beacon

[大学選手権]早慶戦で顎を骨折…戻ってきた早稲田大MF堀田「やり残したことがある」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[12.10 全日本大学選手権2回戦 早稲田大4-0高知大 BMWス]

 全治3、4か月と告げられた。「ピッチに戻るのは厳しいかも」。そんな思いも過ぎった。それでも早稲田大MF堀田稜(4年=浦和ユース)は強く熱い思いを胸にリハビリ期間を過ごすと、全国大会直前にチームの元へ帰ってきた。

 10月24日に行われた関東大学リーグ第19節・慶應義塾大戦。首位決戦の大一番に先発した堀田だったが、開始4分に負傷交代。顎の骨を2箇所も折る重傷を負い、2日後の26日には手術を受けた。医師からは「平均で全治までは3、4か月がかかる」と言われ、目の前が真っ暗になった。

 「実戦に戻るのは厳しいかな」と思ったというが、ひたむきにリハビリを続けると、「一応、骨はくっついた」状態にまで回復。インカレ初戦を3日後に控えた今月7日に全体練習へ合流した。

 そして迎えたこの日の高知大戦。ベンチ入りを果たすと、4-0でリードした後半13分に出番が回ってきた。顎のプロテクターを抑えるためにヘッドギアを装着し、ピッチに立ったMF。接触プレーも恐れずに果敢にプレーすると、出場直後には左サイドからドリブルで仕掛けるなど積極的に攻め込んだ。

 堀田の起用について、古賀聡監督は「コンディション的には戻ってきていたがゲーム勘は戻っていなくて、試合の状況が(4-0になり)許されるような状況になったので、試合勘を取り戻すことを含めて長い時間出場させた」と説明。やや空回りするシーンもあったため、「まだまだこれから高めないと」と言いつつも「いいきっかけになったかな」と復帰の“第一歩”を前向きに捉えた。

 堀田の胸には関東リーグで不完全燃焼に終わった悔しさがあった。堀田が離脱したあとの早稲田大は、慶應義塾大戦に2-1で勝利すると首位を奪取。ラスト4試合を3勝1分で終えると、首位の座を守りきっての関東制覇を遂げた。自らが不在のなかでの戴冠。「緊張やプレッシャーのかかる最後の4試合を一緒に戦えなかったので、正直いってリーグ優勝に貢献できたという実感はなくて。そういう意味ではインカレで勝利につながるプレーをしたいという思いがありました」と言う。

 そんな思いで臨んだ一戦。約35分の復帰戦を終えた堀田は「ピッチに立つ瞬間は身の引き締まる思いというか、ここからだなという心境でした」と凛々しい顔をみせ、「関東リーグでは優勝しましたけど、ここで負けたら最後に笑って終われない。リーグの分はインカレで取り戻したい」と強く誓った。

 大学4年生の堀田は卒業後には一般企業に就職予定。社会人チームでサッカーは続けるつもりでいるが「サッカー中心でできる生活は最後」だ。「まだやり残したことがあるので、このままでは終われないという思いが強いんです」。頼れるMFが“忘れ物”を取りに戻ってきた。

(取材・文 片岡涼)
●第64回全日本大学選手権特集

TOP