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[国体少年男子]“無冠の帝王”初優勝へ王手!大阪府が王者・神奈川県に粘り勝つ!!

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大阪府が2連覇中の神奈川県を撃破。(写真協力 高校サッカー年鑑)

[10.5 国体少年男子準決勝 大阪府 2-1 神奈川県 遠野運動公園多目的運動広場]

 第71回国民体育大会「希望郷いわて国体」サッカー競技少年男子の部準決勝が5日に行われ、大阪府対神奈川県戦は前半20分までに2得点を奪った大阪が神奈川の反撃を振り切って2-1で勝った。14年大会準々決勝、15年大会準々決勝でいずれも神奈川に敗れていた大阪は、雪辱勝利を果たして神奈川の連覇を2でストップ。そして初優勝に王手を懸けた。

 CB河井 哲太とともに大阪の最終ラインの柱として奮闘したCB石尾崚雅(C大阪U-18、1年)が「めちゃくちゃ強かったです。(これほどボールを握られたのは)初めてです」と舌を巻いた神奈川の強さ。特に後半はボールを圧倒的に握られる展開となったが、それでも大阪は相手の“危険人物”たちを上手く消しながら、最後までゴール前で相手に譲らなかった。これが大阪にとって対神奈川初勝利ということ。難関を突破した大阪が同じく初優勝を狙う広島県との決勝(6日)へ駒を進めた。

 結果的に試合のポイントは前半20分までにあった。左SB山口和樹(C大阪U-18、1年)が「押し込めたのは気持ちでしたね。勝つということしか考えていなかった」という大阪が立ち上がりから猛然とプッシュ。相手の動きを見て、一人ひとりが間、間を取ってボールを繋いで攻める神奈川に思うようなボール回しを許さない。前線のFW原田烈志(G大阪ユース、1年)、MF大垣勇樹(興國高2年)、MF足立翼(G大阪ユース、1年)の3人を中心に迫力を持って相手を押し込みにいった大阪が5分に先制点を奪う。

 MF國分龍司(G大阪ユース、1年)からのパスを右中間で受けた足立がドリブルで仕掛けながらラストパスを狙うと、クリアしようとしたDFに当たったボールがまるでシュートのような勢いでゴール左隅を破る。大一番で早くも追う立場となった神奈川は反撃開始。左FW椿直起(横浜FMユース、1年)にボールが入ると、このU-17日本代表ドリブラーがグイグイと仕掛けてチャンスを作ろうとする。椿の突破や相手のパスワークに1人目が突破されてもCB河井哲太(G大阪ユース、1年)や石尾が上手くカバーしてゴールを守った大阪は、ボールを取り返そうとする神奈川のプレスを力強いキープなどでいなして前進。20分にはカウンターからMF奥野耕平主将(G大阪ユース、1年)と足立が中央でボールを収めて左サイドへ展開。これを受けた山口がすかさず左足でクロスを入れると、手前でDFに当たってコースの変わったボールがGKの頭上を越えてそのままゴール右サイドネットヘ吸い込まれた。

「(3試合目の神奈川に対し)4試合目だったんで最初から受け身にならず前から行こうと。その前向きな姿勢のご褒美」と梶田浩信監督(FC Unione柏原)が微笑んだ幸運な2得点。神奈川は崩された訳ではなかったが、永山晃監督(浅野高)は「アンラッキーだけじゃないんですよ。ウチはあれをやりたかったんですけど、押し込まれているんで」。立ち上がりから押し込むことができず、逆に押し込まれてしまったことを残念がった。それでも神奈川は24分、右サイドでのショートパスで相手のプレスを剥がすと、右中間で前を向いたMF岩澤桐人(横浜FMユース、1年)がスルーパス。これで抜け出したFW栗原秀輔(横浜FMユース、1年)が今大会4得点目となる右足シュートを決めて1点差とする。さらに27分には椿が左サイドで間をつくると、相手SB、CBの背後を取ったSB島崎元(川崎F U-18、1年)へスルーパス。島崎の折り返しをMF榊原彗悟(横浜FMユース、1年)が押し込もうとしたが、これは大阪DF陣がブロックする。神奈川は前半終盤に決定機を連発。29分にも左サイドから斜めにボールを持ち込んだ椿がDFの間を抜けて一気にシュートを打ち込む。さらに31分にはMF桝谷岳良主将(川崎F U-18、2年)の展開から椿が仕掛けて入れたラストパスがDFとGKの間を横切った。32分にも椿の折り返しに栗原が飛び込んだが、左足シュートは枠外へ。そして後半2分には栗原のスルーパスから椿の放った右足シュートがゴールネットを揺らしたものの、判定はオフサイドで神奈川は同点に追いつくことができなかった。

