・・・・本当に力になりました」

「自分みたいな特化したものがない選手は走らないと何も残せない。走らないと出ている意味がなくなってしまう」と語る2年生は決勝でもよく走った。ボランチで先発しながら、後半残り10分から3-4-3にシステム変更した最終ラインに移動。東福岡の分厚い攻撃を走力で抑え込んだ。

 総体を通じて個人的には「少しは積極的に行けるようになった」というのが収穫だ。「1年生のときはずっと下のカテゴリーで、冬の2月からトップにあがって。当初は失うものもなく思いきりやれていたのですが、試合に使ってもらうことが増えてくるにつれ重圧を感じるようになりました。真面目というのとは違うのですが、あまり自分から行けないタイプで。そこを修正しないとこの先苦労すると思うんです」

 積極的に自分をさらけ出す性格ではないらしい。そんな彼がPKを外した刹那、瞬間的に感情を爆発させた。この経験は、おそらく想像以上に大きい。積極性の重要さも、仲間のありがたさも、同時に痛感できたと考えれば、決して悲観する話ではない。「どこかで役立つ経験を得たんだと思います」。まだ100%割り切れたわけではないだろうが、そう思いこもうとする姿に強さを見た。

(取材・文 伊藤亮)
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