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[選手権予選]3位、3位、そして準優勝。開校10年目に歴史大きく塗り替えた京産大附、ここから新たな一歩を:京都

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[11.23 全国高校選手権京都府予選決勝 京都橘高 1-0 京産大附高 西京極]

「引き立て役にはなりませんよ」

 試合前、京産大附高の仲井和哉監督が口にした言葉は、両チームの戦力差を考えれば強がりと受け止められてもおかしくないものだった。

 第95回全国高校サッカー選手権大会の京都大会。決勝戦まで勝ち進んだのは京都橘高と京産大附高。前者は4年連続で全国行きを決めている大本命であり、U-19日本代表FW岩崎悠人の存在もあって全国から注目を集めていた。一方の京産大附は、新人戦と高校総体予選で共にベスト4進出というサッカー部史上初の快挙を成し遂げていたが、チームとしても、個人としても大きな注目を集める存在ではなかった。京都産業大の附属高校として開校したのが2007年。サッカー部も初年度は進学コースを担当する顧問が練習に出てこれない日が多く、初芝橋本高のコーチを務めていた仲井和哉監督が就任した翌年から、ようやく人数が揃い始めたという。それも初めはグラウンドの雑草を抜いて、選手に『練習に来いよ!』と声をかける状況からのスタートだった。2012年に現在の場所へ移転してからもグラウンドは土で、他クラブと共有しながら限られた広さでトレーニングに励んでいる。

 選手たちも、中学時代は無名。主軸でなかった選手や、Bチームだった選手たちが大半だ。そういった選手をサッカー部に迎えて、仲井監督やコーチングスタッフと共に成長してきた成果が、今大会で花開いた。仲井監督は「彼らをどのように指導してきたのか?」という問いかけに、こんな答えを返している。「うちの学校は盛り上がらないという校風があるんです。そこに『サッカー部から火をつけよう!』とことを赴任した8年前から思っていました」。サッカーの技術や体力や戦術と共に、活気を持って行動すること、その際に主体性を持つことを植えつけてきた。現在は学校行事をサッカー部の生徒が盛り上げたり、積極的な行動を起こすことが増えているという。

 それはピッチ上でも成果が現れている。今年のチームでボランチとして自陣のスペースを生め、左足からの配球やミドルシュートで主軸の一角を担ったMF村木昂太(3年)は「中学ではベンチが多く、自信もやる気もそれほど無かった。高校の3年間で精神的に成長できたと思います。決勝戦、前半からあんなに全力疾走したことはなかったけれど『勝ちたい!』という思いが自然とそうさせました」と自身の変化に驚いている様子だった。

 岩崎や堤原翼ら強力なアタッカーが顔を並べる京都橘に対して、京産大附は普段の4バックから5バックに変更。『ストップ・ザ・岩崎』をテーマに、自陣のスペースを消す戦い方を採用した。準決勝から中3日で、戦術的なトレーニングを行えたのは前日のみ。それでも様々な戦術に適応できる選手たちの特徴を生かし、主体性を持ってピッチ上の状況に判断できるようになった部分も発揮して、ゲームではラスト10分を切るまでスコアレスで試合を進めた。最終ラインの要であり、失点後は前線に上がってパワープレーのターゲット役も務めたDF村上大誠(3年)は「物理的には引いていても、気持ちは守りに入っていなかった」。主将のFW田中皓貴(3年)も「総体予選では何もできず、京都橘という名前にも負けていたけど、今日はネガティブな気持ちはなかった」と夏からの成長を実感している。

 両チームには共通点がある。開校・創部からの歴史が比較的浅く、ゼロからのスタートで上り詰めてきたことだ。それはチームだけでなく、指揮官もそうだ。試合後、京都橘と共に全国に名を馳せる指導者へと成長した米澤一成監督は、仲井監督へこんな言葉を送っている。

「ここからが大変やで」。

 今年度の飛躍により、注目度は高まった。同時に、他校からも警戒される存在になった。日本体育大の先輩であり、指導者としても「尊敬しているけれど、それ以上に共感できる存在」(仲井監督)という米澤監督からのメッセージに、仲井監督は深くうなずいていた。スポーツ推薦はなく、入試を合格して入学してくる選手たちでチームを構成する環境はかわらない。ただ、今大会でつかんだ結果と手応えがかけがえのないものであったことも確かだ。

 新人戦と高校総体予選の3位の表彰状は、他クラブのように校内で掲示されることなく監督の机にあるという。「3位で満足して欲しくなかったんです」(仲井監督)というのが理由だが、今年度の公式戦を全て終えたことで掲示するという。3位、3位、そして準優勝の表彰状。その横に4枚目以降を並べる、あわよくば更に歴史を塗り替える賞状を――京都産業大学附属高サッカー部は、ここから新たな一歩を踏み出す。

(取材・文 雨堤俊祐)
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