 消化試合の1試合多い大阪に対し、後半は神奈川が完全にボールを持ち続ける展開に。だが大阪は、相手が攻撃を組み立て直す度に根気強くディフェンスラインを上げて、コンパクトな陣形を保ち続ける。アップダウンを繰り返し続けたDFライン。連日ハードワークで目立っていたMF岩本翔(G大阪ユース、1年)や終始冷静なプレーを続けていた奥野をはじめ、中盤、前線の選手は攻撃に移った際のパワーを失っていても献身的な守備を続けていた。それでも大阪は相手の150cmMF榊原を捕まえることができずに起点を作らせてしまう。神奈川は左サイドからの攻撃を警戒する相手の逆を突く形で右サイドのスペースを活用。サイドチェンジからMF柴田徹(湘南ユース、1年)とSB藤森隆汰(横浜FCユース、1年)のコンビが相手DFラインを強襲する。だがシュートシーンは増えていたものの、慌てて打ち切ったシュートは力なくGK林祥太郎(C大阪U-18、1年)の胸に収まり、13分には左ショートコーナーからDFをかわした榊原のクロスを岩澤が合わせるがこれは枠外。後半14分に大阪がMF判田直也(C大阪U-18、1年)を投入してダブルボランチへ移行すると、神奈川は榊原の存在が消え、その攻撃は停滞したように映った。

 横パスを繋ぐものの、攻撃はサイドへ偏重。椿の仕掛けは待ち構える形を取った大阪右SB岡治に阻まれるケースが増えるなど、ゴール前の守りを崩し切ることができない。大阪相手にボールを支配し続けた神奈川だったが、森谷周平ヘッドコーチ(横浜清陵総合高)が「ボールがあるところからゴールに一直線、最短距離で進んで行けるようにしなさいということは話していて、ちょっと横パスが多かったと思いますね。見ている人はボール持っていてずっと押していて凄いなと思うかもしれないですけれども、それってあまり怖いことじゃない、狭くてもどんどん入っていくから相手が絞ってきてギャップが空いて……。受けよう、受けようとし過ぎてちょっと焦っていたかなと思います」と指摘したように、神奈川の攻撃はアタッキングサードからの先の部分で怖さを欠いてしまっていた。前がかりになった神奈川は逆に大阪のカウンターからキープ力に長けた大垣らにボールを運ばれるシーンが増えてしまう。終盤には桝谷が強引にPAを打開し、37分には俊足FW山田新(川崎F U-18、1年)が抜群のスピードでPAをへ侵入して決定的なシュート。だが、枠を外れて万事休す。王者はファイナルの手前で姿を消した。 

 粘り勝った大阪の梶田監督は「(各選手が)陰で見えない努力をしてくれた。チームの勝利ですね」と疲労感ある中で走りきった選手たちを賞賛していた。これで頂点まであとひとつ。準優勝5回、3位4回、08年から10年まで3年連続準優勝、13年まで6年連続4強以上の“無冠の帝王”がついにその壁を破るか。「彼らは代表に選ばれる、Jリーガーになるというのが目標。『プロになったら疲れていてもやらないかんねんで』」と選手たちを励ましたという指揮官は「ここからは気持ちの勝負。きょうは大阪のサッカーが続けられなかったので、(広島も)5試合同士の戦いで大阪らしい、納得したサッカーで優勝したいです」。そして山口は「次は決勝。最初から優勝しか考えていなかったので、決勝も勝つことしか考えていないです」と意気込み、石尾は「最初から優勝が目標。絶対に優勝する気持ちです」。また岡治は「絶対決勝勝って、大阪初優勝したい」と誓った。数々の名選手を輩出したり、強さを発揮しながら優勝に縁のなかった大阪。今年、その歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)
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