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「大学を辞めてでも来て欲しい」熱烈オファーで松本入り、関西2部・大商大DF下川陽太の運命を変えた45分

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シンデレラストーリーを歩むDF下川陽太

 わずか1試合が運命を変えることがある。大阪商業大のDF下川陽太(大阪商業大3年=国見高)にとって、昨年6月4日はまさにその日だった。今月17日に早くも来季の松本山雅FC加入内定と今季の特別指定承認が発表されたSB。昨年末のうちに仮契約を結ぶ異例の速さでJリーガーになるという夢をつかんだ。

 大阪商業大は関西2部Aに所属しており、昨季は10チーム中8位と決して強豪ではない。それでも下川は関西学生選抜の一員としてプレーしたガンバ大阪戦で未来を変えた。昨年6月4日の関西ステップアップリーグ(SUL)・G大阪戦。下川は後半から途中出場し、2-1の勝利に貢献した。

 この試合に来ていたのが松本の強化担当者。獲得を狙っていたFW岡佳樹(現・松本)を見に来ていたはずが、右利きながら両足を蹴ることができ、スプリント回数の多い下川のプレーが目に留まったのだ。そこから一気に話は進む。昨夏には約2~3週間に渡り、松本の練習に参加。「死ぬかと思いました」と体力的にも過酷な日々だったようだが、必死にアピールした。

 すると松本サイドは「大学を辞めて、今すぐにでも来て欲しい」と熱烈オファー。しかし大学側は卒業させたいという意向を持っており、見送られた。それでも「とにかく早く契約がしたい」と昨年12月末に来季入団へ向けての仮契約を締結。そして今月17日の正式発表に至った。

 国見高出身の下川だが、これまで大きな選抜などに選ばれたこともなかった。しかし関西SULのわずか1試合で環境は大きく変化。「今までは何もなかったので、いきなり松本から話が来て、びっくりしました。でもずっとプロになりたいとサッカーを続けてきたので本当に嬉しかったです」。

 松本へのイメージについては「きれいなサッカーではなしに、蹴って走って強固な守備で相手の一瞬の隙を突いて点を取るというイメージがとてもあって。それとサポーターの一体感もすごいです」と語る。

 練習参加した際にはピッチ上でDF田中隼磨から「お前パスもできないのか?」「帰っていいぞ!」と厳しい言葉をかけられ、「やべぇな、これ」とも感じたが、「これがプロの世界だ」と自らを鼓舞。ピッチ上では厳しい先輩たちも「ピッチ上ではすごい怖いですけど、隼磨さんとかも本当にピッチ外ではすごく優しいんです」。

 プロの姿を目の当たりにするなかで「本当にいいチームだな」と松本でJリーガーになりたいという思いは募ったようだ。昨年ホームで行われた岐阜戦をスタンド観戦。サポーターの熱さを目にして「一体感に鳥肌が立ちました。あそこでプレーできるのは幸せです」とアルウィンのピッチへ立つ日を心待ちにしている。

 今月17日から19日にかけて行われたデンソーカップチャレンジサッカー刈谷大会に、下川は関西選抜の一員として参加。とはいえ、松本の鹿児島キャンプでの左腿裏負傷の影響で大会前の関西選抜の活動に参加できておらず。連携面での問題から出場時間は長くなかった。最終日の関東B・北信越選抜戦(1-2)のみ先発出場。見せ場は多くなかったが左SBに入り、スプリントを繰り返した。

 デンチャレを終え、今後は特別指定選手として、松本で早くもJデビューする可能性が高い。シンデレラストーリーを歩むSBは「プレッシャーがないと言ったら嘘になりますが、ここからまだまだ足りないプロに必要な要素を身に着けて、プロの世界に入りたい」と意気込む。わずか45分のプレーは運命を大きく変えた。ここからどう歩んでいくかは自分次第。下川は謙虚に自分らしく、泥臭く、勝負の世界に飛び込む。


(取材・文 片岡涼)
●第31回デンソーカップチャレンジ刈谷大会特集

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