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もはや伝統?イングランド代表のユーロ敗退に漂う"ガッカリ感"と"やっぱり感"

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毎回のように「優勝候補の一角」と言われるイングランドだが……

「やっぱりな」

「知ってたよ」

「君に期待した僕が馬鹿だった」

 6月27日、フランスのニースで起こった出来事は、紛れもなく“ジャイアント・キリング”だった。人口約5300万人の中から選ばれた代表チームが、約33万人の小国に負けたのだから。

 にもかかわらず、アイスランドがイングランドを破るという歴史的番狂わせの試合後、SNS上を駆け巡ったのは「驚き」というより「またか」という自虐に似た憂いの声だった。

■怒り心頭の英国メディアだが……

 アイスランド戦の敗戦、ユーロ敗退に対するメディアの反応は辛辣だった。

 『BBC』は「悪夢」、「代表に入る資格のない選手がいる」、「なんというひどい大会」といった言葉で自分たちの代表を酷評し、同局で放送されているハイライト番組『マッチ・オブ・ザ・デイ』で司会を務めるギャリー・リネカー氏は、「我々の歴史の中で最悪の負けだ。プロフットボーラーより火山が多い国に負けてしまった」と嘆いた。

 過激な表現で知られる大衆紙『SUN』に至っては、「恥さらしで、ゴミで、まったく意味不明、芯がない上に、やる気もない」と、日本語にするのをはばかられる言葉を並べている。

 確かにアイスランドという小国にほとんど何もできないまま屈してしまったことは「史上最悪」という表現が用いられても仕方のないことだ。

 もっとも、イングランド代表が“負の歴史”を作ってしまったのは今回が初めてではない。それどころか、彼らの歴史を振り返ると、「栄光」と呼べる時間のほうが少ないことに気付かされる。

■イングランド代表、敗退の歴史

 イングランド代表がワールドカップやユーロといった主要国際トーナメントで獲得したタイトルといえば、母国開催だった66年のW杯のみ。2000年以降はどの大会でもベスト8の壁を越えられていない。ユーロに限定して見てみると……

1996年 ベスト4 ※母国開催
2000年 1次リーグ敗退
2004年 ベスト8
2008年 本大会不参加 ※予選敗退
2012年 ベスト8

 母国開催だった96年を除けば準決勝にすら進めていない。“フットボールの母国”という看板やプレミアリーグの繁栄によって毎回のように「優勝候補の一角」として名前が挙がるものの、周囲が期待する成績を残せたことはほとんどないのだ。

 要するに、ファンたちは「期待しては裏切られること」に慣れてしまっている。だからこそ、怒りや悲しみに加え、(もしかしたらそれ以上に)「またか」という憂いが浮かび上がっているわけだ。

■指揮官は退任、しかし後任は……

 ロイ・ホジソン監督は試合終了後、指揮官の座から退くことを正式に発表した。しかしながら、後任として名前が上がっているギャレス・サウスゲート、エディ・ハウ、アラン・パーデュー、ガリー・ネビルといった面々はヨーロッパのトップレベルの指導者とは言いがたく、復権の見通しは立っていない。

 英国では数日前、国民投票の結果によりEU(ヨーロッパ連合)から離脱する方針が固まった。世界的な影響を考えれば、代表チームの監督が変わったことなど些細な事かもしれないが、「フットボールは生きるか死ぬかに関わるほど大事だと考える人がいる。しかし断言しよう。それ以上に深刻な問題だ」という名言が生まれるお国柄である。「首相が辞任を表明した数日後、イングランド代表の長も辞めた。だからといってどちらも後任にふさわしい人材がいるかというと……」という憂いの声も1つや2つではない。

 EU離脱にユーロ敗退――。もはや、「またか」が伝統になりつつあるイングランドが、周囲をいい意味で裏切る日はいつになるのだろうか……。

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