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[新人戦]「もうセカンドチームじゃないと思っている」。主力抜きの京都橘が延長戦で洛北を破り、京都制覇

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[2.21 京都高校新人大会決勝 京都橘高 1-0(延長)洛北高 西京極陸上]

 平成27年度京都府高校サッカー新人大会の決勝戦が21日に行われ、京都橘高洛北高が対戦。昨年の選手権予選決勝と同カードとなった一戦は延長後半終了間際に奪ったDF吉水太一のゴールによって、京都橘が勝利し、5年ぶり3度目の新人戦優勝を達成した。

 京都橘はU-18日本代表のFW岩崎悠人を筆頭に、守護神のGK矢田貝壮貴やMF堤原翼、DF濱本和希など主力が欠場し、12番手以降のセカンドチームで今大会を勝ち上がってきた。一方の洛北は現状のベストメンバーで挑んだが、試合後に前田尚克監督が「また、やられてしまった。橘はしたたかやったね。一人ひとりがしっかりしているから簡単には崩れない」と口にしたように京都橘の勝負強さが目を惹く試合だった。

 最初に決定機を迎えたのは選手権予選のリベンジを狙った洛北。前半2分にスルーパスから、MF小宮光貴がゴール前に抜け出したが、懸命に右手を伸ばしたGK西川駿一郎に封じられ、シュートを打ち切れない。以降もFW中村匡克へのロングボールやMF清水駿介と小宮の両翼による突破によってチャンスを伺ったが、「守備の時は5バックになるので、あまりやられる気がしなかった。一人ひとりがやることをやれたと思う」とDF李明賢が胸を張ったように、京都橘の3バックがきっちり跳ね返し、ピンチを回避した。

 対する京都橘はボール奪取から素早く前線に攻撃に転じ、好機を伺う。9分にはFKのこぼれ球を拾ったMF芳仲一真が左サイドからクロスを展開。一度は相手DFに弾かれたものの、芳仲が再びルーズボールを拾うと、ボールを受けたMF土井翔太が左サイドの角度ない位置からシュートを狙う。前半終了間際にも左サイドでのFKから李がヘディングシュートを狙ったが惜しくもクロスバーに阻まれてしまった。

 後半も拮抗した展開が続く中、9分には京都橘にチャンス到来。李のパスカットから自陣中央の相馬、前線のFW吉田宗太郎と繋ぎ、PA右へスルーパス。右サイドからMF大塚陸が懸命に走り込んだがわずかに合わない。洛北も積極的に交代カードを切って1点を狙いに出たものの、ゴールネットを揺らすことができず試合は延長戦に突入した。

 延長戦で躍動したのは後半30分にピッチへと送り込まれた京都橘のFW青木海人だった。まずは延長前半4分にDF川村智哉の縦フィードに前線で反応すると、持ち前のスピードでゴール前に抜け出し、エリア左からループシュート。延長後半9分にも高い位置で相手DFからボールを奪うとそのままGKとの1対1に持ち込んだが、またもやゴールネットを揺らすことができない。「うちの選手はシュートをふかしてばかりやったんで、PKになったらヤバいなって思っていた」。米澤監督がそう振り返ったように誰しもがPK戦での決着を頭に浮かべたが、延長後半アディショナルタイムに歓喜の瞬間が訪れた。MF山中啓生が左サイド高い位置から、ゴール前にロングスローを入れると李がヘッドで反応。ゴール前にこぼれたボールを「怪我明けで、これまではずっと応援。試合に出るのは決勝からだったのでアピールの意味でも、僕が決めてやろうと思っていた」という吉水がゴール左隅に流し込み、勝負あり。直後にタイムアップの笛が響き、京都橘が勝利を掴んだ。

 新人戦をセカンドチームで挑むプランは、昨年の選手権予選を終えた直後から米澤監督の頭にあったモノ。「試合状況の中でやってはいけないミスが多かった」というサブ組に試合経験を積ませるため、昨年11月末に今回のメンバー主体で遠征を実施するなどして、準備を進めてきた。個の局面で見れば、主力組に劣る場面も多々あったが、米澤監督は「今大会を通じて、後ろが伸びてきてくれたし、(準々決勝の東山高戦以降)毎試合延長戦をやって、90分間ゲームを経験できたのも良かった。試合経験を積んで、次のことを要求できる」と評価。

「(サブ組の活躍で)トップチームの選手は焦っている。最初の入りは経験を積ますためだったけど、もうセカンドじゃないと思っている」。そう米澤監督が続けたように、今大会は“下剋上”の布石としては十分すぎる結果となったのは間違いない。吉水は「この新人戦で皆の自信がついた。京都3冠を目指しているので、下のチームからドンドン上がって競争を増やしていきたい」と口にしたように激しさを増した競争力を武器に、京都橘は今年も京都の高校サッカーを牽引するつもりだ。

[写真]快足を飛ばし、何度も決定機を演出した京都橘FW青木

(取材・文 森田将義)

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