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岩上不在の中でセットプレーから同点ゴールの松本 反町監督「ケガの功名」

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[10.10 天皇杯3回戦 湘南2-3松本 BMWス]

 指揮官からすれば、してやったりのゴールだろう。0-1で迎えた前半18分、松本山雅FCは距離のある位置でFKを得る。普段はMF岩上祐三がFKのキッカーを務めるが、この試合は負傷により遠征メンバーから外れていた。試合前日に反町康治監督は、複数の選択肢を選手たちに与えていたという。

 MF工藤浩平が流したボールを、MF安藤淳が蹴り返し、そのボールをFW前田直輝が左足でシュートした。コースは良かったもののボールにはそれほど威力がなかった。それでも、死角から出て来たボールにGKイ・ホスンの反応も間に合わず、試合は振り出しに戻った。

 このシーンを振り返り、反町監督は「ケガの功名というか、スペシャリストがいないぶんだけ、何かしら変化を与えないとFKから点は取れないわけですから。即興で用意したものが、うまくいきました」と、平静を保って話した。ゴールを決めた前田も「昨日、練習でみんなが上がってから何人かが『ちょっと残って』と呼ばれて『これ、やろうと思うんだけど、どう?』っていうスタンスで、『やれたらやりますよ』っていう感じでした。結構、距離があったんですがオビナと僕のシュート力を信じてくれました。素晴らしいシュートではなかったですが、打つことによって入ったので良かったなと思います」と、同点弾を喜んだ。

 このゴールで試合を振り出しに戻した松本は、湘南にボールを持たれながらも要所ではしっかりと体を張って守り、前線のオビナや前田にロングボールを送った。前半は動き出しが遅かったこともあり、なかなかボールが収まらなかったが、後半に入ると少しずつボールを前に運べる回数も増える。その中で後半12分には、DF喜山康平のロングボールを受けたオビナが胸トラップから左足シュートを決めて、逆転に成功した。

 第2ステージに入ってから、松本はJ1勢との対戦で複数ゴールは、3節の鹿島戦(2-0)、9節の山形戦(2-2)の2試合しかなかった。それが、この試合では後半12分にも安藤が追加点を挙げて3-1とリードを広げた。

 終盤に湘南の猛攻を受ける中で、後半38分には途中出場のFW高山薫に1点差に詰め寄られるゴールを決められてしまう。後半アディショナルタイムに同点ゴールを浴びた第2ステージ第10節の湘南戦(1-1)の記憶が呼び起こされる展開となるが、松本は3-2で逃げ切り、今季4度目の対戦で湘南から初勝利を挙げた。

「最後の失点がなければ、もっと笑ってここ(記者会見)で喋ることができたと思いますが、次のリーグ戦への薬としたい」と、反町監督は1点差に詰め寄られたことを反省したが、J1残留争いに向けて、良い感触を得られたことは間違いない。

 かつて指揮を執った湘南からの初勝利。感慨深い一勝になったことは想像に難くないが、「次も古巣との一戦なので、それが終わってからコメントしたいと思います」と、反町監督は言葉をとどめた。J1残留を争っているアルビレックス新潟との一戦に集中する指揮官は、「残り4節でホームゲームは一つしかありませんが、アウェーでもホームのような雰囲気をつくり出してくれているサポーターには感謝しています。これから一戦必勝という中で、みなさんも力が入っていると思います。その力を借りながら、この苦境を脱したいと思います」と、サポーターに更なる応援を求めて、会見を締めくくった。

(取材・文 河合拓)

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