[選手権予選]昨年決勝のリベンジ!「下手くそ」と言われ続けてきた世代の西目が14回目の全国へ王手!!:秋田
[10.22 全国高校選手権秋田県予選準決勝 新屋高 1-2 西目高 八橋陸上競技場]
第94回全国高校サッカー選手権秋田県予選は22日、準決勝を行った。前回大会決勝の再戦となった新屋高対西目高戦はFW鈴木瀬央(3年)と左SB伊藤輝(3年)のゴールによって西目が2-1で勝利。3年ぶり14回目となる全国大会出場へ王手を懸けた西目は24日の決勝で秋田商高と対戦する。
西目のCB山崎嘉樹主将(3年)が「去年、自分も出ていてPKで負けてしまって、本当に悔しくて、組み合わせ決まった頃から新屋とやったら絶対勝つぞと思って練習していました」と語り、畠山啓監督も「年代が違うと同じ相手でも内容もサッカーも全然違うんですけど、去年決勝で破れているので、借り返して秋商への挑戦権を取ろうと」臨んだ因縁の新屋との準決勝。西目が持ち味のスピードあるサイド攻撃を発揮して競り勝った。少ないタッチ数でショートパスを繋ぎながら攻撃を組み立てる新屋に対し、西目は「幸いテクニックはあまりないんですけどスピードは前三枚はある」(畠山監督)という鈴木瀬、右FW林拓弥(3年)、左FW長谷川光(3年)のスピードを活かして相手のラインを押し下げ、サイドから林、長谷川の突破とコンビネーションで新屋の守りを崩しにかかる。
また、思い切りのいい出足で相手の攻撃を潰す高橋紘平(3年)とこちらも対人で強さを発揮する山崎の両CB中心に、押し込まれる時間帯もしっかりと凌いでいた西目が前半35分に先制する。西目は鈴木瀬が中央での素晴らしいターンでDFを振り切り、左サイドへ展開。長谷川のクロスにMF伊藤玲央(2年)が飛び込むと、こぼれ球を鈴木瀬が右足で蹴りこんで先制した。西目は39分にも食いついてきたDFを伊藤玲が振り切り、最後は鈴木瀬のスルーパスから伊藤玲が決定的な右足シュートを放つ。新屋は185cmの大型GK佐々木和之(3年)が失点シーンの際に相手と交錯した影響か、前半終了と同時にGK竹田駿哉主将(3年)と交代するアクシデント。一方、先制した後、サイドを起点に自分たちの時間帯を続ける西目は後半7分にも左クロスから伊藤玲の放ったヘディングシュートがクロスバーを叩いた。
新屋も9分、右サイドを縦に割って入ったFW熊谷琢登(3年)のクロスをファーサイドでフリーの10番FW斉藤大成(3年)が右足で叩く。また交代出場のGK竹田がファインセーブを連発してチームを勇気づけた。だが西目は後半29分、右SB渡辺十夢(3年)の右クロスのこぼれ球に反応した左SB伊藤輝が右足ダイレクトのミドルシュート。これがゴール左サイドネットへ突き刺さるスーパーゴールとなった。ムードメーカーという伊藤輝の圧巻の一撃にチームは大盛り上がり。ベンチのコーチ陣が控え選手たちよりも速くタッチラインへ駆け寄り、殊勲の背番号13と抱擁するなど精神面でも大きなゴールとなった。
これで2点差とした西目だが、新屋も諦めない。33分、斉藤が鋭いドリブルで西目の守備網に穴を開けると、これをフォローした熊谷が中央から左前方へスルーパス。2列目から飛び出してきたMF柳田凌吾(2年)が左足で決めて1点差とした。追撃に成功した新屋はロングボールを放り込むことなく、MF高橋泰夢(3年)、柳田を中心としたショートパスで攻撃を組み立て、左SB鈴木文也(2年)がワンツーから中央への侵入を試み、熊谷が個でサイドを打開しようとするなどジワリジワリとゴールへ迫っていった。西目は終盤、足を攣らせる選手が続出。我慢の時間帯が増えたが、「1点決められてまた集中して、いい失点ではなかったけれど切り替えることが出来たと思います」という山崎や中盤から最終ラインに入って守りを固めたMF天野陽介(3年)を中心に新屋の攻撃を跳ね返して逃げ切った。
