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[選手権予選]「悔いのない大会にしたい」。指揮官のラストイヤーで初の全国を目指す五條が4発快勝:奈良

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[10.25 全国高校選手権奈良県予選2回戦 五條高 4-0 奈良北高 香芝高G]

 第94回全国高校サッカー選手権大会の奈良県予選は25日、2回戦を行い、昨年の県予選ファイナリストの五條高と奈良北高が対戦。前後半に2点ずつ奪った香芝が4-0で勝利して3回戦に進出した。

「昨日の夜は眠れなかった。今までで一番、初戦に拘った」。吉岡一也監督はそう笑ったが、指揮官は今年度を最後に17年に渡って指揮を執ってきた五條を定年のため退職。念願の選手権出場を掴むために、入念な準備を進めてきただけあり、スタートを飾るこの一戦にかける想いは強かったという。

 吉岡監督の意気込みに応えるかのように、チャンスは早々に到来した。1分に相手GKのキックをFW堀内幹太がヘディングで弾くと、ボールはDF裏へ。素早く反応したMF棚田有哉が、慌てて前に出たGKの頭上を浮き球で突いて、試合を動かした。「立ち上がりすぐに点を獲れたのが良かった」(吉岡監督)という五條は、12分にも右CKからDF辻雄也がヘディングシュートを叩き込んで、加点。以降は奈良北の意地もあり、追加点が奪えない時間が続いたが、38分には左クロスのこぼれ球をDF池田雄希が拾うと、ミドルシュートを決めて、3点リードで前半を終えた。

 エンドが変わった後半、五條は向かい風に苦しみ、それまで思ったような攻撃が出来なかった奈良北にもチャンスが訪れるように。後半13分には右のFW谷口輝から中央のMF加藤章太と繋ぎ、最後はMF西川泰史がシュートを狙ったが、五條DFが身体を張ってブロック。前半に比べて、守る時間が増えた五條だったが、GK野西竜成を中心に集中を切らさずに無失点を保つと、15分には自陣でもボール奪取から素早く縦に展開。左サイドでボールを受けたMF加瀬部拓巳のパスから、堀内が決めて4点目を奪った。試合終了間際にも、相手陣内でのこぼれ球を拾った棚田が足技でDFをかわしてGKと1対1に。先制点と同じくループシュートを狙ったものの、今度はクロスバーに阻まれタイムアップ。「上出来とまでは言えないけど、そこそこ良かったと思う。これまでは押し込みながらも点が獲れない試合が多かったけど、今日はしっかり点が獲れた」と吉岡監督が称えたように、きっちり得点を奪って、3回戦へと駒を進めた。

 昨年、一昨年の選手権予選で決勝まで進みながらも、あと一歩及ばず全国行きを逃してきた。今年の総体予選も準決勝で奈良育英高に敗れて、全国切符を掴めず。県の有力選手が進路に選ぶのは奈良市など県の北部ばかりで、和歌山県寄りに位置する南部は有力な選手が少ない。吉岡監督は「南部の指導者は、根気が必要」と苦笑いしつつ、「うちは田舎のチームなので、優れた選手はいない。3年間鍛えて、どうなるかというチーム。そこまで持ってきても、最後は個々の力が足りずに、あと一歩の所で負けてきた」とこれまでを振り返る。

 だが、今の3年生が入学してきた2年前からは、今年の選手権をターゲットにし、ドリブルを徹底練習し、最後の一山を超えるため、個の力に磨きをかけた。更には例年以上に県外遠征を増やし、経験値アップにも着手。作陽高や藤枝東高といった強豪相手に善戦するなど、確かな手応えを得て、今大会に挑んでいる。「悔いのない大会にしたい。後で、『ああやっておけば、良かったな』なんてことがないようにしたい」という指揮官の想いが結実するか、五條の戦いに注目だ。

[写真]3点目を奪った五條DF池田を中心に喜びの輪が広がった

(取材・文 森田将義)
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