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「これがエース」待望のゴール生まれた金崎にチームメイトも感謝

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チームを決勝に導くゴールに笑顔のFW金崎夢生

[11.23 チャンピオンシップ準決勝 川崎F0-1鹿島 等々力]

 だれもが待ち望んでいたエースの一発だった。鹿島アントラーズは後半5分、DF山本脩斗の左クロスにFW金崎夢生がニアへ飛び込み、DFエドゥアルドの前に体を入れてダイビングヘッド。ゴール右隅に流し込む技ありヘッドを決め、ゴール裏のサポーターに向かって大きなガッツポーズを見せた。

「良いボールが上がってきて、点で合わせたという感じ。いいところで取れて良かった」。後半立ち上がりの先制点。中盤では川崎Fにボールを回されるシーンもあったが、要所要所を締め、少ないチャンスを確実に生かす。最後はしたたかに逃げ切り、1-0の完封勝利で決勝進出を決めた。

「ほとんどフロンターレのペースだったけど、ある意味、鹿島らしくできたんじゃないかなと思う」。そう胸を張る背番号33にチームメイトも感謝する。DF昌子源は「エースが決めて終わるのはこれ以上ない勝ち方。他の選手が決めるのと(金崎)夢生くんが決めるのとでは全然違う。これがエース。感動した」と手放しで称えた。

 エースの不振とともにチームも苦しんでいた。今季10得点の金崎だが、第2ステージはわずか2得点で、9月25日の新潟戦(2-0)を最後にゴールから遠ざかっていた。チームもその後、7年ぶりとなるリーグ4連敗。12日の天皇杯4回戦では神戸を2-1で下したが、チャンピオンシップを前に決して流れは良くなかった。

「(金崎が)神戸戦でキーパーとの1対1を2、3本外したときは今季はもう無理だなと思った」。そう冗談交じりに話す昌子は「このために取っていたんじゃないかと思うぐらいドラマチック。いつもは膝から滑り込んだりよく分からない喜び方をするけど、今日はサポーターのところに行って、あまり見慣れない喜び方だった。本人もうれしかったんだと思う」と、その胸中を察した。

 両チーム最多のシュート4本を放った金崎について「点を取りたい、取りたいと、が入り過ぎだった」と指摘したDF西大伍は「今日決めたのはたまたまでしょ」と冗談めかしながらも、「負けたくない姿勢はすごいし、僕らチームとしては助かる」と、その存在の大きさを認める。

 8月20日の湘南戦。途中交代を命じられた金崎は激高し、ベンチ前で握手を求めた石井正忠監督の手を払うような素振りを見せ、不満をあらわにした。石井監督は直後に体調不良で一時休養を発表。クラブの公式フェイスブックページで「夢生との一件が原因ではない」と釈明する事態になった。

「夢生くんと監督の衝突があって、(石井監督の)体調不良があって。(チームの成績には)『関係ない』と強がっていたけど、少なからずあったと思うし、そういうのを乗り越えてここまで来た」。そう力説する昌子は年間勝ち点3位からのチャンピオンシップ制覇に向け、「勝ち点が13離れていようが、(チャンピオンシップに)勝ったチームが優勝。それでええのかと言われたら、それはJリーグさんに文句を言ってほしい。このシステムを作ったのは僕らじゃない。胸を張って決勝に行きたい」と、“下剋上V”を誓う。

 決勝の相手は年間勝ち点1位および第2ステージ優勝の浦和。29日にホームで、12月3日にアウェーで対戦する。「しっかりまずホームで勝って、アウェーでも勝てるように頑張りたい」と意気込む金崎は「僕たちはああいう戦い方しかできないというか、自分たちのスタイルで最後までやり切りたい。それで勝てれば最高だと思う」と、ラスト2戦へ気持ちを切り替えた。

(取材・文 西山紘平)

●2016 Jリーグチャンピオンシップ

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