県内でいずれも秋田商に次ぐ全国高校選手権出場13回、全国高校総体出場6回の歴史を持つ西目だが、現3年生の世代は新人戦、総体予選ともに県準々決勝敗退。「例年に比べてダメなので、いつもみんな『下手くそ』と言われている。最初は自分たち本当に下手くそで、総体でも自分の力も発揮できないし、遠征とかでも全然勝てないことが続いた」と山崎主将は振り返るが、「負けた後にみんなで話し合ったりして練習から繋ぐことを意識してやったらだんだん上手くなった。技術面だけじゃなくて精神面でも強くなっていけば(チームとしても)強くなっていくので声を出して。前はミスしたら下向いたりしてけれど、きょうの試合はミスしても切り替え速く、前向きな姿勢だった」とチームが技術面、精神面でも成長してきたことに手応えを感じている。
決勝は最大のライバル・秋田商との決戦。畠山監督は「力は向こうの方が上なので厳しい試合になると思いますが、幸いリーグ戦の最終戦で苦労しながらも勝っている。そういう意味ではもしかしたら心理面の影響は大きいかもしれない」と語った。鈴木瀬は「自分たちは一人ひとり元気が良くて、強いチームじゃないんですけど気持ちでは絶対に負けていない」と力を込め、伊藤輝は「(天野)陽介クンが累積で決勝出れない。彼のためにももう一度全国で一緒に戦いたい。絶対に決勝で勝ちたい」と誓った。そして山崎は「自分たちの目標は全国に行くだけでなく、全国に行ってさらに1勝すること」。その目標を達成するため、「下手くそ」と言われ続けてきたチームが身につけてきた力を決勝で最大限に発揮して、ライバルに勝つ。
[写真]後半29分、西目は左SB伊藤輝(右)が決勝ゴール
(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2015
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ2015
第94回全国高校サッカー選手権秋田県予選は22日、準決勝を行った。前回大会決勝の再戦となった新屋高対西目高戦はFW鈴木瀬央(3年)と左SB伊藤輝(3年)のゴールによって西目が2-1で勝利。3年ぶり14回目となる全国大会出場へ王手を懸けた西目は24日の決勝で秋田商高と対戦する。
西目のCB山崎嘉樹主将(3年)が「去年、自分も出ていてPKで負けてしまって、本当に悔しくて、組み合わせ決まった頃から新屋とやったら絶対勝つぞと思って練習していました」と語り、畠山啓監督も「年代が違うと同じ相手でも内容もサッカーも全然違うんですけど、去年決勝で破れているので、借り返して秋商への挑戦権を取ろうと」臨んだ因縁の新屋との準決勝。西目が持ち味のスピードあるサイド攻撃を発揮して競り勝った。少ないタッチ数でショートパスを繋ぎながら攻撃を組み立てる新屋に対し、西目は「幸いテクニックはあまりないんですけどスピードは前三枚はある」(畠山監督)という鈴木瀬、右FW林拓弥(3年)、左FW長谷川光(3年)のスピードを活かして相手のラインを押し下げ、サイドから林、長谷川の突破とコンビネーションで新屋の守りを崩しにかかる。
また、思い切りのいい出足で相手の攻撃を潰す高橋紘平(3年)とこちらも対人で強さを発揮する山崎の両CB中心に、押し込まれる時間帯もしっかりと凌いでいた西目が前半35分に先制する。西目は鈴木瀬が中央での素晴らしいターンでDFを振り切り、左サイドへ展開。長谷川のクロスにMF伊藤玲央(2年)が飛び込むと、こぼれ球を鈴木瀬が右足で蹴りこんで先制した。西目は39分にも食いついてきたDFを伊藤玲が振り切り、最後は鈴木瀬のスルーパスから伊藤玲が決定的な右足シュートを放つ。新屋は185cmの大型GK佐々木和之(3年)が失点シーンの際に相手と交錯した影響か、前半終了と同時にGK竹田駿哉主将(3年)と交代するアクシデント。一方、先制した後、サイドを起点に自分たちの時間帯を続ける西目は後半7分にも左クロスから伊藤玲の放ったヘディングシュートがクロスバーを叩いた。
