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[MOM1889]神戸弘陵DF木村俊文(3年)_「死ぬ気で頑張った」代役キャプテンが残留争いの大一番で好守披露

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主将不在のチームをまとめた神戸弘陵高DF木村俊文

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.24 高円宮杯プレミアリーグWEST14節 神戸弘陵高 2-1 大津高 みきぼうパークひょうご第1球技場]

 第13節を終えて7位・大津高(熊本)との勝点差は2。「今日の試合で勝つのと負けるのでは順位が大きく変わってくるので、是が非でも勝ち点3が欲しかった」と谷純一監督が口にしたように、残留を目指す8位・神戸弘陵高(兵庫)にとって、この日は是が非でも白星が欲しい一戦だった。しかし、ここまで全試合に出場してきた主将のMF谷後滉人がコンディション不良のため、スタメンを回避するアクシデントが発生。苦しい守備事情を支えたのは谷後の代役として、生まれて初めてキャプテンマークを託されたCBの木村俊文(3年)だった。

 アウェーに乗り込んだ前期第5節の対戦で0-3と完敗したように、大津は攻撃力が高いチーム。特に2得点を奪われたFW藤山雄生は要警戒人物だったが、木村は「能力が凄く高い選手だけど、ビデオで分析したら最後は絶対に右足でシュートやドリブルを狙ってくるのが分かっていた」と安易に飛び込まずに冷静に対処。切れ味鋭いドリブルを何度も繰り返したもう一人のキーマンMF杉山直宏に対しては、「一人で奪いに行くとやられてしまう。一人目が耐えて、二人目が奪うことを意識していた」と守備陣が息の合った連携によって、決定的な場面を与えない。

 後半に入ってから大津は同点ゴールを狙い、藤山と杉山に配球する形を増やしたが、「弘陵には『一度負けた相手には次は絶対に負けてはいけない』という言葉がある。前期は3失点して悔しかった想いをしたので、今日は絶対に勝ち点3を獲りたいと、死ぬ気で頑張った」と身体を張って決定機を阻止。また、先制点を奪いながらも勝利に結びつけることができなかったここ3試合の反省点を踏まえ、最後まで味方とのコミュニケーションを絶やさず、ピンチを凌いだ。リードを2点差とした試合終了間際にPKをGK鈴木悠太が弾いた所を押し込まれ、1点を返されたが、木村を中心とした守備の奮闘がなければ、勝利はなかったかもしれない。

 チームとして初めて挑むU-18年代最高リーグが終盤を迎える中、木村の重要度は日に日に増している。前期はパスやドリブルに拘る弘陵らしさを全面に押し出した攻撃的なスタイルを志向したが、相手の攻撃力に圧倒されたため、攻守ともに機能せず、白星はわずか1。残留を掴むために勝利が欠かせない後期は「勝つためのプレー」を最優先し、粘り強い守りからのショートカウンターを新たに取り入れた。守備の重要性が格段に増したが、「この1か月でかなり良くなっている。とにかく粘り強いし、世代別代表もいるJのアカデミー陣に対しても競り合いで負けていない。ギリギリのボールに対しても身体を張って防いだり、凄く力強くなっている」と谷監督が目を細めるように、重圧を背負うことによって、木村の成長速度も一気に増している。

 この日の結果により、後期の成績は2勝2分1敗。大津だけでなく、1日遅れで試合を行う京都U-18の順位も上回り、暫定6位へと浮上した。だが、「次のセレッソ戦も絶対に勝ち点3を獲って10月から始まる選手権予選に繋げたい」と口にするように、これで終わりではない。プレミア残留と選手権での上位進出を果たすため、木村の奮闘は続く。

(取材・文 森田将義)
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