新屋も9分、右サイドを縦に割って入ったFW熊谷琢登(3年)のクロスをファーサイドでフリーの10番FW斉藤大成(3年)が右足で叩く。また交代出場のGK竹田がファインセーブを連発してチームを勇気づけた。だが西目は後半29分、右SB渡辺十夢(3年)の右クロスのこぼれ球に反応した左SB伊藤輝が右足ダイレクトのミドルシュート。これがゴール左サイドネットへ突き刺さるスーパーゴールとなった。ムードメーカーという伊藤輝の圧巻の一撃にチームは大盛り上がり。ベンチのコーチ陣が控え選手たちよりも速くタッチラインへ駆け寄り、殊勲の背番号13と抱擁するなど精神面でも大きなゴールとなった。
これで2点差とした西目だが、新屋も諦めない。33分、斉藤が鋭いドリブルで西目の守備網に穴を開けると、これをフォローした熊谷が中央から左前方へスルーパス。2列目から飛び出してきたMF柳田凌吾(2年)が左足で決めて1点差とした。追撃に成功した新屋はロングボールを放り込むことなく、MF高橋泰夢(3年)、柳田を中心としたショートパスで攻撃を組み立て、左SB鈴木文也(2年)がワンツーから中央への侵入を試み、熊谷が個でサイドを打開しようとするなどジワリジワリとゴールへ迫っていった。西目は終盤、足を攣らせる選手が続出。我慢の時間帯が増えたが、「1点決められてまた集中して、いい失点ではなかったけれど切り替えることが出来たと思います」という山崎や中盤から最終ラインに入って守りを固めたMF天野陽介(3年)を中心に新屋の攻撃を跳ね返して逃げ切った。
県内でいずれも秋田商に次ぐ全国高校選手権出場13回、全国高校総体出場6回の歴史を持つ西目だが、現3年生の世代は新人戦、総体予選ともに県準々決勝敗退。「例年に比べてダメなので、いつもみんな『下手くそ』と言われている。最初は自分たち本当に下手くそで、総体でも自分の力も発揮できないし、遠征とかでも全然勝てないことが続いた」と山崎主将は振り返るが、「負けた後にみんなで話し合ったりして練習から繋ぐことを意識してやったらだんだん上手くなった。技術面だけじゃなくて精神面でも強くなっていけば(チームとしても)強くなっていくので声を出して。前はミスしたら下向いたりしてけれど、きょうの試合はミスしても切り替え速く、前向きな姿勢だった」とチームが技術面、精神面でも成長してきたことに手応えを感じている。
決勝は最大のライバル・秋田商との決戦。畠山監督は「力は向こうの方が上なので厳しい試合になると思いますが、幸いリーグ戦の最終戦で苦労しながらも勝っている。そういう意味ではもしかしたら心理面の影響は大きいかもしれない」と語った。鈴木瀬は「自分たちは一人ひとり元気が良くて、強いチームじゃないんですけど気持ちでは絶対に負けていない」と力を込め、伊藤輝は「(天野)陽介クンが累積で決勝出れない。彼のためにももう一度全国で一緒に戦いたい。絶対に決勝で勝ちたい」と誓った。そして山崎は「自分たちの目標は全国に行くだけでなく、全国に行ってさらに1勝すること」。その目標を達成するため、「下手くそ」と言われ続けてきたチームが身につけてきた力を決勝で最大限に発揮して、ライバルに勝つ。
[写真]後半29分、西目は左SB伊藤輝(右)が決勝ゴール
(取材・文 吉田太郎)
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